創造人×話

段ボール愛からはじまった活動が、結果的にアップサイクルという概念にもつながっていることにやりがいを感じています。

島津 冬樹さん段ボールピッカー

昨今、SDGsやサスティナビリティのための取り組みが広く社会で注目されている中、島津さんは、正に時代を先取りする考え方でリサイクルからアップサイクルへとつながっていく活動をされていらしたのではないでしょうか。

段ボールを使った家具の提案

私自身はあくまでも段ボールが純粋に好きで、かっこいいものをつくりたいという気持ちを大切にしながら活動を続けてきました。それが結果的にサスティナブルな考え方に結びついたのだと思っています。私が主宰するブランド「Carton」は“不要なものから大切なものへ”をコンセプトとしており、その活動の一つとして国内外で段ボール財布づくりのワークショップを開催しています。参加された方々がワークショップを通して、ただの段ボールが世界でたった一つの新たなかたちのものになる瞬間を楽しんでくださり、気づきや価値観の転換を感じてくださることにやりがいを感じていますし、それをきっかけに段ボールだけではなく、他のものにも何か別に使い道はないかを考えていただければ、新しい発見や、ものを大切にする気持ちにも自然につながるのではないかと思います。

THE NORTH FACEとタイアップしたワークショップ
中国・上海で開催されたワークショップの様子

最後にこれからの展望についてお聞かせください。

ITEMS FOR NIKE/CLUTCH BAG

昨年は企業とのタイアップが多かったので、今年はもっと自分から発信していく活動をしていきたいと考えています。コロナ禍前は、中国で200人規模のワークショップを開催するなど海外での活動も多かったのですが、今は国内で対面ワークショップを行うことも難しい状況にありますので、オンラインや2年前に出版した本で段ボール財布のつくり方を伝えていき、身の回りにあるものの価値を見直すきっかけになってくれると嬉しいです。今後の展望としては、いつか世界中から集めてきた段ボールコレクションを展示する段ボールミュージアムをつくりたいと考えています。

FUYUKI SHIMAZU COLLECTION / 横浜ランドマークプラザにて

『旅するダンボール』という考え方から移動式の美術館も面白いと思いますし、将来的にはどこかに常設美術館をつくり、そこからコレクションが旅に出るのもいいですね。他にも、段ボールで素敵な家をつくりたいなど、やってみたいことはたくさんありますが、まずは現在の状況が早く落ち着いて、また海外に段ボールと出会う旅に出かけることができる日が来ることを願っています。

島津 冬樹 (しまづ ふゆき)

1987年生まれ。
多摩美術大学卒業後、広告代理店を経てアーティストへ。
2009年の大学在学中、家にあった段ボールで間に合わせの財布を作ったのがきっかけで段ボール財布を作り始める。
2018年自身を追ったドキュメンタリー映画『旅するダンボール』(監督:岡島龍介 / 配給:ピクチャーズデプト)が公開。サウス・バイ・サウスウエスト(アメリカ)でのワールドプレミアを皮切りに日本でも全国ロードショー。Hot Springs Documentary Film Festival(アメリカ)やNippon Connection Film Festival(ドイツ)といった各国のフィルムフェスティバルで高い評価を得る。他方で上海デザインフェスティバルなど、中国のアート・環境系のイベントに多く招聘されている。
著書として「段ボールはたからもの 偶然のアップサイクル」(柏書房) / 「段ボール財布の作り方」(ブティック社)がある。