創造人×話
光の入り方でさまざまな表情を見せる小さなガラスの中で輝きを放つ宇宙を感じていただけると嬉しいです。
戸水 賢志さん株式会社Plus Alpha代表取締役/アーティスト
今回は、株式会社Plus Alpha代表取締役の戸水賢志さんをご紹介します。わずか1インチほどの小さなガラスの中に壮大な宇宙を閉じ込めた「宇宙ガラス」という作品を制作されている戸水さんは、その独創的かつ幻想的な作品の数々で人々を魅了し、さまざまなメディアで取り上げられることも多く、日本はもちろん、世界各国にたくさんのファンを持つ注目のアーティストです。
まず初めに、手のひらの宇宙と称され、とても人気の高い幻想的なグラスアート「宇宙ガラス」とはどういうものなのかお教えください。
「宇宙ガラス」は、透明感が高く軽量で、硬くて丈夫な耐熱ガラスと人工オパールや24金、シルバーなど、さまざまな金属や鉱石を幾重にも組み合わせながらバーナーで加熱し、ひとつひとつハンドメイドでつくり上げる作品で、ペンダントトップやオブジェとして親しまれています。
制作の工程上、ひとつとして同じものはなく、世界で1点だけのオリジナルの作品であり、経年劣化しないため何年経っても、その輝きを持続することができるということも特長と言えます。手のひらにのるサイズでありながら、まるでガラスの中に壮大な宇宙を閉じ込めたように見えることから「宇宙ガラス」と名付けました。
戸水さんがガラスアートを始められた経緯についてお聞かせ願います。
私は幼少期から絵を描いたり、段ボールで何かを作ったりして、ものづくりが好きな子供でしたが、美術系の大学ではなく普通の4年制大学に行き、卒業後は企業に就職してシステムエンジニアとして仕事をしていました。日々デジタルの世界に触れていたせいか、何かアナログでものづくりをやってみたいと思い、初めは趣味でシルバーアクセサリーを制作していたのですが、そのうちに他の素材と組み合わせて作品づくりをしたいと思い始め、昔から好きだったガラスに思い当たりました。そしてガラスについて知れば知るほど、その素材の持つ可能性に魅了されてガラスの作品づくりを始め、しばらく会社勤めをしながら制作を続けた後に独立して、Plus Alphaという会社を設立しました。
「宇宙ガラス」という作品はどのようにして生まれたのでしょうか?
最初は、花やクラゲなどをモチーフにしたデザインのガラス作品をつくっていたのですが、徐々に左右対称なスタイルや既にあるデザインではなく、もっとランダムな、目に見えないもので何かを伝えることができるものをつくってみたいと思うようになりました。そして、いろいろ考えるうちにイメージはあるものの、なかなか行くことはできない、写真では見たことがあるけれど、実際に行ってみないと分からない存在である「宇宙」をモチーフにした作品づくりにたどり着きました。
透明なガラスを使うことでレンズ効果により奥行きが出て、さまざまな角度から見え方の変化を楽しめるので、見ていて飽きない作品であることを特長としています。
「宇宙ガラス」を制作される際に大切にしていらっしゃることは何ですか。
「宇宙ガラス」をつくり始めた時には、ランダムな螺旋の美しさに感心して、まずは螺旋を追求したいと思って制作に熱中していました。
私は写真が好きなので、つくった作品を撮影することで客観的に見て、全体のバランスや色の入り方などを判断した上で次の作品づくりに生かしています。惑星の軌道をイメージした螺旋に加えて人工オパールで惑星を、気泡で遠くにある無数の星の煌めきを表現し、日々制作工程を少しずつ変更していますので、つくった年度によって作風が異なる点も面白いのではないかと思っています。
ガラスの中の宇宙は何をイメージしているのかと聞かれることが多いのですが、実際の宇宙の写真を参考にするのではなく、自分の中でイメージする宇宙を想像しながらつくることを大切にしています。作品を手にとってくださった方が地球に見えたら地球ですし、他の惑星や存在しない惑星に見えたらそれで良いという考え方に基づき、自分のイメージをかたちにして見る方の想像力に委ねることで、それぞれの方にオリジナルの宇宙を楽しんでいただきたいと考えています。
戸水さんの作品は非常に人気が高く、なかなか入手困難だと伺っております。どのような販売スタイルをとっていらっしゃるのでしょうか。
おかげさまでご好評をいただいておりますが、スタッフは数名いるものの、作品をつくるのは私一人ですので、どうしても制作する数が限られてしまいます。現在はウェブによる抽選販売を毎月実施していて、先日第50回目を迎えました。また、全国で定期的に展示販売会を行うと同時に、広島市にあるエディオン蔦屋家電では常設で店頭販売もしています。「宇宙ガラス」はひとつひとつ手づくりで、同じものは二度とつくることができません。私はそれを手にした方にとって世界にひとつだけの“宝物”となってくれることを願い、長く愛でていただければ嬉しいという想いを持って作品づくりを続けています。