技術資料

UV硬化装置と加工技術の動向

光応用事業部 光応用開発部 ソフトエンジニアリング課

キーワード

UV硬化装置,加工技術,樹脂,紫外線光源,照射器

3.UV硬化装置(つづき)

3.2 照射器

照射器は,内部にUVランプを収納し被照射物に対して有効にUVを照射するもので,反射板,ランプホルダー,ランプおよび反射板の冷却機構,シャッター機構などから構成されている。

特に,反射板は図7の通り,形状により配光特性を変えることができ,用途に合ったものが選定される。また,図8の通り,被照射物に対して熱の影響が少なくなるように可視光線および赤外線をミラー後方に透過させるようにしたコールドミラーなどを組合せた反射板の種類がある。

照射器はランプを冷却し発光に最適な温度にする機能も持っている。空気の流れを利用して冷却する照射器(空冷式照射器),ランプを空気の流れで冷却し反射板を水で冷却する照射器(空冷式照射器),ランプを空気の流れで冷却し反射板を水で冷却する照射器(空冷水冷式照射器),ランプ,反射板とも水で冷却する照射器(水冷式照射器)の種類がある。

さらに,被照射物が照射器の真下で停止すると,その温度が上がることや過剰処理となるなどの問題となるケースがあり,照射器にシャッター機構を装備したものも標準で用意されている。

図7 反射板形状
集光型 平行光型
集光点使用 集光拡散点使用
集光型 集光点使用 集光型 集光拡散点使用 平行光型
断面形状は楕円面で構成されている。集光点で使用すると照度の強い紫外線を照射する。集光点よりも離して使用すると拡散となり比較的均一に照射される。 断面形状は放物面で構成される。被照射面に広い範囲で均一に紫外線が照射される。
図8 反射板の種類・低温キュアーシステム
アルミミラー アルミミラー
反射率の高い高純度アルミ製の反射板を使用したり,紫外線及び熱線を効率よく反射させる。

●分光反射率(直線反射率)
分光反射率(直線反射率)

●分光反射率(直線反射率)
分光反射率(直線反射率)

●熱線カットフィルター分光透過率
熱線カットフィルター分光透過率

コールドミラー コールドミラー
正確に設計されたガラス成形板に数種類の金属化合物の薄膜を蒸着したコールドミラー。
紫外線を効率よく反射し,UV硬化にほとんど寄与しない可視光線及び赤外線をミラー後方に透過する。
コールドミラー

熱線カットフィルター
コールドミラー + 熱線カットフィルター
コールドミラーと熱線カットフィルター(必要な紫外線を透過させ可視光線及び赤外線を反射する。)を併用し,さらに低温化が必要なワークに使用する。
コールドミラー

送風

(熱線カットフィルター)
コールドミラー + 送風 + (熱線カットフィルター)
送風を行いワークの温度上昇をおさえる方式である。送風する風量により,上昇する温度も変わってくる。熱線カットフィルターと組み合わせると,さらに温度は下がる。

3.3 電源装置

図9 3kW級インバータ式電子安定器

電源装置は電源部と操作部で構成されている。電源部は放電ランプを点灯するために必ず必要な安定器とランプの点灯,調光,シャッター,冷却装置,その他生産設備との信号による関連機器の制御を行う制御回路で構成されている。操作部はランプの点灯,消灯,調光等の操作及び各種表示による監視をおこなう。近年では,銅―鉄安定器からインバータ式電子安定器を搭載した電源装置となり,小型・軽量,供給電力の安定化制御,自動調光等の信頼性の向上が図られている(図9は3kW級インバーター式電子安定器)。

3.4 UV照射装置例

それでは,以上説明した装置で構成された実際のUV照射装置の数例を以下に紹介する。

(1)コンベア付UV硬化装置<4kW標準コンベア>2)

コンベアと一体化としインバーター式電子安定器を搭載したことで小型コンパクトなUV硬化用コンベアシステム(図10)となっている。光源も発光長250mmの高圧水銀ランプとメタルハライドランプの2種類選択可能で,2kW(80W/cm),3kW(120W/cm),4kW(160W/cm)の切り替えも可能である。そのため,小サイズ製品の生産や研究開発用にも最適であり,各用途に利用されている。

また,さらにコンパクトにした発光長125mmの1.5kWタイプのUV硬化用コンベアシステム(図11)もある。

図10 UVコンベアUV照射器(4kW)

図11 UVコンベア付UV照射器

(2)木工用UV装置2)

図12 平板木工用UV装置

木工用UV照射システムは,平板から立体物まであらゆる製品に対応できる。図12は水銀ランプ4kW2灯と3kW2灯により平板を処理する装置例である。

また,図13に示した装置は,箱もののワークに対して6面全体を均一に照射するシステムであり,全部で11灯のUVを利用するが,照射炉外UV1灯はワークがコンベアベルトに来る前に下面を硬化させ,次に下面照射UV3灯で完全にワークの下面を硬化させる。さらに,斜め照射UV4灯でワークの側面を硬化させ,最後に上面照射3灯でワークの上面を硬化させることで箱もの6面全体の硬化が完成する。また,この時のランプ本数等は,ワークサイズや硬化樹脂の特性により,その都度選定される。

図13 箱もの木工用UV装置

(3)液晶滴下工法・シール材硬化装置2)

図14 液晶滴下工法新シール材UV硬化装置

身近になった液晶ディスプレイだが,その作製方法も大きく変化している。従来までは,2枚のガラス基板の一方にシール材塗布後,他方のガラス基材と重ね合わせ,長時間加熱して空セルを作製し,その後真空中で液晶をセル中に注入するのであるが,セルの隙間も約5μmと狭くサイズにも因るが,数時間から数十時間が必要であった。そして,最後に加圧しながら,液晶注入孔をUV硬化樹脂で封止して液晶パネルが完成していた。

そこで,従来の問題を改善した液晶滴下工法が近年登場した。この工法とは,従来と同じようにガラス基板の一方にUV硬化型シール材を塗布し,その型枠内に液晶を適量滴下した後,真空中でもう一方のガラス基板と重ね合わせ,UV照射によりシール材を硬化させる工法である。UV照射の後に更に加熱させて完全硬化させることで完成する。本工法は従来工法と比較して次の特長を有する。

  • 工程数削減
  • 設備コストの低減
  • ライン長の短縮 ほか

図14にメタルハライドランプ14kW3灯用でガラス基板サイズ:730mm×920mmの処理用装置例として紹介する。

(4)スポット型UV照射器2)

電子部品の小型軽量化,高機能化のため,簡単に工程中で使用できるので,光ピックアップレンズ等の小型部品の接着に多く用いられている。

ランプはショートアーク型の超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ,ライトガイドは石英製の光ファイバーを用いているのが大部分で,一般的に図15のような光学系3)となっている。

ランプからの光をできるだけ多く光ファイバーに入射させるために補助ミラーを使用し,集光による温度上昇を抑えるためにコールドミラーを2段使用するなどの工夫がされている。図16は超高圧水銀ランプ350Wを使用した装置の外観である。

図15 スポットUV照射装置の光学系

図16 スポット型UV照射器

(5)UV洗浄改質装置4)

図17 UV洗浄改質装置

今まで紹介した装置は,UV硬化樹脂を硬化させるためであったが,この他にUV硬化した塗膜と基材との密着性向上のための前処理として,基材にUV照射する装置もあり,25Wから800Wの低圧水銀ランプが使用される。低圧水銀ランプは,蛍光灯と同じ仲間で254nmの発光が主であるが,さらに短波長の185nmの発光もあり,空気(酸素雰囲気)中で照射するとオゾンを生成することができる。このオゾンと光エネルギーによりプラスチック表面などの改質や表面の有機物汚染物の除去を行う装置である。図17は25W低圧水銀ランプ6灯を組み込んだバッチ型UV洗浄・改質装置である。

最近では,キセノンのエキシマ発光(172nmの単色光の放射)により,低圧水銀ランプよりも高速処理可能なエキシマ装置の利用も拡大してきている。

4.おわりに

UV照射装置といっても,多種多様の装置があることが分かっていただけたと思う。UV照射により瞬時の処理ができ,UV硬化樹脂は無溶剤で環境にやさしいなどの特長も持っている。その特長が活かせるかどうかを,まずは利用される皆様が試して頂きたいと思う。UV硬化樹脂とUV光源,UV硬化樹脂と基材との関係など実際に確認しないと分からないところも多いからである。

また,電子線照射装置による硬化処理ついても装置メーカ等で照射実験が可能であるので是非試して頂ければと思う。

UV装置もやっと認知され,多くの人にも理解されるようになってきたので,今後も,ユーザ,樹脂メーカと装置メーカが一体となり,本分野がさらなる発展をしていくよう装置メーカとして努力したい。

参考文献

  1. アイグラフィックス(株),製品カタログ「アイキュアーライト」(2002).
  2. 加藤清視:紫外線硬化システム,総合技術センター,p.410(1990).
  3. 岩崎電気(株),製品カタログ「イワサキ紫外線洗浄・改質装置」(1999).

<注>本稿は(株)シーエムシー出版刊,市村國宏監修「UV・EB硬化技術の現状と展望」P.79~90(2002年12月27日発行)に掲載された記事を若干修正して転載したものである。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第8号掲載記事に基づいて作成しました。
(2003年2月20日入稿)


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