技術資料
町道ニセコ登山道路 LED街路灯着雪実験報告
電通設備株式会社 事業管理部 赤坂 人司
ニセコ町役場 建設課 藤田 明彦
岩崎電気株式会社 国内営業部 札幌営業所
キーワード
ニセコ登山道路,LED街路灯,着雪実験
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- LEDポールライト
1.はじめに
本報告は,ニセコ町に住む人や冬期観光で訪れる人々が,昼・夜間共に,安全に安心して走行や歩行出来る生活環境と経済的な照明を提案することを目的としている。
これまでの街路灯の光源は,HID光源である為に点灯時の発熱量が比較的多く,街路灯に付着した雪も融けていた。しかしながら,照明技術の向上によりHID光源の代替として登場したLED光源は,点灯時の発熱量が少ない為に,街路灯に付着した雪は融け難い。そこで,冬期間の屋外環境におけるLED街路灯への着雪状態の検証が課題となっていた。
2.実験目的
本実験は,北海道虻田郡ニセコ町内の同一場所に設置したLED街路灯(タイプA~タイプE) 5種類の冬期気象条件における着雪状態の変化を,時系列的に現地調査し「着雪しづらいLED街路灯の外形形状の選定に供する知見を得る事」を目的としている。
3.実験概要
本実験は,北海道虻田郡の町道ニセコ登山道路に設置したLED街路灯(タイプA~タイプE) 5種類について,同時に定点観測を実施して比較検証を行い,LED街路灯の外形形状,特に器具天部形状と,着雪状況との関係を調査した。
なお,実験期間は,平成22年1月上旬から3月下旬とした。
3.1 実験項目
LED街路灯(タイプA~タイプD:着雪抑止対策品=付帯屋根付き製品(3.4節参照))とLED街路灯(タイプE:無対策品=屋根無し標準品)の5種類の器具天部形状に対する冬期間における着雪状況を,定期的に定点観測・調査を行った。
3.2 実験条件
実験は,下表の条件にて行った。
LED街路灯×4 (着雪抑止 対策品) | LED街路灯×1 (着雪抑止 無対策品) | |
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取付条件 |
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路面 |
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照度 |
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備考 |
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3.3 観測時の気象データ
実験対象地域(北海道ニセコ町)の2011年1月~3月下旬までの各種気象観測データの一覧を付表1に示す。なお,気象データは,気象庁データにより作成した。
LED街路灯の設置現場における定点観測は,2011年1月上旬~3月下旬までの実験期間中,下記の日時に実施した(およその観測時刻を示す)。
各実施日における定点観測時のLED街路灯への着雪状態の経月変化の状況を,次章で概説する。
- 第1回 1月11日 11:30
- 第2回 1月18日 13:30
- 第3回 2月7日 15:00
- 第4回 2月28日 14:00
- 第5回 3月3日 15:00
- 第6回 3月11日 12:30
- 第7回 3月18日 14:30
3.4 器具天部(付帯屋根)の形状のねらい
着雪抑止対策品は,LED街路灯標準品器具本体に後付けで4通りの形態の付帯屋根を器具天部に被せたものである。各LED街路灯の天部形状のねらいと概要図面番号を,下記に示す。
なお,本実験に用いたLED街路灯の外観写真は,無着雪状態にある図4.4.1~図4.4.5に示す写真をもって代用する。また,各LED街路灯の器具図面は,参考資料として末尾に添付する。
1) LED街路灯(着雪抑止対策品)
タイプAの図面番号 <BKE-10-0585>
- 天部形状のねらい
- 器具天面に凹凸を付けて,凹凸を付けなかった同一形状・設置角度のタイプD器具と比較し,着雪状態の変化を検証する。
タイプBの図面番号 <BKE-10-1008>
- 天部形状のねらい
- タイプBの天部形状は,事前に実施した「室内低温実験室における氷柱実験」(※注)での良好な結果を受け,天面が非対称な角錐形状を有する屋根を用いて厳冬期の自然環境下における着雪状態の変化を検証する。
- ※注:LED街路灯 水柱実験報告参照。
タイプCの図面番号 <BKE-10-0584>
- 天部形状のねらい
- 取付け角度(5度)による着雪状態変化を観測する事を主眼にし,形状因子の影響を少なくする為に,器具天面は二つ折りのシンプル形状にして検証する。タイプDと同一の付帯屋根形状で取付け角度の違いによる影響を比較する。
タイプDの図面番号 <BKE-10-0584>
- 天部形状のねらい
- 取付け角度は15度。タイプCと同一の付帯屋根形状で取付け角度の違いによる影響を比較する。
2) LED街路灯(着雪抑止無対策品)
タイプEの図面番号 <BKE-10-0594>
- 天部形状のねらい
- タイプEは,着雪抑止対策を講じていない標準品で,厳冬期の自然環境下における着雪状態の変化を検証する。
4.観測結果
4.1 着雪状況 (第1回観測:2011.1.11)
- 天候
- 曇り
- 平均気温
- -8℃
- 降水量
- 3mm
- 注:図表題の(※)は無着雪のLED器具を示す。
所見及び推論
- 日中(1日~11日)の平均的な最高気温は-5.5℃と低く,降雪量も8.1mmと多い為に,多くのLED器具への着雪が進む。
- タイプBのみ無着雪。
4.2 着雪状況 (第2回観測:2011.1.18)
- 天候
- 曇り
- 平均気温
- -3.4℃
- 降水量
- 0mm
- 注:図表題の(※)は無着雪のLED器具を示す。
所見及び推論
- 日中(12日~18日)の平均的な最高気温は+0.1℃となり降雪量は7.3mmあるが,多くのLED器具の融雪が進む。
- タイプBとタイプCは無着雪。
- タイプEは設置して,早々に氷柱が発生する。
4.3 着雪状況 (第3回観測:2011.2.7)
- 天候
- 晴れ/曇り
- 平均気温
- -4.7
- 降水量
- 3mm
所見及び推論
- 日中(19日~2月7日)の平均的な最高気温は+2℃となり器具タイプAの融雪が進む。
- 降雪量は6.4mmと比較的多いが,横殴りの風(風速4.8m/sec)により,前面に薄っすらと着雪。
4.4 着雪状況 (第4回観測:2011.2.28)
- 天候
- 晴れ
- 平均気温
- -3.7℃
- 降水量
- 0mm
- 注:図表題の(※)は無着雪のLED器具を示す。
所見及び推論
- 日中(8日~28日)の平均的な最高気温は+6℃と高くなり,全てのLED器具にて融雪が進む。
- 降雪量は1.7mmと少なく,風も平均風速2m/secと低く穏やかな時期で,いずれの器具も無着雪の状況。
4.5 着雪状況 (第5回観測:2011.3.3)
- 天候
- 雪
- 平均気温
- -6.3℃
- 降水量
- 5.5mm
所見及び推論
- 日中(3月1日~3日)の平均的な最高気温は-0.4℃と比較的高く降雪量も6.8mmと多い為に,湿った雪のLED器具への着雪が進む。
- さらに,平均風速も2m/secと低くかったことより,LED器具への着雪が進む。
4.6 着雪状況 (第6回観測:2011.3.11)
- 天候
- 晴れ/曇り
- 平均気温
- -3.6℃
- 降水量
- 5.5mm
- 注:図表題の(※)は無着雪のLED器具を示す。
所見及び推論
- 日中(3月4日~11日)の平均的な最高気温は+3.5℃,最低気温-9.5℃と寒暖差があり,降雪量も9.1mmと多かった。器具タイプAとタイプCには氷柱が発生する。
- 平均風速は2.2m/secと比較的高い為に,LED器具への着雪が起こらず飛ばされる。
4.7 着雪状況 (第7回観測:2011.3.18)
- 天候
- 晴れ/曇り
- 平均気温
- -2.3℃
- 降水量
- 0mm
- 注:図表題の(※)は無着雪のLED器具を示す。
所見及び推論
- 日中(3月12日~18日)の平均的な最高気温は+4.3℃と高く,降雪量は1.3mmと少ない為に,全てのLED器具で融雪が進む。
- さらに,平均風速も3.5m/secと高かった為に,LED器具への着雪が起こらず吹き飛ばされる。
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