技術資料
等価光幕輝度によるトンネル入口照明の調光制御システム
国内営業事業部 営業技術部 中央技術設計センター
キーワード
トンネル入口照明,画像処理,等価光幕輝度,目の順応,累積出現率,省エネルギー
3.トンネル入口照明の制御への応用
3.1 システム概要
実際のフィールドで等価光幕輝度の概念を導入したトンネル入口照明の調光制御を行なう方法を以下に示す。このシステムの構成を図3.1に示す。
- トンネル坑口から視距に相当する位置に対角画角64°以上のカメラと画像処理ボードをトンネル坑口中心に向けて設置する。
- 一定間隔において画像を取得する(ここでは30秒とした)。
- 数枚の画像を合成し,輝度分布と等価光幕輝度を算出する。
- 計算結果を出力し,入口照明の調光制御を行なう。
3.2 フィールド検証
等価光幕輝度の概念を応用した調光制御システムが,実際のフィールドで使用可能かを検証する為に,実在トンネルにおいて等価光幕輝度を測定した。カメラは,対角画角64°のデジタルカメラを用いた。実験手順は以下の通りである。
- トンネル坑口から150m,75m離れた位置からトンネル坑口の画像を撮影する。
- 画像取得時の等価光幕輝度,照度(Ev,Eh)及びトンネル内の路面輝度を,輝度計を用いて測定する。
- 等価光幕輝度計で測定した等価光幕輝度と画像処理で算出した等価光幕輝度を比較する。
実験結果を図3.2に示す。図3.2は,縦軸に等価光幕輝度の測定値,横軸に画像を基にした計算値を示したものである。図3.3は,CIE pub. No.61のデータと比較することを目的に,等価光幕輝度を成定らの方法で等価均一輝度に換算し,縦軸に野外輝度,横軸に等価均一輝度を表したものである。
以上より測定値と計算値は,概ね一致していると見なせることから,フィールドでも実用レベルの等価光幕輝度が計量できていると判断した。
3.3 省エネ効果の検証
人間の目の順応状態を予測することができれば,現行方式では不可能であったきめ細かいステップ調光が可能となる。そこで,等価光幕輝度値により,きめ細かいステップ調光を行なうと,どの程度省エネ効果があるかを検証する。ここでは,従来の野外輝度との比較を容易にする為に,等価光幕輝度を成定らの等価均一輝度に換算して行なった。
3.3.1 トンネルモデル
トンネル照明設計は,道路照明施設設置基準に基づき設計を行なった。トンネルモデルは,形状は馬蹄形,トンネル延長500m,車道幅員7m及び設計速度60km/hと国土交通省の代表的なモデルを用いた。トンネルモデルの断面図を図3.4に,その他のパラメータは,表3.1に示す。
項目 | 摘要 | |
---|---|---|
トンネル形状 | 馬蹄形 | |
トンネル延長 | 500(m) | |
車道幅員 | 7.0(m) | |
全幅員 | 9.5(m) | |
設計速度 | 60(km/h) | |
交通方式 | 対面交通 | |
日交通量 | 10000(台/日) | |
トンネル内の仕上げと反射率 | 天井面 | 25(%) |
壁面 | 25(%) | |
路面 | 25(%) | |
設定野外輝度 | 起点側 | 4000(cd/m²) |
終点側 | 4000(cd/m²) | |
トンネル勾配 | 0% |
3.3.2 使用ランプ
入口照明に用いたランプを表3.2に,ランプ電力とランプ光束の関係を図3.5に示す。
型式 | 使用灯数 | 消費電力量(kW) |
---|---|---|
NHT360・L | 64 | 0.396 |
NHT270・L | 24 | 0.298 |
NHT220・L | 16 | 0.242 |
NHT180・L | 32 | 0.198 |
NHT110・L | 96 | 0.121 |
3.3.3 年間の天候
年間の天候は,理科年表の日照率及び雲量日数を参考に,各月の晴天日,曇天日及び晴天+曇天日の日数を予測した。天候の予測方法を以下に示す。また各月の天候ごとの日数を表3.3に示す。
なお,理科年表の値は,実験を行なった地域を考慮して東京のデータを用いた。
- 各月の日の出及び日の入り時刻から1日の日照時間を求める。
- 月の日照時間と日の日照時間を除したものを晴天日とする。
- 平均雲量8.5以上を曇天日とする。
- その他は,晴天+曇天の日数とする。
月 | 日照 時間(月) |
日照 時間(日) |
平均雲量8.5以上の日 | 晴天日 | 曇天日 | 晴天+曇天日 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 180.5 | 10.05 | 4.7 | 18 | 5 | 8 |
2 | 161.1 | 10.90 | 6.9 | 15 | 7 | 6 |
3 | 159.2 | 11.97 | 10.9 | 13 | 11 | 7 |
4 | 164.9 | 13.08 | 12.0 | 13 | 12 | 5 |
5 | 180.9 | 14.05 | 13.8 | 13 | 14 | 4 |
6 | 120.1 | 14.53 | 19.2 | 8 | 19 | 3 |
7 | 147.5 | 14.30 | 16.5 | 10 | 17 | 4 |
8 | 177.5 | 13.47 | 12.2 | 13 | 12 | 6 |
9 | 112.9 | 12.40 | 15.7 | 9 | 16 | 5 |
10 | 129.9 | 11.28 | 12.8 | 12 | 13 | 7 |
11 | 141.4 | 10.30 | 8.9 | 14 | 9 | 7 |
12 | 171.1 | 9.78 | 4.5 | 17 | 5 | 9 |
3.3.4 野外輝度及び等価均一輝度の時刻変動
野外輝度及び等価均一輝度の時刻変動は,実フィールドで行なった測定を基に予測した。
ここでは,年間を各季節の4つに分類し,それぞれの野外輝度と等価均一輝度の代表的な1日の時刻変動を天候ごとに求めた。以下に予測方法を示す。例として各天候の季節ごとの野外輝度の時刻変動を図3.6~3.8に示す。
- 文献7)を参考に,4坑口の代表的な野外輝度の最大値の月別推移のデータから,各季節の野外輝度の相対値を求める。(表3.4)
なお,野外輝度と等価均一輝度との間には,一致はしないが,近い相関があるので,等価均一輝度の相対値も野外輝度のものと同じとした。 - 5月の晴天時に取得した野外輝度及び等価均一輝度の時刻変動データに,春を基準とした各季節の相対値を乗じ,晴天時の各季節の時刻変動を求めた。(図3.6)
- 8月の曇天時に取得した野外輝度及び等価均一輝度の時刻変動データに,夏を基準とした各季節の相対値を乗じ,曇天時の各季節の時刻変動を求めた。(図3.7)
- 5月の晴天時及び8月の曇天時に取得した野外輝度及び等価均一輝度の時刻変動データから,晴天+曇天時のデータを作成し,春を基準とした各季節の相対値を乗じ,晴天+曇天時の各季節の時刻変動を求めた。(図3.8)
月 | 野外輝度(cd/m²) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
長峰トンネル | 門司トンネル | 合計 | 相対値 (春基準) |
相対値 (夏基準) |
||||
海南側 | 湯浅側 | 小倉側 | 門司側 | |||||
3 | 春 | 2900 | 4100 | 2900 | 2000 | 35900 | 1.0 | 1.088 |
4 | 3500 | 3500 | 2900 | 2400 | ||||
5 | 2900 | 3500 | 2900 | 2400 | ||||
6 | 夏 | 2900 | 2900 | 2400 | 2400 | 33000 | 0.919 | 1.0 |
7 | 2900 | 3500 | 2400 | 2400 | ||||
8 | 2900 | 3500 | 2400 | 2400 | ||||
9 | 秋 | 2900 | 4100 | 2000 | 2000 | 36100 | 1.006 | 1.094 |
10 | 2900 | 4100 | 1700 | 2400 | ||||
11 | 4100 | 4100 | 2900 | 2900 | ||||
12 | 冬 | 4100 | 4100 | 2900 | 2900 | 39800 | 1.109 | 1.206 |
1 | 4100 | 4100 | 2900 | 2400 | ||||
2 | 2900 | 4100 | 2900 | 2400 |
参考文献
- 日本道路公団委託 財団法人 高速道路調査会:トンネル視環境に関する調査研究報告書, 昭和61年3月 (1986).
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