技術資料

光環境評価システム「QUAPIX™」(その2) - 活用事例 -

技術研究所 照明研究室

キーワード

光環境評価,QUAPIX™,視覚心理画像

1.はじめに

当社は,光環境評価システムQUAPIX™(クオピクス™)を開発した。このシステムでは,視覚心理量の二次元分布を,サーモグラフィのように,擬似カラーにて画像として出力することができる。本報ではこのシステムの概要とその活用事例を紹介する。

2.技術紹介

このシステムに用いられている技術は,中村らの一連の研究1)~6)において知られている。

QUAPIXでは,異なるシャッタースピードで撮影された複数枚の写真を合成することで,輝度分布画像を生成することができる(写真測光法)。この輝度分布画像に画像処理を施すことにより,視覚心理画像に変換することができる。

また,レンダリングソフトにより,計算された輝度分布画像をもとに,計画施設に対する視覚心理画像を出力することも可能である。

QUAPIXにて出力される視覚心理画像は,クオリア(感覚に伴う質感全般を表す哲学用語)の二次元分布を表していると考えられる。このため,これら視覚心理画像を総称してクオリア画像,もしくはクオリアイメージと呼ぶ。以下に2009年7月現在までに開発済みのクオリアイメージを紹介する(図1参照)。

現場写真

左に某屋外商業施設における撮影画像および,各クオリアイメージへの変換例を示す。右に各イメージのカラースケールを示す。

明るさ画像
目立ち画像
視認性画像

図1 クオリアイメージの出力例

2.1 明るさ画像

明るさ画像では,「非常に明るい」から「非常に暗い」までの13段階の明るさ尺度にて,明るさ知覚の二次元分布を算出する。

2.2 目立ち画像

目立ち画像では,「非常によく目立つ」から「目立たない」までの13段階の目立ち尺度にて,目立ち知覚の二次元分布を算出する。目立ち画像では,いわゆる「明るくて目立つ」現象と「暗くて目立つ」現象とを,符号により区別している。QUAPIXでは,正の目立ち予測値には赤色を,負の目立ち予測値には青色を施すことにより,わかりやすく表現している。

2.3 視認性画像

視認性画像では,「非常によく見える」から「まったく見えない」までの5段階の視認性尺度にて,視認性知覚を二次元分布として算出する。本報では,便宜上「かろうじて見える」以下の評価値を黒色で統一している。

視認性画像では,若齢者,高齢者の2パターンにて画像の出力が可能である。

参考文献

  1. 中村芳樹,江川光徳:均一背景をもつ視対象の明るさ知覚 -輝度の対比を考慮した明るさ知覚に関する研究(その1)-,照学誌,88-2,pp.77-84(2004).
  2. 中村芳樹,江川光徳:コントラスト・プロファイルを用いた明るさ知覚の予測 -輝度の対比を考慮した明るさ知覚に関する研究(その2)-,照学誌,89-5,pp.230-235(2005).
  3. 中村芳樹:ウェーブレットを用いた輝度画像と明るさ画像の双方向変換 -輝度の対比を考慮した明るさ知覚に関する研究(その3)-,照学誌,90-2,pp.97-101(2006).
  4. 森下大輔,中村芳樹:ウェーブレット解析を用いた目立ち画像生成システム,IWASAKI技報,19,pp.27-32(2008).
  5. 島崎航,土屋麻衣,岩本朋子,中村芳樹:コントラスト感度に基づく視認性評価法 -その1 広範囲な輝度値の分布をもつ空間への適用方法-,第41回 照明学会全国大会講演論文集,pp.137-138(2008).
  6. 土屋麻衣,島崎航,岩本朋子,中村芳樹:コントラスト感度に基づく視認性評価法 -その2 閾値倍率と見やすさ評価の関係-,第41回 照明学会全国大会講演論文集,pp.139-140(2008).

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