技術資料
昼間用LED視線誘導灯の所要光度と設置方法に関する研究
技術開発室 技術部 技術開発グループ
情報機器事業部 事業推進部
国内営業本部 営業技術部 LCS
キーワード
視線誘導,LED,視認性,安全,安心
3.設置方法に関する実験(続き)
3.3 実験方法
被験者は図13のように運転時のドライバーの視野範囲を考慮した位置から,液晶プロジェクタにて実物大に投影されたVR画像を観測し,その時の印象をアンケート用紙に回答してもらう。
印象評価は2画像の優劣を比較する一対比較法を用い,次の手順により被験者3名ずつで行なう。
- 下記内容のインストラクションを実施する。
- モニターに評価刺激1,次に評価刺激2を続けて提示する。
- 被験者は評価刺激1と2を比較して,その評価が高い方に○,そうでない方に×,同等の場合は△をアンケート用紙に記入する。
- 評価刺激はA~Mの全組み合わせとする。
インストラクションの内容
「自分が運転している気持ちになって評価してください。これから,コーナーを含んだ2つの画像が連続して提示されますので,どちらの画像が,カーブ線形がわかりやすく,安心感があり,走りやすいかを判定してください。走りやすいと思う方に○を記入してもらいますが,どちらの画像もあまり変わらないと思う場合は,無理に優劣をつけずに両方に△を記入してください。」
3.4 実験結果
13画像の優劣として27回戦を被験者10名で比較した一対比較法によるアンケート結果を,サーストン法を用いて分析した。サーストン法により,比較した勝敗の勝率から,正規分布のZ値を求め,一次元で表せる尺度に変換した。
これを基に取付間隔と印象評価の関係を図14に,設置場所と取付高さの結果を図15に示す。両図とも棒グラフで示されているが,結果がプラスの場合は,勝ちが負けを上回り,その値が大きいほど勝率が高いことを示している。逆にマイナスの場合は,負けが勝ちを上回っていると評価される。
図14は横軸に取付間隔,縦軸を評価値とし,コーナーの曲率半径(R60,R100)による取付間隔と印象評価の関係を表している。R60の場合は取付間隔5mの時が,R100の時は取付間隔10m の時が最も評価が高く,取付間隔が20mの場合は,いずれのコーナーにおいてもマイナス評価だった。
図15は横軸に取付位置,縦軸に評価値とし,取付高さと印象評価の関係を表している。最も評価が高かったのは,「左右の路肩に設置した時」で,次が「左路肩のみ」だった。「左路肩・右中央線」と「設置なし」はマイナス評価となった。
3.5 考察
R100で取付間隔5mの評価が10m間隔より低かったのは,コーナーの形状に対して,設置台数が多すぎ,運転者が圧迫感を感じるからだと推測される。また,この取付間隔の結果は,視線誘導標設置基準で示されている値と概ね一致している。
取付位置は,山間部を想定した曲率半径が小さいコーナーだったので,左右の路肩に設置することが望ましいという結果となり,これも視線誘導標設置基準と一致する結果となった。
取付高さについては,評価がプラスとなった「左右の路肩に設置した時」,「左路肩のみ」において,0.25m,1.2mで有意な差がなかった。VRの画像では,光度やグレアの要因を考慮することができないため,VRでは一概に高さについての優劣が付けられない可能性もある。
3.6 結論
VRを用いた実験により取付間隔,取付位置,取付高さと印象評価の関係を以下のように推測できた。
- R60~R100程度の曲率半径を有するコーナーでは,LED視線誘導灯はコーナーの左右の路肩に設置する
- 取付間隔はR60の時,5m程度で設置する
- R100では10m程度で設置する
4.まとめ
本研究により,安全走行支援として注意喚起を目的としたLED視線誘導灯の所要光度,取付間隔,取付位置,取付高さが概ね推測できた。所要光度は実際の設置を考慮した75~100mの距離から観測した場合,発光面が5×10cm~10×10cm程度の大きさで500~700cd程度,15×15cm~20×20cmで700~1000cd程度となった。取付間隔,取付位置は,R60~R100程度の曲率半径を有するコーナーでは,左右の路肩に設置し,取付間隔はR60で5m程度,R100で10m程度が望ましいという結果になった。
これらの結果は,取付間隔と取付位置は視線誘導標設置基準と概ね一致しており,反射式,自発光式ともに,同じ考え方で設置してよいことがわかった。
この結果は,今後LED 視線誘導灯の設計の目安として,活用できると思われる。
参考文献
- (社)日本道路協会:視線誘導標設置基準・同解説,昭和59年(1984).
- 霧中用視線誘導灯の視認性,国土交通省・土木技術資料,27-12(1985).
- (社)日本道路協会:道路構造令の解説と運用,昭和58年(1983).
この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第13号掲載記事に基づいて作成しました。
(2005年10月6日入稿)
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