技術資料
超高圧水銀ランプの「ちらつき」抑制波形の検討
光源事業部 光源開発部 回路設計グループ
光源事業部 映像光源部 映像光源技術グループ
東洋大学 工学部 電気電子工学科 佐藤 剛之,五十嵐 雅
キーワード
超高圧水銀ランプ,プロジェクタ,ちらつき,パルス電流
4.実験2
4.1 方法
実験2では,実験1のパルス電流重畳波形(波形2~7)の各波形での最適なパルス電流の幅を求めることを目的とした。
重畳するパルス電流の幅を,実験1の0.5倍(0.14ms),1倍(0.28ms),2倍(0.56ms)の3種類とし,ピーク電流値や点灯周波数など他の条件は実験1と同じ波形を作成した。
実験は,各波形で4時間連続点灯し,最後の30分間の「ちらつき」を測定することとした。そのため,1回の測定で得られるデータ数は8999個となる。なお,測定に使用したランプは,実験1で1000時間点灯したランプを用い,実験1の波形2で使用したランプは,実験2の波形2(0.5,1,2倍)で点灯した。
4.2 結果
結果を図10から図15に示す。横軸は「ちらつき」の大きさ(%)を,縦軸は「ちらつき」の発生回数を対数(1回~1000回)で示している。これらの図から,重畳するパルス電流幅によって「ちらつき」の傾向が変化することがわかる。
波形2は測定に使用したランプが元々ちらつかないため,パルス幅の変化による「ちらつき」の変化が出なかったと思われる。波形4は重畳するパルス電流幅が広い方が「ちらつき」が少なく,波形3,5,6はパルス幅が狭い方が「ちらつき」が少ない結果となった。
波形7は波形2と同様に「ちらつき」の回数では変化が見られなかったが,幅2倍のとき同時に測定していたランプ電圧に大きな変化が現れた。この場合の,点灯開始直後から90分間のランプ電圧変動を示したグラフが図16である。点灯初期84V以上あったランプ電圧は,90分間で71V以下まで14V近く低下し,その後は70V付近で安定した。これは90分という短時間で,電極先端にアークの起点となる突起が成長したため電極間の距離が短くなり,ランプ電圧が低下したものと考えられる。
5.まとめ
ランプ点灯波形にパルス電流を重畳することにより,「ちらつき」抑制効果が発生することが確認された。特に波形2(矩形波半波の後側に正のパルス電流を重畳)と波形7(矩形波半波の前側に負のパルス電流を重畳)に大きな「ちらつき」抑制効果が見られた。
今後は「ちらつき」抑制効果のメカニズムの解明と,「ちらつき」抑制効果とランプ寿命の関係についての検討が必要である。
この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第15号掲載記事に基づいて作成しました。
(2006年10月20日入稿)
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