技術資料
LEDioc FLOOD DUELL™ - 高出力形LED投光器 -
株式会社アイ・ライティング・システム 機器技術部 第一機器技術課
キーワード
LEDioc FLOOD DUELL™,LED,投光器,高出力,軽量,省エネ,CO₂削減,長寿命
「レディオック フラッド デュエル」のご案内
一般的なHID投光器以上の高出力、HID投光器と同じ取付ピッチで手軽にリニューアルが行えるLED投光器「レディオック フラッド デュエル」の詳細は以下よりご覧いただけます。
- LEDioc FLOOD DUELL(レディオック フラッド デュエル)
1.はじめに
LED素子とパッケージング技術の進化に伴い,LEDの高出力化が実現できるようになり,LED器具の屋外市場においても,大手メーカーがHID250W,400W相当クラスの商品開発が完了し始め,当該投光器市場が活発化してきた。しかし,HID1000W以上の高ワット相当クラスにおいては,まだ商品化しているメーカーも少なく,海外メーカー品には1つ2つの商品があるものの,必要十分な性能を有していない。一方,当社においては高出力投光器LEDioc FLOOD BLITZ®(レディオック フラッド ブリッツ。以下,BLITZと略す)を当該業界に先駆けて商品化し,優位性を持っていたが,上述のように,他社商品が開発され競合し始めたことより,当該商品をリニューアルし,高効率(高出力)化を図って対処してきた。
このような背景の中,当社得意市場である高出力投光器をスポーツ施設(学校グランドクラスから大型スタジアムクラス)を中心とした本格的商品の開発を企画立案し,当社の総力を挙げるため,プロジェクト化し,開発に着手した。
2.商品概要
本商品は高出力型LEDパッケージを搭載し,反射鏡と前面カバーの組み合わせにより狭角配光,中角配光,広角配光を実現している。
また,従来の一般形HID投光器と同様,結線ボックス付きとした。図1にLEDioc FLOOD DUELL(レディオック フラッド デュエル。以下,DUELLと略す)を示す。
2.1 商品構成
表1に商品構成を示す。本商品は650Wタイプ,1000Wタイプ各々6種類,合計12種類から構成される。
配光 | LED色温度 | 形式 | ||
---|---|---|---|---|
1000Wタイプ | 高効率 (Ra:70) |
狭角 | 5000K | E9821N/SA2/2.4 |
中角 | 5000K | E9822N/SA2/2.4 | ||
広角 | 5000K | E9823N/SA2/2.4 | ||
高演色 (Ra:80) |
狭角 | 5000K | E9831N/SA2/2.4 | |
中角 | 5000K | E9832N/SA2/2.4 | ||
広角 | 5000K | E9833N/SA2/2.4 | ||
650Wタイプ | 高効率 (Ra:70) |
狭角 | 5000K | E6521N/SA2/2.4 |
中角 | 5000K | E6522N/SA2/2.4 | ||
広角 | 5000K | E6523N/SA2/2.4 | ||
高演色 (Ra:80) |
狭角 | 5000K | E6531N/SA2/2.4 | |
中角 | 5000K | E6532N/SA2/2.4 | ||
広角 | 5000K | E6533N/SA2/2.4 |
2.2 外観
650Wタイプと1000WタイプはLEDパッケージと電源が異なるのみで外観は同じである。器具寸法及び外観形状を図2に示す。
2.3 仕様
表2に仕様を示す。
項目 | 仕様 |
---|---|
本体 | アルミ |
前面カバー | ポリカーボネート(黄変防止処理) |
反射鏡 | ポリカーボネート 狭・中角:内面鏡面処理 広角:内面白色塗装 |
放熱部 | アルミ・銅 |
保護カバー | ステンレス |
アーム | 鋼板(溶融亜鉛メッキ) |
電源ケース | アルミ |
設計風速 | 60m/s |
放熱方式 | 自然空冷 |
耐雷サージ | 15kV(コモンモード) 4kV(ノーマルモード) |
保護等級 | IP43 |
塗装 | ポリエステル樹脂焼付塗装 |
仕上色 | ブラック |
LED |
|
使用周囲温度 使用角度範囲 |
・1000Wタイプ -10℃から+35℃ 夏季の一時的な高温環境(+50℃)に対応 上向き30度~下向き60度 |
・650Wタイプ -20℃から+35℃ 夏季の一時的な高温環境(+50℃)に対応 上向き90度~下向き60度 |
|
質量 | 24kg (1000Wタイプ,650Wタイプ) |
LED内蔵電源 | 入力電圧:200~242V 周波数:50Hz/60Hz共用 |
消費電力 | ・650Wタイプ
|
・1000Wタイプ
|
3.特徴・機能
3.1 高出力LEDの採用
採用LEDパッケージは高出力型1000Wタイプ,650Wタイプは各々パッケージサイズと搭載チップ数は同じであるがチップサイズが異なる。
650Wタイプは一般タイプ,1000Wタイプはカスタムタイプとなっており,特にカスタムタイプは大きな電流を流すことができるため一般タイプよりも高出力となる。
3.2 ヒートパイプの採用
3.2.1 優れた熱伝導
従来のBLITZでは,熱伝導率の高いアルミダイカストのボリュームを主体とした伝熱・放熱構造を熱対策として採用していたが,器具質量が重くなる欠点があった。
DUELLは伝熱・放熱構造としてヒートパイプを採用した。ヒートパイプは,パーソナルコンピュータなど電気部品の放熱部材としては一般的に使用され,軽量ながら,例えば長さ300mm,ø6mmの丸棒で熱伝導率をアルミと比較すると,アルミが236W/mK,ヒートパイプは530786W/mK(アルミの約2250倍)となり,LEDから発生した熱を効率よく放熱部に移動させることができる。
3.2.2 軽量化
表3にBLITZとDUELLの質量と電力の比較を示す。 質量1kgあたりの電力を比較すると例えばDUELL 1000WはBLITZ 200Wより4倍以上の数値となっており,質量に対する電力の効率がよくなっている。
なお,LED取付部分とヒートパイプ部分は別々の部品で構成されており,本構造の採用でLEDの発熱量に応じたヒートパイプの形状変更が可能となるため同構造を用いた商品の水平展開が可能となる。(特許出願中)
器具 | タイプ | 質量(kg) | 電力(Wf)(W) | 1kgあたりの電力(W/kg) |
---|---|---|---|---|
BLITZ | 200W | 18 | 173 | 9.6 |
400W | 28 | 346 | 12.3 | |
DUELL | 650W | 24 | 623 | 25.9 |
1000W | 24 | 940 | 39.1 |
3.3 反射鏡と前面カバーの樹脂化
BLITZでは反射鏡にアルミダイカストを採用していたが,DUELLにおいてはLEDからの発熱をヒートパイプで効率よく放熱部に移動させることで高熱に弱い樹脂(ポリカーボネート)の採用が可能となった。この結果,従来のアルミダイカストと比較すると,約50%の軽量化が可能となった。前面カバーにもポリカーボネートを採用することで更なる軽量化を図ると共に,万が一の破損時に飛散することがないなど安全面も考慮した。
3.4 配光性能
650Wタイプ,1000Wタイプ共に狭角,中角,広角の3種類の配光パターンをラインアップした。代表機種として1000Wタイプ(高効率タイプ),650Wタイプ(高効率タイプ)の水平面照度分布図(単位:ℓx)を図3から図8に示す。
1000Wタイプ
650Wタイプ
図9は一般形投光器(メタルハライドランプ1000W)とDUELL 650Wタイプを野球場で設置した場合の照度分布図で同等以上の性能となり,消費電力においては約53%の省エネとなる。また野球場等は空間照度も重要な要素となるため光に広がりのあるDUELLは使いやすくなっている。図10に光の広がりを示す。
- Aメタルハライドランプ1000W用投光器保守率0.65
- Bレディオック フラッド デュエル 650Wタイプ保守率0.80
消費電力※1
- A136.71kW
- B64.26kW
約53%削減
年間電気料金※2
- A約172万円
- B約81万円
約91万円お得
光源寿命
- A9000時間
- B40000時間
寿命4.4倍
図9 野球場の照度分布図
設計条件
軟式野球,運動競技区分 Ⅱ,内野(1600m²):500ℓx,外野(8900m²):300ℓx,全体(10500m²):330ℓx,照明柱:6基,灯高:23m
- ※1:消費電力は電源電圧200V時の特性を示す。LEDは初期照度補正時の40000時間平均消費電力値
- ※2:電気料金目安単価は21円/kWh(税抜),年間点灯時間は600時間で計算
図10 光の広がり
3.5 保護カバーの採用
ヒートパイプ部分はファールチップやホームランボールで破損しないように保護カバーで覆われている。また,ヒートパイプ部分の清掃をし易くするため後部が開閉式となっている。なお,強度に関し,130km/hのボールが当たっても問題がないことをピッチングマシーンを用いた実験で検証した。
4.おわりに
本商品の発売によりHID 1kWと1.5kW相当の投光器市場におけるLED化は加速していくものと考えられる。
2020年に開催が決定した東京オリンピックに向け,市場要求はさらに高まることが予想されるため,HID 2kW投光器の代替を次なる目標と考えている。その目標においては単に高出力にするのではなく,当社の独自性を発揮したLEDパッケージ,器具,電源を組み合わせることで業界をリードする器具となるように取り組んでいきたいと考えている。
この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第29号掲載記事に基づいて作成しました。
(2013年11月28日入稿)
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