技術資料

画像処理による油膜検知に関する基礎的研究(その1)

技術開発室 技術部 技術開発グループ
日本大学 生産工学部 電気電子工学科 池本 直隆

キーワード

画像処理システム,油膜,検知,干渉縞,CIE色度図

5.実験

5.1 実験内容

考案した画像処理による油膜検知方法の妥当性の検証を行なうため,図3に示す油膜検知装置を用いて,下記に示す検討項目について基礎実験を行なった。

なお実験は外乱光の影響を防ぐため暗室内で行ない,CCDカメラにより撮影された画像をパソコンに取り込み,先に述べた画像処理を行なった。

【検討項目】
  1. 油の種類と油膜との関係
    ・ 異なる種類の油を水面に同量滴下し,虹色の干渉縞の有無を確認する。
  2. 油の量と色分布データKc(u,v)との関係
    ・ 水槽に滴下する油の量を12,25,50,100,150μℓと変化させた場合の色分布データKc(u,v)を確認する。
  3. 油の滴下時間と色分布データKc(u,v)との関係
    ・ 水槽に油を滴下し,5,10,30,120,180分と時間経過させた場合の色分布データKc(u,v)を確認する。

5.2 実験結果

1. 油の種類と油膜との関係

一部の油では表1より,水面に虹色の干渉縞が生じない場合があることが確認できる。この要因については油の動粘度や水温,外気温などが関係していると考えられる。これら水面上に虹色の干渉縞を形成しない油の場合については,新たに画像処理方法を考案する必要がある。

表1 油の種類と油膜の関係
油の種類 干渉縞の有無
ガソリン
エンジンオイル
軽油
コンプレッサ用 ×
駆動部用
拡散ポンプ用 ×
2. 油の量と色分布データKc(u,v)との関係

図8は水槽に滴下する油の量を変化させた場合の撮影画像を比較したものである。図10は撮影した画像から,油の量に対する色分布データKcとの特性を求めた結果である。なお実験結果は,エンジンオイルを滴下した場合で,滴下後3時間経過したものである。

色分布データKcは図10より,いずれの場合も油のない状態に比較し高い値となっていることが分かる。すなわち,水面上に形成される油膜による虹色の干渉縞が検知できているといえる。

図8 油の量による画像の比較(油滴下後3時間)

図10 油の量に対する色分布データKc

3. 油の滴下時間と色分布データKc(u,v)との関係

図9は油の滴下時間を変化させた場合の撮影画像を比較したものである。図11は撮影した画像から,油の滴下時間に対する色分布データKcとの特性を求めた結果である。なお実験結果は,エンジンオイル50μℓを滴下した場合である。

色分布データKcは図11より,時間経過にともない高い値となり一定の値となっていることが分かる。これは水面上の油膜が時間経過とともに薄くなり,次第に一定の膜厚になるためであると考えられる。

以上の結果より,提案する照明手法ならびに画像処理方法を用いることで,画像処理により水面上の油膜が検知可能であることがわかった。

図9 油の滴下後の時間経過による画像の比較

図11 油の滴下時間に対する色分布データKc

6.おわりに

本研究は,環境情報のひとつである水面上にある油膜の検知を,比較的簡易な照明手法を用いて取得する,画像処理システムの開発を行なった。

研究の基礎段階として,水面上に拡散した油膜が虹色の干渉縞を形成することに着目し,その色の分布状態を,画像処理により解析することによる油膜検知方法を考案した。さらに基礎実験により,その妥当性を確認した。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第14号掲載記事に基づいて作成しました。
(2006年4月21日入稿)


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