技術資料
太陽電池評価用HID光源 - 150W~1000W 各種商品紹介 -
光源部 HID技術課
キーワード
太陽電池,評価,光源,マルチメタルランプ
太陽電池(PV)開発・製造のご案内
基礎研究・開発から製造までの各過程にあわせて光・温度・湿度を自在にコントロールし、最適な環境を提供する「太陽電池(PV)開発・製造」の詳細は以下よりご覧いただけます。
- 太陽電池(PV)開発・製造
1.はじめに
近年,省エネルギーが進められていく中,代替エネルギーとして太陽電池の需要が高まっており,今後もその分野の市場拡大が見込まれている。当社も太陽電池評価用光源をさまざまな用途に応じて供給しているが,ここでは主に太陽電池生産工場の設備(ソーキング)などで使用されているHIDランプについて紹介する。
2.要求特性
太陽電池評価用の光源に求められる特性としては,「JIS C8912 結晶系太陽電池測定用ソーラシミュレータ」などにも規定されており,以下の特性が要求されている。
表1で規定されている3つの項目全てを満足することが必要であり,その特性により等級が分けられている。例えば等級Aの場合,3項目ともにAの基準を満足することが必要である。
太陽電池評価用光源に関する基準としてはIEC規格など海外を含めていくつかあり,要求特性はさまざまであるが,要求項目としては表1に示されている3項目である。
要求項目 | 等級 | ||
---|---|---|---|
A | B | C | |
放射照度場所むら[%] | ±2以下 | ±3以下 | ±5以下 |
放射照度時間変動率[%] | ±1以下 | ±3以下 | ±10以下 |
スペクトル合致度 | 0.75~1.25 | 0.6~1.4 | 0.4~2.0 |
放射照度場所むらは照明設計により適正化が図られ,放射照度時間変動率は安定器とのマッチングにより決定される。
従って,ランプ単体に要求される特性としてはスペクトル合致度になる。
スペクトル合致度とは,波長範囲ごとに要求される出力割合が規定されており,実際の出力値との差を比率として表したもので,それぞれの等級内に入ることが条件となる。
各規格毎の要求特性としては表2に示す通りである。
表2で示した波長出力特性は,太陽光の分光分布を基準に規定されており,規定波長内において,それぞれの波長範囲での出力割合が規定されている。
現在は「JIS C8912」及び「IEC60904」の特性を満足するランプの提供が求められており,その達成のために,高演色形のメタルハライドランプを提供している。
表2 各規格の波長出力特性
波長[nm] | 相対エネルギー分布[%] |
---|---|
400-500 | 18.5 |
500-600 | 20.1 |
600-700 | 18.3 |
700-800 | 14.8 |
800-900 | 12.2 |
900-1100 | 16.1 |
波長[nm] | 相対エネルギー分布[%] |
---|---|
400-500 | 18.4 |
500-600 | 19.9 |
600-700 | 18.4 |
700-800 | 14.9 |
800-900 | 12.5 |
900-1100 | 15.9 |
波長[nm] | 相対エネルギー分布[%] |
---|---|
350-400 | 6.5 |
400-450 | 11.5 |
450-500 | 15.2 |
500-550 | 14.9 |
550-600 | 14.2 |
600-650 | 13.9 |
650-700 | 12.6 |
700-750 | 11.2 |
3.商品概要と特長・機能
太陽電池評価用として現在使用しているHIDランプ,及び開発中の商品について紹介する。
3.1 400W R型タイプ
一般照明用ではなく,光応用向けとして開発されたランプで,アメリカの自動車耐候試験規格(EPA規格)を満足する分光特性を持つ,リフレクタ型のメタルハライドランプがすでに商品化されている。このランプは「JIS C8912」の合致度C等級を満足することから,各方面で使用されている。
図1にランプ外観図,表3にランプ諸特性を示す。
発光物質としてはDy-Nd系添加物が使用され,リフレクタ型であるため器具は必要無く,同一面積で多くのランプが設置できる。
現在,太陽電池評価用専用ランプとして,スペクトル合致度を改善すべく発光管仕様を変更したランプの開発を推進しており,更なる特性改善を目指している。
ランプ電圧[V] | ランプ電流[A] | ランプ電力[W] | ランプ光束[ℓm] | 寿命[時間] | スペクトル合致度 |
---|---|---|---|---|---|
130 | 3.3 | 400 | 20000 | 3000 | C |
3.2 150W R型タイプ
本ランプは,ハイラックスビームをベースとし,仕様変更した発光管と,選択波長域の光をカットする膜を前面にコーティングしたレンズとを組合わせたものである。
図2にランプ外観図,図3に改良中のランプ分光分布,表4にランプ諸特性を示す。
スペクトル合致度はB等級が要求されており,初期特性は達成できるが寿命中の合致度変化という課題があり,現在改良を進めている。
発光物質としては現在Dy-T1系であるが,合致度改善の中でDy-Nd系も含めた検討を行っている。
合致度Bを寿命(3000時間)を通して満足する特性のランプが達成できれば,HIDランプでは前例の無い特性であり,大きなセールスポイントになるものと思われる。また,150Wと低ワットであるため,近距離で点灯しても均整度が得られやすいことからも,いろいろな用途での使用が期待される。
ランプ電圧[V] | ランプ電流[A] | ランプ電力[W] | ランプ光束[ℓm] | 寿命[時間] | スペクトル合致度 |
---|---|---|---|---|---|
95 | 1.9 | 150 | 6000 | 3000 | B |
3.3 1000W T管タイプ
一部大規模施設用として,高ワットの要求もある。本ランプはクウォーツアーク®のロングアークタイプ1000Wをベースにしたランプである。
図4にランプ外観図,表5にランプ諸特性を示す。
発光物質としてはDy-T1系を使用。大型設備での使用向けであり,現在サンプル供給にて評価しており,ランプとしても合致度改善を行っている。
ランプ電圧[V] | ランプ電流[A] | ランプ電力[W] | ランプ光束[ℓm] | 寿命[時間] | スペクトル合致度 |
---|---|---|---|---|---|
215 | 4.6 | 1000 | 80000 | 3000 | C |
4.おわりに
今回紹介した各種ランプ(改善中及びサンプル提供中を含めたもの)がラインナップしたことにより,さまざまな使用用途や設備の規模,顧客の要求事項に応じてランプが選択できるようになった。
今後はそれぞれのランプについて,スペクトル合致度の等級改善,点灯時間によるスペクトル合致度の変化を低減するなど,特性の改善を目指す。また,新たな用途に応じた品種拡大も行っていく予定である。
この記事は岩崎電気発行「IWASAKI技報」第21号掲載記事に基づいて作成しました。
(2009年11月25日入稿)
テクニカルレポートに掲載されている内容は、原稿執筆時点の情報です。ご覧の時点では内容変更や取扱い中止などが行われている可能性があるため、あらかじめご了承ください。