HID安定器

蛍光ランプやHIDランプなどの放電ランプに必要な安定器。
蛍光ランプやHIDランプなどの放電ランプは、放電現象を利用した光源です。放電現象というものは不安定で、電源に直接つなぐと電流が急激に増えて、瞬間的にランプの電極やシール部(封止部)が壊れてしまいます。
この電流が増え続けるのを防ぐために、電源とランプの間に抵抗を入れて、電流を一定の値に安定させる必要があります。この抵抗のことを「安定器」と呼びます。
また、ランプが点灯するのに必要な始動電圧を与えて安定した点灯を維持するためにも放電ランプの点灯には安定器が必要です。

HID安定器と適合するHIDランプの組合せをご覧いただけます。

照明器具には寿命があります。

設置して約10年経つと、外観に異常がなくても内部の劣化(安定器、電線、ソケットなどの電気絶縁物の劣化)は進行しています。点検・交換をご検討ください。

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安定器の基礎知識

安定器の役割

一般に放電ランプは負特性のため、直接電源に接続し、一旦、ランプ電流が流れ始めると急激に電流が増大して、瞬時にランプの電極やシール部が破壊されてしまいます。したがって、電源とランプの間に安定器を設けて、ランプ電流を適正に制御する必要があります。安定器は電流制限の他に次のような働きをしています。

  1. ランプが必要とする始動電圧(二次無負荷電圧)を印加する。
  2. 適正なランプ電流波形を供給し、安定した点灯を継続する。
  3. 低力率を高力率に改善する(力率改善用コンデンサ付加機種)。

全てのHIDランプは安定器を使用して点灯する必要があります。

安定器の構造

安定器の主要部分はチョーク、漏れ変圧器、コンデンサよりなっています。チョーク及び漏れ変圧器の構造はケイ素鋼板を積み重ねた鉄心にコイルが巻き回してあります。HID灯安定器のコイル導線としてはA種絶縁の場合ホルマール線を使用しています。
力率改善用や進相用のコンデンサには保護機能付メタライズドポリエステルフィルムのものが用いられています。
一般に安定器は上記の部品を組み立てた後鉄板ケース内に入れ、放熱をよくするためにケイ砂を混入した不飽和ポリエステル樹脂を充填しています。

点灯回路の基礎

一般に交流で点灯する放電ランプに流れる電流を制限する方法としては、抵抗、チョーク、コンデンサが考えられます。
抵抗を用いた場合は、電力損が大きい欠点があるため安定器としてほとんど用いられず、フィラメントを内蔵したセルフバラスト水銀ランプに応用される程度です。
チョークを用いた場合は、電源電圧に対してランプ電流が遅れ位相となり、一次力率が低くなります。高力率にするため、電源に並列にコンデンサを入れています。
コンデンサを用いた場合は、直列にチョークを入れて使用されます。チョークとコンデンサの直列共振周波数を電源周波数より少し高くすると、ランプ電流が電源電圧に対して進み位相となり、コンデンサ単体よりもランプ電流波形が大幅に改善されます。

ランプ電流の波高率

ランプ電流波高率の値が2.5の場合、水銀ランプ(H400)の寿命は約55%、蛍光ランプ(FL40)は約18%。

図1.1 ランプ電流波高率とランプ寿命の関係

ランプ電流の波高率はピーク電流と実効電流の比として表わされます。ランプ電流の波高率が高い安定器はランプの電極損傷、光束低下及び寿命短縮の原因となります。波高率の値は安定器の性能を評価する重要な要素になります。図1.1に蛍光ランプと水銀ランプの波高率と寿命の関係を示します。

安定器の種類

アイ トリプルエースバラスト(3つの安全機能付銅鉄形安定器)

点灯後約40000時間の寿命末期には絶縁物の劣化によりコイルレアーショートが起き発熱から温度ヒューズ電源遮断、電流増加の際は電流ヒューズ電源遮断、コンデンサ・エレメントの劣化の場合は電流増加から多点分散検知エレメント遮断により、ごくまれに起こる発煙、発熱を防止します。

図1.2 アイ トリプルエースバラスト保護機能の原理

安定器の寿命末期にごくまれに発生する異常電流による発煙・発火を未然に防止

従来の一般形水銀灯安定器に、より安全性/省施工性/耐久性を配慮したHID安定器です。なかでも、水銀ランプに代わるFEC内蔵の各シリーズ、アイ クリーンエースといったHIDランプに、今まで以上に適したセーフティ機能を装備しています。まれに発生する寿命末期の発熱、発煙にも保護機能が働き、安全性を確保することができます。保護機能の原理は図1.2の通りです。

安全機能1・2

電流ヒューズ・温度ヒューズは、安定器の入力側に2素子を直列に接続していますので、過電流や過熱によりいずれかが動作しても電源が遮断されるようになっています。両ヒューズとも安定器内部に装着していますので、取換えることはできません。ご了承ください。

種別 電流ヒューズ 温度ヒューズ
一般形(銅鉄) 非復帰式 非復帰式
一般形(銅鉄)
ハイラックス用
非復帰式 復帰式
電子安定器 非復帰式 復帰式
非復帰式
一度動作すると、電流や温度が下がっても復帰することはありません。

※70・100・150WのTCP-353(43)、CCP-354の形式タイプが対象となります。TCP-352(42)、CCP-353タイプは非復帰式です。

安全機能3

コンデンサの内部に、特殊な電気式保護回路多点分散形検知を採用して、寿命末期などにごくまれに発生する発煙事故を防止します。従来の機械式一点検知に比べて、保護機能の動作を確実にしています。

電源電圧

使用電圧が+15~20%以上、あるいは100/200Vを誤って使用すると、保護機能が動作し安定器が使用不能となります。

周囲温度

安定器は、周囲温度-20℃~+40℃で使用してください。まとめて使用する場合は、安定器相互の間隔をケース幅以上離してください。収納箱などで使用する場合にも、安定器の雰囲気温度が40℃以下となるよう通風をよくしてください。周囲温度が極度に高い場合、保護機能が動作し、安定器が使用不能となります。

寿命

使用状況によっては、年数に関係なく保護機能が働き、安全確保のため使用できなくなることがあります。

水銀灯用安定器

チョーク形安定器(C,CC,CL形)

点灯回路としては図1.3、図1.4に示すように最も単純であり、ランプにとって動作が確実で、小形軽量・安価であるため、広く使われています。水銀ランプの始動電圧は、180V以下ですので、電源電圧の定格は200V以上に限定され、ランプ電圧が電源電圧の約65%以下のときに用いられます。力率は65%程度の低力率(C形)になります。
高力率形安定器(CC形)は、電源と並列に適当な容量のコンデンサを接続して、力率が90%程度に設計されています。また、低始動電流形安定器(CL形)は始動時入力電流が安定時入力電流の1.2~1.3倍以下になるようにし、力率は、95%程度となります。

図1.3 チョーク形安定器の回路(200V用)
H2C2A(B)352、H3C2A(B)352、H2C2A(B)352、H7CA(B)51、H10CA(B)51タイプ
図1.4 チョーク形安定器の回路(200V用)
H1CC2A(B)41、H2CC2A(B)41、H2.5CC2A(B)41、H7CC2A(B)51、H10CC2A(B)51タイプ

漏れ変圧器形安定器(T,TC形)

水銀ランプの始動電圧(180V)より低い電源電圧の場合はランプを始動させ、放電を維持できる電圧まで昇圧する必要があります。この場合、図1.5、図1.6に示す単巻漏れ変圧器を使用すると、安定器が安価、小形になる利点があるため、100V用水銀灯安定器に広く用いられています。
漏れ変圧器を使用する場合も電源と並列にコンデンサを接続して力率を改善することは可能ですが、一定の力率を得るためのコンデンサの容量はそれに印加される電圧の2乗に逆比例するため容量が大きくなり、価格、寸法なども大となるので、図1.7、図1.8のように3次巻線により昇圧した回路にコンデンサを接続しています。

図1.5 漏れ変圧器形安定器の回路(100V)
H4T1A(B)51タイプ
図1.6 漏れ変圧器形安定器の回路(100V)
H1TC1A(B)351、H2TC1A(B)41、H2.5TC1A(B)41、H3TC1A(B)51、H4TC1A(B)51

定電力形安定器(RC形)

この安定器は電源電圧が変動した場合のランプ電力とランプ光束の変動を極力小さくしようとするものです。図1.7に示すように変圧器の二次側にコンデンサをランプと直列に接続してLC共振回路をつくってあります。電源の高調波の影響を受けにくく、始動時と無負荷時の入力電流は安定時の入力電流よりも少ない特長を持っています。
ランプ電力の変化は電源電圧変動10%に対して3~5%と少なくなります。定電力形安定器は電源電圧が70%位まで降下しても立消しません。したがって、定電力形安定器は電圧変動の大きい場所、特に大容量の装置を動かしたときに、大幅に電圧降下を起こす工場などに最適です。

図1.7 定電力形安定器の回路
H1RC2A(B)41、H2RC2A(B)41、H2.5RC2A(B)41、H3RC2A(B)51、H4RC2A(B)51タイプ

直列2灯用定電力形安定器(WH-RC形)

図1.8に示すように単巻漏れ変圧器式定電力形安定器と始動用コンデンサCsからなり、2個のランプが直列に接続され、1個のランプに並列に始動用コンデンサCsが接続されています。この安定器は電源電圧が変動した場合のランプ電力とランプ光束の変動を極力小さくしようとするものであり、1台の安定器で、ランプ2灯を点灯するものです。
電源電圧10%変動に対するランプ電力の変化は約7%と少ないのですが、1本のランプが寿命などで消灯すると他のランプも消えてしまうという欠点があります。

図1.8 2灯用安定器の回路
200V直列2灯用定電力形(WH-RC)

調光用安定器(CD、RD形)

調光用安定器には図1.9、図1.10に示すように一般調光形(CD形)と定電力調光形(RD形)の2種類があり、光束減少率50%、ランプ電力減少率55~60%に段調光するように設計されています。両方の調光用安定器とも、調光時にリレーの切替えで安定器のインピーダンスを増加させることにより調光します。

図1.9 調光用安定器の回路(一般調光形(CD形))
図1.10 調光用安定器の回路(定電力調光形(RD形))

自動調光形安定器(CDT、RDT形)

自動調光形安定器には図1.11、図1.12に示すように一般自動調光形(CDT形)と定電力自動調光形(RDT形)の2種類があります。調光用安定器(CD、RD形)と異なる点は、安定器にデジタルスイッチ付電子タイマを内蔵してあり、調光開始時間を8段階(1~8時間)と非調光の9段階に変更できますので、季節や交通事情により自由に調光時間を設定できます。調光用制御線を配線する必要がないのが大きな特長です。 その他の動作は調光用安定器(CD、RD形)と同じです。

図1.11 自動調光用安定器の回路(CDT形)
図1.12 自動調光用安定器の回路(RDT形)

ハイラックス電子安定器

回路構成

電源からランプまでの間にノイズフィルタ保護素子、アクティブ平滑フィルタ、インバータフルブリッジ、イグナイタがあり、ランプ電圧検知による安全対策が取られている。

図1.13 ハイラックス電子安定器の回路ブロック

ハイラックス電子安定器は、図1.13の回路ブロックで構成されています。
図1.13において、ランプ電圧の検知よりランプの不点が確認されると、パルス停止機能が働き、パルスが停止するなど、表1.1のようにさまざまな安全対策が取られています。

表1.1 ハイラックス電子安定器の安全対策とその役割
安全対策の名称 安全上の役割
保護素子 電流ヒューズ 過電流や異常温度上昇の発生時に、電源を遮断して安定器焼損による火災発生を防ぐ。また、過電流での同一回路開閉器遮断による2次事故発生を防ぐ。
温度スイッチ
アクティブ平滑フィルタ 高調波を低減し、他の機器の故障、誤動作による2次災害の発生を防ぐ。
パルス停止機能 ランプ交換、器具清掃時にパルスによる誘起電圧で感電するのを防ぐ。ランプ不点時、未装着時にパルスが連続発生して、器具、配線、安定器を損傷して火災に至ることを防ぐ。

ハイラックス電子安定器の特長

5種類の光色のランプに対応

図1.14 矩形点灯方式の説明図

矩形波点灯方式により、音響共鳴現象と呼ばれる点灯不安定や立消えなどを回避し、光色の異なる5種のハイラックス(M系、NH系)の点灯が可能です。図1.14に矩形点灯方式の説明図を示します。

光出力が平坦でちらつきがない

図1.15 銅鉄形安定器と電子安定器の光出力波形比較
(ランプ:MT150FSW)

点灯周波数が80Hz(150W用安定器)と高く、また光出力のリップル(波状に変動する成分)が図1.15に示すように小さいので、人の目に感じるちらつきはありません。

適応電流電圧範囲が広く、光出力の変動がない

図1.16 電源電圧変動に対する光出力と入力電流

回路構成図に示したアクティブ平滑フィルタの働きで、直流出力を定電圧化するため、入力電圧の変動と関係なく一定のランプ電力を維持し、図1.16に示すように90~220Vの範囲で光出力にほとんど変動がありません。

高調波電流が少ない

図1.17 ハイラックス電子安定器の入力波形

アクティブ平滑フィルタの働きにより、入力電流波形は図1.17に示すように、ほぼ正弦波状になり、高調波電流は大幅に低減されます。
また、表1.2に示すようにJIS C 61000-3-2の限度値を、余裕をもってクリアしています。

表1.2 ハイラックス電子安定器の入力電流の高調波含有率
高調波の次数 高調波含有率(%)
100V入力時 200V入力時 JIS記載の限度値
2 1.6 1.1 2
3 1.9 15.6 30×λ
5 1.0 1.3 10
7 1.0 1.7 7
9 0.9 0.6 5
11~39 0.8 1.4 3
総合 3.0 16 -
ランプ電圧の差異による光色のばらつきが少ない

ハイラックス電子安定器は、ランプ電圧を検知してランプ電力を適正値に制御するため、パルス始動一般形安定器に比較して、初期から寿命末期まで色温度のばらつきを小さくできます。
図1.18、図1.19にランプ電圧変化による色温度の変化例を示します。
図1.20に光色(色温度)のばらつきと変化の例を示します。

図1.18 ランプ電圧変化による色温度の変化例
(ハイラックス2500:NHT150SDX)

図1.19 ランプ電圧変化による色温度の変化例
(ハイラックス4500:MT150SW)

図1.20 光色(色温度)のばらつきと変化の例

力率が高い

高調波電流が少ないで示したように、入力電流波形の位相は電圧と電流との間にほとんどずれがなく、高力率であることが分かります。 これはアクティブ平滑フィルタの採用によるもので力率は100%近くまで改善されています。

メタルハライドランプ安定器

図1.21 メタルハライドランプ安定器の回路
(パルス始動進相形)

メタルハライドランプの種類と安定器

メタルハライドランプは、一般形水銀灯(T,TC,C,CC,CL形)で点灯できるランプ(FECマルチハイエースH、クリーンエースなど)が主流ですが、一部のスポーツ施設や工場ではマルチメタルランプが使用されています。マルチメタルランプには、以下のパルス始動進相形安定器が適合します。

パルス始動進相安定器(CAP形)

定格二次無負荷電圧を300V以下とした単巻トランス二次側を進相回路とし、電源電圧が変動した場合のランプ電力と光束の変動を少なくしたものです。
その他の機能として、人及び設備の安全のために、パルス停止機能が付いています。
図1.21に回路図、図1.22に動作原理、図1.23にタイムチャートを示します。なおパルス停止時間はランプの種類により変わります。

図1.22 パルス停止回路動作の原理

図1.23 パルス停止回路タイムチャート

安定器損失

図1.24 各種HID安定器の電力損

コンデンサの損失は無視できますが、チョークや変圧器は相当な損失となります。各種HID安定器の定格ランプ電力と安定器損失(電力損)の関係を表わしたのが図1.24です。
図から分かるように、高ワットになるにつれて安定器損失は増加しますが、定格ランプ電力に対する割合は減少し、ランプ効率もよくなるので、照明条件が許すならば、なるべく高ワットランプを使用する方が経済的です。
安定器損失を定格ランプ電力に対する百分率で表わすと、100W用で14~23%、400W用で7.5~15%、1000W用で5~10%になります。
照明施設における光源選定にはランプ効率のみでなく、安定器損失を含めた総合効率(全光束/入力電力)の面からも経済性を検討する必要があります。

安定器の温度上昇

図1.25 ランプ電流と安定器巻線の温度上昇

安定器損失が安定器の温度を上昇させるわけですが、安定器巻線の温度はランプ電流が増加するとともに急激に上昇します。チョーク形水銀灯安定器の温度上昇は図1.25に示すようにランプ電流の2乗に比例して増加します。
温度が上がったときに絶縁物が劣化することは他の電気機器の場合と同様で、安定器を標準条件(電源電圧:定格値、周囲温度:40℃以下、ランプ電流:定格値付近)で使用したときの寿命は8~10年と考えられています。実際の絶縁物の耐熱寿命は材料により異なりますが、使用温度が8~10℃上がるごとにほぼ半減するとされています。安定器の巻線温度と寿命の関係を図1.26に示します。
一般に絶縁物の寿命は40000時間をベースとして算定されます。

安定器の寿命

水銀灯安定器の寿命について以下の文章に示します。

図1.26 巻線温度と安定器寿命(参考文献:JIS-C-8110(2008))

安定器の寿命は、他の電気機器と同様に、巻線、コンデンサ及び口出線などに用いられている絶縁物及び構造材の寿命によって決定されます。
絶縁物の絶縁性能は、特に高い電圧や湿気にさらされない限り、そのさらされている温度が高いほど減耗が早くなります。例えばA種絶縁物を用いた安定器の巻線の最高許容温度は105℃であり、この安定器を標準条件(電源電圧が定格値、安定器の周囲温度が40℃以下、ランプ電流が定格値を著しく超過しないで安定器の巻線の温度が105℃以下に保たれること。)で使用した場合の平均寿命は、一般的な使用状態で8~10年間と考えられます。ここで、“平均”とは、この年数が経つまでに半数の安定器は寿命が尽きていることを意味し、絶縁材料が元来もっている性能のばらつき、及び安定器の製造工程中に絶縁材料が受ける各種の影響により生ずる絶縁性能のばらつきによって生ずる結果であって、現在の技術をもってしては避けられないところです。
絶縁物は、その温度が8~10℃高くなると寿命が半分になるといわれているので、その絶縁物の最高許容温度で、仮に10年であるものは、8~10℃高い温度で使用すれば5年に短縮されてしまいます。安定器を過熱させないで、その本来の寿命を保たせるためには、電源電圧の定格電圧の近傍で使用し、安定器の周囲温度を高くしないように、通風、冷却をよくすること、寿命末期のランプは早く交換して、いわゆる異常温度上昇の状態の継続時間をできるだけ短くすること、特に器具内に取付けるものは、ランプの熱の影響を少なくすることなどの注意が必要です。
なお、前述したように、安定器が高い電圧や湿気にさらされると寿命が短くなるので、前者に対しては点滅回数を著しく多くすることや、サージ電圧が高く発生するような開閉器の使用を避け、後者に対しては高湿の場所・水気のある場所(水抜きの悪いポール内、屋内プールの周辺)に一般形安定器を使用することや、長期間の消灯放置を避けるなどの注意が必要です。
コンデンサの最高許容温度は、JIS C 4908でM表示のものは70℃、H表示のものは80℃、Z表示のものは85℃と規定されており、異常に高い温度が長時間続く場合には、コンデンサが破損するおそれがあるので注意する必要があります。構造材の寿命はさびや腐食による寿命をいい、使用雰囲気によっては、絶縁物の寿命より短くなることがあります。図1.26に巻線温度と安定器寿命の関係を示します。