技術資料

画像処理による油膜検知に関する基礎的研究(その1)

技術開発室 技術部 技術開発グループ
日本大学 生産工学部 電気電子工学科 池本 直隆

キーワード

画像処理システム,油膜,検知,干渉縞,CIE色度図

4.油膜検知方法

4.1 油膜検知装置

図3は,画像処理により水面上の油膜検知を行なうために試作した油膜検知装置の概略を示したものである。油膜検知装置は,水面に光を照射するための光源,画像を撮影するためのCCDカメラから構成されている。

光源は,昼白色の蛍光ランプFL15N 6本で構成されており,水面上の油膜に光源の虚像が均一に映りこむように前面に乳白色アクリル板を取り付け面光源とした(図4参照)。

またCCDカメラは,水面上の油膜に映りこむ面光源を撮影するため,光源に対し正反射方向に配置した。さらに,油膜のない水面での光源の映りこみを取り除くため,レンズに偏光フィルタを装着し撮影を行なう。なお,CCDカメラは縦2000画素,横3008画素,R(赤)G(緑)B(青)それぞれ256階調,16777216色のカラー画像を記録する。

図3 油膜検知装置の概略

図4 試作した照明器具

4.2 画像処理方法

図5は,図3に示す油膜検知装置により撮影した画像の一例を示したものである(θL,θVは40°とした)。図5(a)は,水槽内に水のみを入れた場合,図5(b)は,水槽に水を入れ,さらに油を水面に滴下した場合の画像である。図5(b)より水面上の油膜は虹色の干渉縞を形成しており,画像には様々な色が含まれていることが分かる。これに対し図5(a)の水のみの場合では,虹色の干渉縞が無いため,画像に含まれる色は背景となる水の色のみとなっていることが分かる。

(a)油膜の存在しない場合

(b)油膜の存在する場合

図5 水面を撮影した場合

このことから,画像処理により得られた画像を微小領域に分割し,その領域の色の分布状態を解析することによって油膜の有無の検知が可能であると考えられる。

以下に,画像処理による油膜検知方法の概略を述べる。図6は油膜検知の処理手順を表すフローチャートを示しており,図7は画像の処理過程を示している。

【STEP1】
  1. CCDカメラなどで,水面および水面上の油膜により形成された虹色の干渉縞を撮影する。(図5参照)
  2. 撮影された画像を,任意の大きさの微小領域Auvに分割する。(図7①参照)
【STEP2】
  1. 分割された微小領域Auvの各画素Pij(図7②参照)のRGB輝度信号を読み取る。
  2. 読み取ったRGB輝度信号から式(2)(3)よりxy色度座標を算出し色度図上にプロットする。このとき微小領域Auv内に油膜が存在すると,微小領域Auv内に様々な色が存在するため,データは色度座標上の広い範囲に分布する。(図7③参照)これに対し微小領域Auv内に油膜が存在しなければ,データは色度座標上の狭い範囲に集中する。(図7④参照)

  3. プロットされたデータから式(4)により,微小領域Auv内に存在する色分布データKc(u,v)を求める。

    m,n:CIE色度図をx軸及びy軸方向に等分した数
    C(x,y):分割したCIE色度図内にデータが存在すれば1,存在しなければ0となる関数
    {色分布データKcは,微小領域Auv内の色の分布がCIE色度図の広範囲にわたっているとき(油膜の有る場合図7(3)参照)は,Kc(u,v)の値が1に近づき,色の分布がCIE色度図の限られた範囲に集中しているとき(油膜の無い場合図7④参照)は,Kc(u,v)の値が0に近づく}
  4. 撮影画像中のすべての微小領域Auvで上記の処理を行なう。
【STEP3】
  1. 算出された色分布データKc(u,v)を,Kc(u,v)の値を濃度値(Kcの値が高いほど,濃度値を高くする)とした画像を作成し,油膜の有無を判定する。(図7⑤参照)

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