施設報告

松山中央公園多目的競技場の照明設備

国内営業事業部 第二営業部 近畿技術設計センター
国内営業事業部 営業技術部
国内営業事業部 第二営業部 松山事務所

キーワード

松山中央公園,公営競技場,競輪場,多目的競技場,パワービーム™,角形投光器,ビームオン®

3.照明設備概要

本施設に使用した照明器具は,6種類の投光器である。それぞれの設置箇所の照明設備一覧を表1に示す。

3.1 走路用照明

図2 メインスタンドの設置状況

器具取り付け高さの高いメインスタンドおよび照明鉄塔からの走路用照明は,ビーム効率の高い照明器具を使用した手法が効果的なので,パワービーム™にクウォーツアーク®・ショートアーク2kWを使用し,走路の水平面照度を確保している。(図2)照明鉄塔は最下段高27m・67灯用×2基と47灯用×2基をバックストレッチ外側に設置した。

メインスタンド屋根に設置した照明器具により,ホームストレッチ外側及びバックストレッチ内側の鉛直面照度を,バックストレッチ外側に設置した照明鉄塔の照明器具により,バックストレッチ外側及びホームストレッチ内側の鉛直面照度を確保している。

比較的取り付け高さの低い位置に照明器具を設置するサイドスタンドからの照明の場合は,照度ムラを防ぐため,軸光度が低く横長に配光制御された角形投光器にクウォーツアーク®・ロングアーク1.5kWを使用した。(図3)自転車競技時の水平面照度分布を図4に示す。

3.2 決勝線照明

決勝線照明(薄暮時補助照明)として1kWハロゲン電球用投光器を走路内側に6台,メインスタンド側に6台の計12台が設置されている。(図3)

3.3 多目的用照明

多目的用照明は,ビーム効率の高い丸形投光器ビームオン®に低誘虫メタルハライドランプ1kWを組合せてメインスタンドと照明鉄塔に設置した。これら照明器具を多目的スペース(走路内)に適宜照射することにより水平面照度を確保している。(図5)多目的使用時の水平面照度分布を図6に示す。

図3 サイドスタンドおよび決勝線の設置状況

図5 照明鉄塔(最下段高27m)

3.4 グレア・漏れ光対策

図7 ルーバの取り付け状況

本施設は国道56号線及び住宅地に隣接しているので周辺へのグレア・漏れ光は十分に軽減する必要がある。多目的用照明器具には,全てルーバを装着している。また走路用照明器具は全て内蔵ルーバ付であり,設置後の点灯試験によりグレアとなる対象照明器具には,外付けルーバを取付けている。(図7)これらにより周辺へのグレア・漏れ光と併せて選手観客へのグレアが軽減されている。

3.5 照明制御

照明制御はITACSコントロールシステムを使用しており,大型映像室内にある主制御盤では,点灯パターンや点灯区域などを視覚的にグラフィックパネルで確認しながら容易に照明制御を行うことが出来る。また中央監視室内にも副制御盤が設置されており,状況に応じて各々からの制御が可能となっている。

表2に各パターンの初期照度測定値を示す。

表2 初期照度測定値
点灯パターン 水平面平均照度(ℓx) 鉛直面平均照度(ℓx)
走路内側 走路外側
自転車競技1 1214 588 1009
自転車競技2 643 282 524
スポーツ照明1 371 - -
スポーツ照明2 184 - -
コンサート 39 - -
保安灯 4.8 - -

4.おわりに

最近では,競技場周辺の住民の光害に対する関心が強くなってきており,多くの施設で漏光対策が求められてきている。本照明計画にあたっては,競技場内のグレア及び周辺への漏光等を考慮して投光器にルーバを装着する等の低減策を採用した。しかし,竣工前の点灯試験段階において,周辺住宅地よりさらなる軽減策を求められたため,照明実験を行い,遮光角の大きいルーバの取付け及び角度変更調整を実施し,更なる漏光の低減策を行った。

今後はスポーツ照明計画時において事前に漏光対策の詳細な検討が益々必要になってくると思われる。

近年多くの競輪場でナイター競輪が開催されている中,本施設における走路照明は,夜間練習用の設備である。今後,ナイター競輪開催ということになれば設備の増設が必要となってくるので,その時には技術的貢献が出来ればと考えている。

最後に,松山中央公園多目的競技場照明設備の完成にあたり,ご指導,ご協力をいただいた関係各位に心よりお礼を申し上げる。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第11号掲載記事に基づいて作成しました。
(2004年9月30日入稿)


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