技術資料
交差点における照明要件(その2) - 夜間事故発生交差点の実態 -
技術開発室 技術部 技術開発グループ
キーワード
交差点,交通事故,照明要件,視認性,安全安心
2.交差点施設の実態調査(続き)
2.1 調査結果と考察
調査結果の一例を図2から図5に示す。
(1)光学測定
11箇所の交差点における光学測定の結果(表2)を参照すると,横断歩道部および歩道部の平均水平面照度は,最も暗い交差点と明るい交差点の照度比がどちらも4倍程度で,個々の交差点で視環境が大きく異なる。また,横断歩道部と歩道部の平均水平面照度の平均値は,13.3ℓxと8.5ℓxであり,歩道部の方が平均値で36%低いことが分かった。
一方,交差点の事故率は,横断歩行者の視認性に関係する横断歩道部の最小鉛直面照度が10ℓx以上あると大きく減少するとされている。しかし,今回の調査では11箇所中6箇所が10ℓx未満であった。また,交差点内の平均路面輝度は1.8cd/m²であったが,0.2cd/m²や0.8cd/m²といった非常に暗い交差点も存在していた。交差点内の路面輝度均斉度の平均値は0.2だった。
測定項目 | Ave | Max | Min |
---|---|---|---|
横断歩道部の平均水平面照度(ℓx) | 13.3 | 26.5 | 6.8 |
横断歩道部の最小鉛直面照度(ℓx) | 10.6 | 21.7 | 1.8 |
歩道部の平均水平面照度(ℓx) | 8.5 | 15.5 | 3.6 |
交差点内の平均路面輝度(cd/m²) | 1.8 | 3.7 | 0.2 |
交差点内の平均路面輝度の均斉度 | 0.2 | 0.4 | 0.1 |
(2)車両運転者から見た歩行者の視認性
車両運転者の視点から横断歩道上の歩行者の視認性を評価した結果,歩行者の背景輝度が影響していることを確認した。
- 直進車両から見た場合は,比較的均一な輝度分布である路面や停止車両が横断歩行者の背景となる。
この場合,ヘッドライト点灯の有無が視認性に与える影響が大きい。 - 右左折車両から見た場合は,交差点の周辺施設(GS,コンビニ,自動販売機,畑など)が横断歩行者の背景となり,輝度分布が複雑化し輝度レベルも交差点個々に異なっている。
周囲環境の明るさをコントロールすることが困難なため,交差点では横断歩行者を直射光で照射することが重要であることが分かった。
次に,各交差点の最も暗い横断歩道を対象に実施した,白い服を着た歩行者と黒い服を着た歩行者に対する車両運転者からの見え方評価の結果からは,下記に示すように歩行者の視認性が横断歩道部の最小鉛直面照度と比例関係にあることが示唆された(表3)。
- 「E交差点」の横断歩道部の最小鉛直面照度は21.7ℓx。
- 衣服の色に関わらず歩行者の視認性は良好であった。
- 「D交差点」や「J交差点」の横断歩道部の最小鉛直面照度は10ℓx程度。
- 白い衣服を着た歩行者の視認は良好だが,黒い衣服を着た歩行者の視認性は劣る。また,視認性の良否は,歩行者の背景の明るさに依存していた。
- 「B交差点」や「F交差点」の横断歩道部の最小鉛直面照度は10ℓx以下。
- 黒い衣服を着た歩行者,白い衣服を着た歩行者ともに視認し難かった。
以上より,交通事故対策にとって,横断歩道部の交差点中心方向の鉛直面照度を向上させることが重要であると言える。また,横断待機位置の車両運転者からの視認性を向上させるためには,横断待機位置と横断歩道部の明るさの差を少なくすることが重要であると言える。
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