技術資料
低角度UV照射システム - FAS(Full Azimuth Shadowless)UV装置 -
アイグラフィックス株式会社 技術部 産機技術課
アイグラフィックス株式会社 技術部 光学技術課
キーワード
UV硬化装置,タッチパネル,貼り合わせ,低角度,額縁下,サイドキュア
1.はじめに
中・小型ディスプレイモジュールの製造工程において,表示モジュールのアクティブエリア外の電気配線や表示モジュールの縁部などを目隠しして,また,顧客に合わせた製品装飾にするための窓枠印刷などが施されているカバーガラス(トッププレート)と表示モジュールの貼り合わせが行われる。
このプロセスは,表示モジュールが液晶モジュールや有機ELモジュールに区別なく,また,タッチパネル機能を有するディスプレイモジュール(外付け型,オン・セル型,イン・セル型)においても同様に行われている。
貼り合わせには,モジュールの薄型化や視認性の向上,高コントラスト化を目的として,カバーガラスと表示モジュール間にエアギャップを持たせないために光学弾性樹脂が充填される。使用される光学弾性樹脂は,粘着性のあるシート形状のOCA(Optical Clear Adhesive)と液状のOCR(Optical Clear Resin)に大別され,それぞれに長所・短所があり,同メーカーであっても製品により適用される物が異なっている場合がある。
液状OCRへの紫外線照射における大きな短所は,装飾・目隠しの窓枠印刷が紫外光を遮光するため,影部(窓枠印刷下部)での未硬化によるOCRの漏れ出しや,硬化不足による表示むらの原因となることである。
この短所への対処として従来から行われているのは,照射状態を変えて複数回紫外線照射する方法や,紫外線照射後に加熱硬化処理を行う方法等である。
例として側面照射(サイドキュア)を挙げると,まず製品上面より紫外線照射し,側面照射を対向2辺に実施するため計3回の紫外線照射が行われることになる。しかし,それでも硬化の深さが不十分である場合が多い。また,加熱硬化は樹脂材により適用できない場合や,表示モジュールの耐熱性の問題で使用することができない場合が多い。
本稿では,この問題を改善するための新しいプロセスとして設計された照射装置について報告する。
2.装置概要
2.1 外形・構造
図1に装置の外観写真を,図2に装置寸法を示す。照射対象物は図3に示すチェーンにより連結されたプレート上に置かれ,搬送照射される。図4に紫外線照射炉内の写真を示す。
2.2 装置仕様
表1に装置仕様を示す。
装置名 | 8kW×1灯コンベア型紫外線照射装置 |
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寸法 / 重量 | 2650mm×1200mm×2665mm/約1250kg |
入力電源 | 3ø AC200V 50/60Hz 45A |
ランプ種類 | MEタイプ メタルハライドランプ 8kW(160W/cm) 発光長500mm |
照射器 | コールドミラー集光反射板 排風式 フィルター付 |
搬送方法 | インダクションモータによるプレート+チェーン搬送(プレート幅500mm) |
有効照射幅 | 400mm |
コンベアスピード | 0.20~2.00m/min |
照射器設置方向 | 搬送方向に対して直交配置 |
補助反射板 | 低角度照射用補助反射板 |
冷却 | ランプ排熱,反射板・ワーク冷却用ブロア 装置上部に設置 |
3.特長・機能
3.1 遮光部硬化のためのプロセス検討
従来は,貼り合わせた後に,カバーガラス側よりまず紫外線を照射してアクティブエリア部(窓枠内側の表示部)を硬化させ,窓枠印刷下部の未硬化部を側面照射などにより硬化させていた(図5)。しかし,この方法では配線や実装部品等による照射光の減衰が大きく,未硬化や硬化不良の問題が発生していた。
この問題の解決策として,既存の照射器の下部に低角度(入射角でいうと高入射角)のエリア照射領域を形成する低角度照射ユニットを追加することにより,側面からの照射だけでなく,アクティブエリアからも低角度の紫外線照射をすることが可能となり,(1)遮光部下の未硬化の改善,(2)一度の照射での全周処理,(3)複数対象の同時処理,を可能にする紫外線照射プロセスを確立した(特許出願済)(図6)。
3.2 低角度照射ユニットの概要
低角度照射ユニットの外観は図7のようになり,照射器直下に照射光を低角度にするミラー部と,照射効率を向上させるための副ミラー群からなる複合構造となっている(図8,図9)。
低角度照射ユニットの照射エリア内では,図10の光線図に示すように,様々な方位より低角度で紫外線が照射される構成となっているので,(1)遮光部下の未硬化の改善,(2)一度の照射での全周処理,(3)複数対象の同時処理,が可能となった。
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