技術資料
生物への光応用技術 光の殺菌・滅菌への利用
光応用事業部 光応用開発部
キーワード
紫外放射,殺菌,空気殺菌,表面殺菌,水殺菌,パルス光殺菌
殺菌・滅菌(紫外線殺菌・電子線滅菌)のご案内
紫外線を放射する殺菌ランプを利用した紫外線殺菌ソリューション「殺菌・滅菌(紫外線殺菌・電子線滅菌)」の詳細は以下よりご覧いただけます。
- 殺菌・滅菌(紫外線殺菌・電子線滅菌)
5.利用例の紹介
5.1 空気殺菌への利用
空気中に浮遊している微生物は,ごみや水滴に付着して(カビの場合は胞子が)浮遊しているので自然沈降して物質へ付着し,増殖条件が整えば増殖することになる。また,人が吸い込めば飲食と同じことになる。そこで,空気殺菌は最初に考えなければならない処理である。しかし,自然沈降により床面などに微生物は通常多く存在し,人が出入りすると床面からそれは舞い上がり,気中の微生物濃度が高くなるので,人の出入りなどがある場合には,明確な効果を即座に求めるのはむずかしい。
空気殺菌としては,以前は厨房にトラフ形の低圧水銀ランプを吊り下げて使用し,新幹線のトイレにも設置されていた。これは,自然対流を利用した空気殺菌のため確実性に欠けている。近年,UVが人に対しても有害であることから,器具内にランプを収納することで,人には照射されない構造とし,ファンで強制的に空気を送り込む空気殺菌灯(図2)により,確実に装置通過した空気が殺菌されるようになっている。この空気殺菌灯の用途例を表2に示す。
食品工場・レストラン | 製品のカビ・菌の発生防止,作業場・厨房殺菌,調理台・機械の表面殺菌と落下菌防止 |
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学校 | 給食・調理室の殺菌 |
病院・医療施設 | 調理室の殺菌 |
家畜飼育場 | 牛・豚・鶏舎内の殺菌 |
電子工場 | クリーンルームの殺菌 |
5.2 水処理分野への利用
水処理への利用は表3に示したように食品分野,医療分野,半導体分野,農業・水産分野など幅広い。特にわれわれの身近な上・下水の処理についての利用について紹介する。
食品工場 | 清涼飲料水・醸造用水の殺菌,材料・容器などの洗浄水や冷却水の殺菌,工場・機械の洗浄水の殺菌,工場廃水の終末殺菌処理 |
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電子工場 | 超純水の殺菌,クリーンルーム・工場の洗浄水の殺菌 |
医薬品・化粧品工場 | 原料水の殺菌,クリーンルーム・工場の殺菌 |
養殖産業 | カキ・稚魚などの循環養殖水・洗浄水の殺菌,養殖孵卵用水の殺菌,養殖排水の終末殺菌処理 |
医療施設 | 手洗水の殺菌 |
その他 | プール用水の殺菌,水耕栽培用水の殺菌 |
5.2.1 上・下水分野への利用
上水中のクリプトスポリジウム(原虫)の不活性化処理が近年話題となっている。上水は塩素消毒しているが,このクリプトスポリジウムは飲料に適する塩素濃度では不活性化することは難しいため,過去に集団中毒を起こした事例が多くある。そこで,その対策として現在膜により除虫する処理が採用されている。しかし,この膜処理方法は高価であるので,いまだ全ての浄水場に設置することができない状態である。また,このクリプトスポリジウムのUVによる不活性化については,問題が発生した当初は評価方法も確立しておらず,原虫という高等な微生物であることもあり,不活性化に必要なUV光量は数千mJ/cm²ともいわれていたが,近年,その線量も10mJ/cm²程度で十分であることも分かり,UVランプを上水(地表水以外)に利用してもよい指針が出された。このUV水処理装置の普及を図るために,2006年12月5日に日本紫外線水処理技術協会が発足され,今後の本分野での利用拡大が予測される。
下水においては,UV消毒装置として多く下水処理場に設置されている。薬品などを添加する従来の方法とは異なり,処理水に薬品や副生成物などの残留物が排出される恐れがない処理方法として利用されている。本装置は図3に示した通り,ジャケット(保護管)に入ったUV殺菌ランプをユニットにし,それを用水路中に水没させ排水時に殺菌する。用水路に設置できない場合などユニットを組み込んだ容器(パッケージ型)も利用されている。
5.2.2 用途・システムに合わせた利用例
各種用途に対して原水の処理システム例を図4に紹介する。図からわかるように,殺菌が必要な水は多く,UV照射のみで殺菌が行なえるため,原水に影響を与えない有効な処理方法であるので,利用はさらに拡大していくことが予想される。
ただし,処理水のUV透過率が悪い場合や,溶解成分が装置に付着してUV光量が低減するなど殺菌効果が悪くなることになるので,殺菌効果に影響する因子は利用時に明確にしておく必要がある。
参考文献
- 岩崎電気(株):カタログ.
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