技術資料

パルスランプを用いたクリプトスポリジウムの不活化について

光応用事業部 光応用開発部 ソフトエンジニアリング課
光応用事業部 光応用営業部 技術グループ

キーワード

紫外線,パルスランプ,クリプトスポリジウム,不活化,上水

3.実験結果および考察

RUN1,2についての実験結果を図2,3に,RUN3の実験結果については図4,5に示す。また,RUN4の実験結果については図6に示す。

(1) 脱嚢法評価における各ランプの比較

図2に示すように,低圧水銀ランプの場合は紫外線量に対して一次的に不活化率が増加したが,パルスランプの場合は80mJ/cm²を境に異なる傾きで不活化率が増加した。

また,図3に示すように,不活化効果においては,中圧水銀ランプ,高圧水銀ランプよりもパルスランプの方が優位であった。

以上のことから,生育活性で評価したクリプトスポリジウムの不活化効果はパルスランプに優位性が見られた。

図2 RUN1の実験結果

図3 RUN2の実験結果

(2) 濁質を含んだ対象水における各ランプの比較

濁質を含んだ水に対する各ランプの不活化効果について,脱嚢法と細胞培養法にて比較を行った。

図4に示すように,脱嚢法による不活化効果の評価においては,低圧水銀ランプ及び高圧水銀ランプにてテーリングらしき傾向が見られるものの,パルスランプについてはテーリング現象は起こっていない。しかしながら,不活化速度に明確な差は見られなかった。

図5に示すように,細胞培養法を用いた場合も,低圧水銀ランプ,高圧水銀ランプ及びパルスランプにおける不活化速度の明確な差は見られなかった。

また,この時の評価実験では,細胞培養法は不確実性が高く(95%信頼区間が広い),検出感度も4log程度が限界であった。

図4 脱嚢法による各ランプの不活化効果

図5 細胞培養法による各ランプの不活化効果

(3) 評価手法の比較

図6 RUN4(評価手法の違い)

実験結果(図6)より,紫外線に対する感受性は細胞培養法が一番良く,次にマウス感染法となり,脱嚢法は紫外線に対する感受性が極端に低く出ることが確認できた。

4.まとめ

  1. 紫外線量の実測値ベースでの比較では,クリプトスポリジウムの不活化に対してパルスランプが他のランプに比べ,高照度領域において優位性を持つことが確認できた。
  2. 紫外線に対する感受性は,
    • 細胞培養法>マウス感染法>>脱嚢法
    の順に高いことがわかった。

なお,本研究は,お茶の水女子大学大学院 大瀧雅寛助教授および 東北大学大学院 中井裕教授との共同研究である。


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