技術資料

等価光幕輝度によるトンネル入口照明の調光制御システム

国内営業事業部 営業技術部 中央技術設計センター

キーワード

トンネル入口照明,画像処理,等価光幕輝度,目の順応,累積出現率,省エネルギー

3.トンネル入口照明の制御への応用 (続き)

3.3 省エネ効果の検証(続き)

3.3.5 光源の点灯方式

現行方式の調光制御は,計測量が必ずしも目の順応状態と一致していないことから,1/2点灯程度の大雑把な間引き点滅が行なわれているのに対し,新方式では,高い精度で目の順応状態を計測していると考えられるので,きめ細かな調光制御とした。点灯方式の詳細を表3.5,3.6に,また照明器具の配置を図3.9に示す。

表3.5 野外輝度による点灯方式
調光率 点灯方式
100% 入口照明を100%点灯。(4灯/スパン)
50% 入口照明を100%点灯。(2灯/スパン)
0% 入口照明を消灯
表3.6 等価均一輝度による点灯方式
調光率 点灯方式
100% 入口照明を100%点灯。 (4灯/スパン)
88% 入口照明を83%点灯。(4灯/スパン)
75% 入口照明を75%点灯。(4灯/スパン)
63% 入口照明を63%点灯。(4灯/スパン)
50% 入口照明を100%点灯。(2灯/スパン)
38% 入口照明を76%点灯。(2灯/スパン)
25% 入口照明を100%点灯。(1灯/スパン)
0% 入口照明を消灯

図3.9 トンネル照明の配置図

3.3.6 省エネ効果の検証

省エネ効果は,省費電力量の差から検証した。検証方法を以下に示す。また一例として冬の晴天,曇天及び晴天+曇天時の野外輝度と等価均一輝度の調光率の変動を図3.10~12に示す。

  1. 各調光率の点灯時間を,野外輝度及び等価均一輝度の時刻変動と点灯方式から求める。(表3.7)
  2. 各季節の天候ごとの1日の消費電力量を,各調光率の点灯時間とランプの消費電力及び灯数より求める。(表3.8)
  3. 各月の消費電力量を,各季節の天候ごとの日数とそれに対応する1日の消費電力を乗じ,合算することで求める。(表3.9)
  4. 各月の消費電力量を合算し,年間の消費電力量を求める。
  5. 消費電力量を比較し,年間の省エネ率を求める。
表3.7 各調光率の点灯時間
パターン 1日の点灯時間(h)
野外輝度 等価均一輝度
100% 50% 100% 88% 75% 63% 50% 38% 25%
3 晴天 7.28 4.47 0 0 0 4.6 2.0 3.3 1.7
4 曇天 3.55 7.98 0 0 0 0 4.2 3.9 3.2
5 晴天+曇天 5.58 6.13 0 2.4 1.3 0.9 1.2 4.1 1.5
6 晴天 6.93 4.77 0 0 0 3.0 3.2 3.2 2.2
7 曇天 2.67 8.78 0 0 0 0 3.4 4.3 3.6
8 晴天+曇天 4.72 7.0 0 1.9 0.7 1.8 0.8 4.7 1.7
9 晴天 7.63 4.13 0 0 2.8 3.0 1.5 2.8 1.5
10 曇天 4.3 7.32 0 0 0 2.5 2.4 3.6 2.9
11 晴天+曇天 5.95 5.8 2.0 0.6 1.5 0.8 1.4 3.8 1.4
12 晴天 7.88 3.92 0 0 3.0 3.1 1.5 2.8 1.4
1 曇天 4.72 6.95 0 0 0 3.0 2.2 3.5 2.7
2 晴天+曇天 6.48 5.32 2.2 0.6 1.6 0.6 1.1 3.7 1.3
表3.8 各季節の天候ごとの1日の消費電力量
パターン 消費電力量(kWh)
野外輝度 等価均一輝度
3 晴天 499 328
4 曇天 396 243
5 晴天+曇天 454 350
6 晴天 489 301
7 曇天 370 234
8 晴天+曇天 431 335
9 晴天 509 359
10 曇天 418 278
11 晴天+曇天 464 370
12 晴天 516 365
1 曇天 430 289
2 晴天+曇天 480 378
表3.9 各月の消費電力量
消費電力量(kWh)
野外輝度 等価均一輝度
1 15284 11045
2 13635 9771
3 14022 9386
4 13510 8928
5 13847 9063
6 12242 7854
7 12910 8324
8 13887 8729
9 13588 9532
10 14790 10516
11 14138 10122
12 15247 10057

図3.10 野外輝度と等価均一輝度の調光率の変動

図3.11 野外輝度と等価均一輝度の調光率の変動

図3.12 野外輝度と等価均一輝度の調光率の変動

3.3.7 結果

トンネル入口照明の調光制御を,等価光幕輝度の値を基に,きめ細かいステップ調光で行なうと,野外輝度による方式と比較して年間で約30%の省エネ効果(図3.13)があると予測できた。

図3.13 調光制御方式による消費電力量の差

4.まとめ

トンネル入口照明の調光制御に,等価光幕輝度の概念を導入することによって,道路トンネルの安全な走行を保障しつつ,高い省エネルギーを兼備したシステムになることが分かった。

今回の点灯方式は,間引き点滅と連続調光を組み合わせて計7段階の調光制御を行なったが,連続調光を採用している為,配線を増加せずとも調光段数を増加できる利点がある。

一方このシステムは,トンネル坑口付近の画像を一日中取得することから,坑口付近の事故やトンネル火災等にも応用でき,更なる安全の向上に繋がると思われる。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第16号掲載記事に基づいて作成しました。
(2007年4月2日入稿)


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