施設報告
岩崎電気テクノセンター「HIKARIUM」
営業技術部 LCS
製造本部 電子制御システム部 制御技術課
キーワード
岩崎電気テクノセンター,HIKARIUM,ITACS,DALI,DMX,ITACS CONNECTY,照明制御
3.設備概要
岩崎電気テクノセンター「HIKARIUM」では,照明制御における国際標準の通信規格であるDALIや,無線調光制御,フルカラーDMXといった多様なシステムを,自社の照明制御システム「ITACS-LC」により統合管理している(図13)。エリアごとに用途に合わせた細やかな制御を行い,省エネルギーと働く人の快適性,知的生産性の向上をもたらす,先進的な照明環境の創造に取り組んでいる。
3.1 照明機器
照明設備の一覧を表1に示す。
設置階 | 設置エリア | 設置器具 | 数量(台) |
---|---|---|---|
1F | エントランス | LEDスポットライト | 26 |
試作・実験エリア | 高天井用照明器具 LEDioc HIGH-BAY α |
36 | |
施設内 | 照明用制御装置 LEDioc Color Controller |
1 | |
2F | 施設内 | 照明制御システム ITACS-LC |
1 |
2F〜4F | 執務室(事務エリア),会議室 | LEDベースライト (Hf86W×2高出力相当) |
247 |
執務室(コラボレーションエリア) | 間接照明 LED調光調色ライン照明 |
90 | |
執務室(コラボレーションエリア) | LEDユニバーサルダウンライト | 180 | |
会議室,応接室,役員室,受付ホール | LED調光グレアレスダウンライト | 106 | |
外構 | 施設周辺 | フルカラーLED投光器 LEDioc FLOOD FULL-COLOR |
6 |
3.2 DALI制御
エントランス,受付ホール,執務室(事務エリア,コラボレーションエリア)は,国際規格(IEC62386)であるDALIを使用した制御を行っており,DALIコントローラは自立分散型フロアコントローラとして各階に設置されている。
このDALIコントローラは,ITACSからの制御情報をDALI対応の出力端末器に伝達し,接続されているPWM信号方式の照明器具や,DALI対応の照明器具を制御している。出力端末器は施設全体で246台設置しており,それぞれが異なったアドレスを与えられているため,細やかな調光制御も可能である。また,入力端末器としてマルチセンサ(人感・照度)を165台設置しており,センサ入力による自動制御を行っている(図14,図15)。
具体的には,ITACS-LCで就業後のスケジュール制御を行ったときのみ,人感センサを有効とし,各デスクの在席状況により,照明器具を減光・消灯することで,省エネ効果を高めている。このセンサの検知時間は任意に信号線経由での設定が可能で,人の移動頻度に合わせたセンサの検知時間設定が可能である。
3.3 EnOcean無線通信
役員室や4階のコラボレーションエリアでは,DALIシステムと親和性の高い,欧州発の技術であるEnOceanの無線スイッチを使用している。このスイッチは,環境発電技術を用いており,スイッチを押す動作により発電し,これを使って無線通信を行い制御している。電池(電源)不要であるため,照明の消灯のみでなく,スイッチ動作においても省エネに寄与している。壁面からの取り外しが可能であるため,手元に置いてリモコン感覚での調光制御が可能である。
3.4 無線調光制御
1階の試作・実験エリア内の高天井では,「ITACS CONNECTY」による無線調光制御を行っている。ITACS-LCからの制御を無線親機が受け,その無線親機が1階高天井に設置した18台の無線子機に制御命令を出力している。無線子機は1台につき2出力可能で,回路ごとに高天井用照明器具「LEDioc HIGH-BAY α(アルファ)」を調光制御している。920MHz帯の周波数を使用することで電波の届きにくい場所にも回り込んで通信を行うことができる。また,子機間の通信状態が悪化した場合は,自動で通信経路を再形成し,安定した電波環境を構成できる(図16,図17)。
3.5 DMX制御
施設の外壁は「DMXコントローラ」制御によるライトアップを行っている。DMXコントローラからフルカラーLED投光器「LEDioc FLOOD FULL-COLOR」(図18,図19)にDMX信号を出力することで制御を行っている。RGBがそれぞれ256段階で調光設定可能であるため,約1677万色の表現が可能であり,シーン制御との組合せによって,なめらかなグラデーションを表現することができる。来客時の説明など,必要に合わせてタブレットから演出プログラムを点灯することが可能である。
4.おわりに
2017年10月に竣工したHIKARIUMは,研究開発の拠点としての建屋のみではなく,弊社が保有している照明技術が活用されており,自社照明のアピールにもつながる施設になると考える。
最後に,岩崎電気テクノセンター「HIKARIUM」完成にあたり,株式会社安藤・間様,株式会社サンテック様,ならびに,ご指導ご協力をいただいたすべての皆さまに心より感謝を申し上げる。
補遺
※商標出願中:「HIKARIUM」,商願2017-114342
この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第38号掲載記事に基づいて作成しました。
(2018年5月21日入稿)
テクニカルレポートに掲載されている内容は、原稿執筆時点の情報です。ご覧の時点では内容変更や取扱い中止などが行われている可能性があるため、あらかじめご了承ください。