技術資料

セラルクス®100W

光源部 HID 技術開発課

1．はじめに

セラミックメタルハライドランプは，高効率，高演色な光源として，さまざまな場所で使用されている。特に35Wから150Wまでの低ワットクラスは，商業施設用光源として幅広く普及している。

今回，石英製メタルハライドランプ150W(ハイラックス®150W)の代替ランプとして同等以上のランプ光束を有するセラルクス®100Wを開発したので報告する。

2．商品概要

2.1 商品バリエーション

セラルクス100Wはベース照明が主な使用用途であるため，「落ち着いた空間を演出する3500K」と「爽やかな空間を演出する4200K」の2つの異なる色温度タイプを開発した。両品種とも透明形と拡散形を用意してある。

表1に品種構成とランプ特性を示す。

2.2 特長・機能

2.2.1 ランプ形状

ランプ全長及び光中心は，従来から使用されているハイラックス®150W用の器具にも使用可能とするためワットは異なるが同寸法とした。また，ランプ外球はコンパクトな器具(当社L-CUBE™など)への適合のため，外径30mmの直管タイプを採用した。

ランプ外観を図1に示す。

2.2.2 省エネ・省メンテ

ハイラックス150W以上と同等以上の光束値を持ちながら，かつランプ寿命を12000時間と長くすることで(ハイラックス150Wは9000時間)，省エネ及び省メンテを実現した。

図2に拡散形における光束値及びランプ効率の比較を示す。

• 注)*1；図2-1，図2-2のランプ品種において，具体的なランプ形式は以下の通り。
  • ハイラックス　150W-3500K　⇒　MT150FSDW
  • セラルクス100W-3500K　⇒　MT100FCE-WW/S
  • ハイラックス　150W-4500K　⇒　MT150FSW
  • セラルクス100W-4200K　⇒　MT100FCE-W/S

2.2.3 高い紫外線(UV)カット性能

ランプ外管に酸化亜鉛からなるUVカット膜を塗布している。そのため，一般的なカット手法であるUVカット石英を使用する場合のカット率およそ50％と比べ大幅に改善したカット率およそ90％を実現している。よって，UVカット石英を使用したランプに比べ，照明される商品の変退色を大幅に抑制することが可能である。

2.2.4 既存の電子安定器で使用可能

ランプ・安定器の同時導入の場合だけでなく、ハイラックス100W用電子安定器適合可とすることで，現在ハイラックス100Wが使用されている場所へ安定器を交換することなくランプの導入を可能とした。

また，更なる屋外などへの市場拡大を視野に入れ，銅鉄安定器でも使用可能とするべく検討を行っていく予定である。

2.2.5 演色性

昨今，LED照明は高効率化が進み，屋内外問わず市場を広げている。しかし，演色性に関してはHIDに優位性がある。特に商業施設照明に関しては，商品を鮮やかに見せる・際立たせるなどの表現力が必要であることから，HIDランプの特長を大きく活かせる市場のひとつである。

本開発品の平均演色評価数Raは，1Aクラスの90以上を達成し，また更に生鮮食品や洋服などの赤みを鮮明にアピールするための評価指数である赤の特殊演色評価数R9の値は50(3500K)となっている。これに対し，LED照明では高いとされているものでもRaが80台，R9は30前後にとどまっており，本開発品に大きな優位性があるものと考えている。

3．おわりに

本稿では，商業施設向けセラルクスとしては初の100Wクラスであるセラルクス100Wの紹介を行った。このランプは，現在商業施設市場で数多く使用されているハイラックス150Wの代替品として，ハイラックス以上の高効率・長寿命といった省エネ性を大きく達成したランプである。また，LEDと比較しても商業施設照明に重要な演色性の点において大きな優位性を持っている。今後，本商品が商業施設用光源として幅広く受け入れられていくことを期待したい。