施設報告

一級河川大川(旧淀川)
玉江橋上流左岸ライトアップ,大江橋下流左岸ライトアップ - 河川を彩る照明演出 -

国内営業本部 営業技術部 LCS
国内営業本部 西日本技術設計センター
国内営業本部 大阪営業所

キーワード

大阪,堂島川,玉江橋,大江橋,護岸,LED,フルカラーLED,ライトアップ,ライン照明

2.玉江橋上流左岸ライトアップ (堂島川 ほたるまち前護岸)

2.1 コンセプト

図2 田蓑橋からの景観

堂島川玉江橋上流は中之島西部に位置し,福島1丁目(玉江橋上流右岸)には「ほたるまち」があり,「文化・情報」,「にぎわい」,「居住」の3つの機能を備えた都市として開発されている。また,中之島4丁目側(堂島川玉江橋上流左岸)には国立国際美術館や大阪大学中之島キャンパス,大阪市立科学館があり,そのほかに大阪市立近代美術館,タワーマンション,ホテル,商業施設などの大型施設が計画され,「文化センターゾーン」と位置づけられている。堂島川玉江橋上流は,再開発地域として大阪の「現在」を色濃く映し出す地域である。また,歴史的には江戸時代に各藩の蔵屋敷が立ち並び,商業,川船業の中心的な地域であり,明治以降は工業地域として多くの企業が発祥している。これらのことから,この場所は時代ごとに地域の性格が大きく変わるが,川を中心とした繁栄を感じさせる常に新しい地域である。

堂島川玉江橋上流右岸の照明演出は,大阪の「現在」と地域の「歴史」を感じさせる明りとして「常に変化のある明り」をコンセプトとし,「水」,「歴史」,「現在」を感じさせる変化する明りにより演出する。また,この地域は文化施設,居住施設が多く,中之島のコンセプトにある「上品な落ち着いた光景観を演出」や「ほたるまち」の思いである与謝蕪村の俳句にある「蛍のようなやさしい光で川を照らす」ということから,華美で賑わいを感じさせる明りではなく,「さりげない明り」を基本とし計画する。

ライティングコンセプト
「街と共に 常に変化のある さりげない明り」

2.2 照明手法及び照明器具

護岸を3つの光で照らし出す。

要素,手法の異なる3つの光を使用し,組合せにより「変化」のある景観を創り出す。自然の水の動き,時間,季節により護岸の見え方を変化させ,常時の演出にイベント性を持たせることで特別感を創り出す。

A.『水』を感じさせる緩やかな動きのある光:水面照明

「水」を感じさせる青色の光で演出する。水面を直接光で照らし,波の立ち方,水位により見え方が変化し,常に動きのある景観を創る。水際を照らすことで陸上と川,夜景と映り込みを繋ぎ,水面が青く照らされるため対岸,歩道側で水辺の雰囲気を創り出す。一定の間隔で連続配置とし,波を表現している。

B.『現在』を感じさせるフレキシブルな光:護岸照明

「現在」を感じさせるフルカラーの光で演出する。現在の多様性,再開発の発展性に合わせ,明るさ,色を変化させられる光で,景観で一番目立つ護岸を演出する。通常時は一定のパターンで演出し,緩やかに動きをつける。イベント時には通常時と異なる,時間,季節,イベントに合わせた演出に変化させ,特別性を演出する。護岸を均一に照らすためラインで配置する。

C.『歴史』を感じさせる光:蛸の松照明

「歴史」を感じさせる要素を光で演出する。モチーフに江戸時代の「蔵屋敷の白壁」と現在は移設されている「蛸の松」を光で表現する。護岸照明で白色(月明りの壁面)を創り出す。蛸の松のもとあった護岸中央の張出部下に緑色の光(スリット光)で松を創り出し,古の情景を現代的に表現する。常時点灯するのではなく,通常時の演出の中に不定期に織り交ぜ,特別性,驚きを創る。

図3 演出イメージ

照明方法
A.「水」を感じさせる光
B.「現在」を感じさせる光
C.「歴史」を感じさせる光

水面の見え方

護岸の見え方

光の見え方

図4 護岸断面図及び演出イメージ

照明器具はそれぞれの光が干渉しないよう取付角度,フードなどで照射範囲を限定している。蛸の松照明は照明器具をボックスに内蔵し,スリットからのみ光が出る作りとなっている。LED光源の発光部が小さいため,スリット光がシャープになり,ボックスもコンパクトになっている。

使用照明器具
演出 記号 仕様 姿図 台数 消費電力 合計消費電力
水面照明
器具
LED105W投光器(広角配光)
光源
LED14W×6個
光色
ブルー
付属
遮光フード
27台 105W/1台
2835W/27台
4033W
護岸照明 フルカラーLEDユニット(ストリングタイプ)
光源
LED1W×8個(照明器具2m,1台あたり)
付属
取付用機器
106台/212m 1W/1個
848W/848個
蛸の松照明
器具
LED35W投光器(広角配光)
光源
LED14W×2個
光色
グリーン
付属
遮光ボックス
10台 35W/1台
350W/10台

図5 使用照明器具一覧

省エネルギー,保守性を考慮してLED照明を率先して使用した。また動きのある演出となっており,瞬時点灯が必須であるため,全ての照明をLEDとしている。

演出パターン
常時の演出

3種類の照明を時間帯によって変更し,時間の流れを演出する。

スケジュール

●通常時:時間帯により点灯パターンを変化させます。不定期に蛸の松照明を点灯させます。

図6 演出パターンスケジュール

イベント時(不定期)の演出

フルカラーLEDライン照明で護岸を白色光で照らし,白壁を表現している。護岸照明が消灯し,蛸の松が出現する。

図7 白壁演出

図8 蛸の松演出

毎正時及び30分の演出

フルカラーLEDライン照明の演出パターンを変化させ,四季に合わせた演出パターンとなっている。

図9 演出パターン

樹木をシルエットで浮かび上がらせる。

樹木を暗くすることで,背後の施設の光を際立たせている。再開発後,光が増加することで,樹木はシルエットで浮き上がる。歩道部では目線より低い箇所を重点的に明るくし,散策する雰囲気は壊さないよう配慮している。

図10 樹木のシルエット演出

樹木を暗くすることで、背後の施設の光が際立ちます。再開発後光が増加することで、樹木はシルエットで浮き上がります。景観上で陰影を強調することで落ち着いた雰囲気を創りだします。

歩道部では目線より低い箇所を重点的に明るくし、散策する雰囲気は壊しません。

景観上の光を整備する。

護岸周辺の既設歩道灯(ポールライト,アプローチ)道路灯の余分な輝度を抑制し夜景を整理している。再開発地域の夜景が目立つようになり,照明器具の水面の映り込みを低減させ,自然な景観を創り出す。また,歩道部では,演色性のよい光源に変更し,自然な視環境を創り植物の表情を正確に表現している。

図11 施設断面図

図12 道路照明

図13 歩道照明(ポールライト)

図14 歩道照明(アプローチライト)

2.3 年間スケジュール

季節,時間により変化させることで「おどろき」を創り,飽きの来ない「おもてなし」の空間を創出している。水面・護岸照明は,常時の演出の「水」をイメージした演出とし,「青色」を基調とした光のグラデーションを上流から下流にかけて徐々に光を変化させ,流れているイメージを創り出している。また,季節を表現した演出パターンを毎正時(30分毎)に出現させ,時間の共有を図っている。クリスマス時期にはイベントパターンを表示し,より地域に属した演出となっている。

図15 年間スケジュール

2.4 照明効果

時間,既設,不定期な演出が護岸へさまざまな表情を創り出すことで飽きの来ない景観となり,存在感があり,夜景においても「川」の存在が十分に強調されている。歩道灯や車道灯の輝度を抑えることで夜景,護岸・水面の演出がより効果的に夜景に映える景観となっている。主の視点場である商業施設の賑わいの雰囲気と同調し,楽しみ,驚きのある景観を創り出している。周辺施設のほたるまち,玉江橋,ほたるまち港と一体となった景観は大阪の観光資源の一つとして大阪の水辺を彩っている。また,堂島川護岸で同様のイメージカラーや演出スケジュールにすることで河川全体での統一感を創り出し,水都大阪のイメージを強調している。


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