技術資料
エキシマ光照射装置の開発 - 装置開発の経緯と技術内容の紹介 -
技術開発室 技術研究所 知能化システムグループ
光応用事業部 EB推進室
光応用事業部
株式会社アイ・ライティング・システム 技術管理部
キーワード
キセノン(Xe),エキシマ,真空紫外光,172nm,照射装置
4. エキシマランプの特徴
当社のエキシマランプは,一対の主放電電極とランプ始動時に放電開始を容易にするための始動用の電極を有している。このことにより,自励発振部,及び,マッチング部はランプ始動開始時に必要とされる高電圧を気にすることなしに,反射波を起こさないようにランプとの最適化のみに専念した設計にすれば良いことになる。したがって,RF電力のほとんどが(80%以上)ランプに入力されるので回路の損失が少ない省エネ設計となっている。また,始動電極に印加する電圧値は,主放電電極とは独立に,始動性のみを考えて,設計している。
当社のエキシマランプの放電形式は,バリアー放電ではなく,グロー放電である。光出力の変動はなく,CWで,基本的には,無段階で,光出力を可変する事ができる。これは,光出力のピーク値は変えられず,そのパルス数を変えることにより,調光せねばならないバリアー放電方式とは異なり,最大光出力が可変できるので,処理対象物に対するダメージを低減できる特徴がある。当然,ランプ電流は,パルス状ではなく,連続した正弦波となっている。
エキシマランプの点灯周波数がバリアー放電方式に比べて数百倍以上も高いので,プラズマ中のイオンの加速電圧が低く,かつ,加速時間も短くなる。したがって,イオンの最大速度が遅くなり,放電容器へのイオン衝撃が弱くなるため,ランプ寿命が長くなる特徴もある。
4.1 ランプの高出力化方法
たとえば,Xe封入ガス圧300torrのエキシマランプに,RF高周波を増加させていくと,ある所まではエキシマ発光は増大するが,ある電力値を境に波長の長い紫外線の量が増大するという結果になる。更なる高出力化(単位面積当たりの172nm照度値が大きい)を行うためには,Xeのガス圧を500torr,700torrと増大していけばよいのだが,ランプの内部にアーク放電(熱プラズマ)が発生し易くなり,ランプの外部電極間の電圧が低下することになる。良いエキシマ発光を行わせるためには,外部電極間の電圧値を高い状態に保つ必要がある。
外部電極間の電圧値を高い状態に保ちつつ,アーク放電(熱プラズマ)をランプ内部に発生させない方法は,二つある。一つは,外部電極に電界集中箇所を多数製作する方法であり,具体的には,ヤスリの面のような構造とすることである。もう一つの方法は印加する電圧に休止期間を設けて,アーク放電に移行する前に,その成長を止める方法である。当社のランプは前者の方法を採用しているが,後者も併用すると更なる高出力化が達成できるであろう。
注)1torr=0.13kPa
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