技術資料

赤外線照射による食品加工前クリの品質低下防止技術

光応用事業部 光応用営業部 技術グループ
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キーワード

クリ,クリシギゾウムシ,赤外線照射,加熱処理,殺虫,駆除技術,食品加工

3.実験結果

3.1 加熱処理実験用・赤外線照射装置の製作

3.1.1 赤外線照射装置の製作

図4 加熱処理実験用・赤外線照射装置

図4に示す概観形状及び表2に示す仕様の連続搬送式の赤外線照射実験装置を製作し,クリの各種加熱試験に使用した。この試験装置に投入されたクリは,『昇温ゾーン』で渋皮部を所定温度に達するまで急激に加熱し,その後『保温ゾーン』で所定時間温度保持し,『冷却ゾーン』にて放冷する。

表2 加熱処理実験用赤外線照射装置の仕様
項目 仕様
装置の構成 コンベア装置+炉体(昇温/保温/冷却)+制御盤
ランプ 2kW近赤外線ハロゲンランプ 16灯*上下照射(計32灯),ピッチ130mm
照射距離 可変(暫定・上下ともに125mm)
搬送部 ネットベルト搬送,0.02~1.4m/min(常用0.2m/min),有効幅400mm
制御部 調光機能,16列個別調光(電圧20~100%)
3.1.2 適正条件の検討

図5 ランプ調光条件の一例

速度を一定(0.2m/min.)にして,加熱条件により,近赤外線ランプの電力を調整し,また保温時間に応じてランプ点灯本数を調節した。その一例として図5に渋皮部を60℃,1~8分保持するためのランプ調光条件を示す。

最初の2列(4灯)を定格に近い1.4kWで点灯させて一気にクリを昇温させ,3~4列目のランプで60℃に押さえ,その後は保温のための微少電力で点灯させた。保持時間が長い条件では,5列目以降のランプ点灯本数を増やした。

図6 ランプ電力とクリ温度プロファイル

また,図6には,熱電対を用いて渋皮部温度50℃,8分設定時に於けるランプ電力とクリ各部の温度プロファイルを示した。

最初のランプ照射により,鬼皮部及び渋皮部が急激に昇温し,渋皮部が50℃に達したところで8分保温されていることが確認できる。また,クリ果肉部は,ランプ照射初期においては,全く温度変化が無く,その後徐々に昇温する特性であった。

図7は,照射後のクリの断面をサーモグラフィにより計測したものである。鬼皮部と渋皮部の温度が高く,果肉は加熱されていない状態が確認された。図6の特性とよく一致している。

図8は,搬送方向に対する鬼側表面の温度分布を示したものである,有効処理幅400mmの中ではほぼ均一な昇温が確認された。

図7 クリ断面の温度分布

図8 有効処理幅中のクリ表面の温度分布

3.2 赤外線照射によるクリ果実内のクリシギゾウムシ殺虫効果調査

図9 各種加熱処理したクリの被害果率

各種条件にて加熱処理したクリの被害果率(クリシギゾウムシ幼虫の生存率)を図9に示す。なお,図9は,9月22日収穫分を1stロット,9月29日収穫分を2ndロットとして,収穫時期による相違も含めて評価したものである。いずれのロットにおいても,70℃,1~3分処理での殺虫効果が高いことが確認できた。また,70℃での殺虫効果は比較的安定していたが,50℃及び60℃では収穫時期により結果は大きく異なった。この現象は,クリシギゾウムシの成長ステージが異なっているためと推察される。

3.3 赤外線照射がクリ果実の品質に及ぼす影響調査

各種条件にて加熱処理したクリ(各10個)のデンプンの熱変性を図10に示す。

このデータはヨードカリで染色した後,目視で染色範囲を計測したものである(図11)。

図11 デンプン熱変性

図10 加熱処理したクリのデンプン熱変性

この品質に及ぼす影響についても,上記殺虫効果評価と同様に1stロット及び2ndロットについて調査した。いずれも,70℃で若干の変性と外観上クリ先端部に若干の変成を認めたものの,50~60℃では無処理と大きな違いは認められなかった。また,この傾向は両ロット共に同様であった。

3.4 収穫時期が異なるクリにおける殺虫効果と品質影響調査

3.2項,及び3.3項の中で記載した通り。


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