技術資料
促進耐候性試験機の現状
光応用事業部 光応用開発部 ソフトエンジニアリング課
キーワード
促進耐候性試験機,キセノンランプ式,メタルハライドランプ式,太陽光
1.はじめに
促進耐候性試験機にはいくつかの種類があり,それぞれ用いられる光源が異なり,特長を持っている。本稿では各種促進耐候性試験機の紹介を行ない,促進耐候性試験機の現状と今後の課題について述べる。
2.試験機の種類
技術の発達に伴って,屋外暴露による耐候性評価に長期間を要する試料が多く出てきた。促進耐候性試験機はそれらの試料を迅速に評価するために生まれたもので,約100年の歴史がある。屋外で使用される製品を劣化させる因子としては光,熱,水(結露),オゾン,SOx,NOx等の活性ガス,塵埃などがあるが,そのうち紫外放射,熱,水による影響を試料に過剰に与えることにより屋外暴露に比べ数倍から100倍といった促進倍率で試料の耐候性の評価を行なうのが促進耐候性試験機である。
2.1 オープンフレームカーボンアーク式耐候性試験機
いわゆる「サンシャインカーボンアーク式耐候性試験機」のことであり,カーボン電極にアーク(交流電圧50V,交流電流60A)を発生させて得られる紫外線により耐候性を評価する試験機である。試料は回転式のホルダーに設置し,カーボンから紫外線が照射される。試料温度の制御はヒーターによって暖められた空気を槽内へ送ることにより行なわれる。太陽光との分光分布比較を図1に示す。
太陽光に比べ紫外線量が多い波長域があり,太陽光では放射されていない短波長域にも少量の放射がある(フィルターA使用時,フィルターAは立ち上がり波長が約255nm)。促進倍率はサンプルにもよるが屋外暴露に比べ数倍から10数倍となっている。
オープンフレームカーボンアーク式耐候性試験機は国内では標準的な促進耐候性試験機であり,データの蓄積も豊富であるが,昨今の企業活動の国際化,JISのISO整合化などの流れでキセノンランプ式耐候性試験に規格が移りつつある。例えばJIS5600塗料一般試験方法では,本試験機による試験が規格から削除されている。
2.2 キセノンランプ式耐候性試験機
キセノンガスを封入した放電灯(キセノンランプ)を光源とする試験機であり,促進耐候性試験機の中では太陽光に最も近似した分光分布を有している。ヨーロッパで多く使われている試験機であり,国内でもオープンフレームカーボンアーク式耐候性試験機からの乗り換えを含め導入が増えている。分光分布の一例として太陽光と水冷式7.5kWタイプで紫外線放射照度60W/m²,180W/m²のものを図2に示す。温度調節はオープンフレームカーボンアーク式耐候性試験機と同様である。
ランプは水冷式,空冷式の2種類の冷却方式があり,幅広い定格のランプを持つ装置がラインナップされている。近年は太陽光と同等な光量のタイプ以外に強エネルギータイプ(太陽光の約3倍)があり,目的に応じて機種が選べる。促進倍率はオープンフレームカーボンアーク式の約1~3倍程度である。大型の試験機は試料回転式であり,卓上型は試料固定式である。
2.3 メタルハライドランプ式耐候性試験機
光源は放電灯の1種であるメタルハライドランプを採用している。
図3に一例としてフィルターと組み合わせたランプの分光分布を示す。メタルハライドランプは太陽光の約20~30倍の紫外線量があり,促進倍率は約100倍程度とされている。この試験機の分光分布は,キセノンランプ式やカーボンアーク式と違い,ランプに封入する金属の種類やメーカーによるフィルターの材質の違いによって異なっており,それらをうまく組み合わせて分光分布を制御する。試料固定式のものが多い。
2.4 紫外線蛍光ランプ式耐候性試験機
紫外線蛍光ランプはいわゆる一般蛍光灯と同じ原理で点灯するもので,必要とされる種々の分光分布に対応するために蛍光体とガラスの種類を変えている。JIS K 5600-7-8(紫外線蛍光ランプ法)ではタイプ1-UVB(313),タイプ2-UVA(340),タイプ3-UVA(351)の3種類が規定されている。例としてタイプ1のランプの分光分布を図4に示す。試料は固定式である。
2.5 屋外集光式促進暴露試験機EMMAQUA®
実際の太陽光を利用した試験機としてEMMAQUA®(商品名)がある。10枚の平面鏡で受けた太陽光を試料に集光することにより屋外暴露よりも多くの紫外線を照射する装置である。米国フロリダ州における屋外暴露5年分の紫外線量が1年で照射できるとされている。通常はEMMAQUA®の名の通り,シャワー機能も付加されていて昼間120分ごとに8分噴霧し,夜間は8分間噴霧を3回行なう。またNTW(Night Time Wetting)と呼ばれる試験では,昼間はシャワーなし,夜間は15分ごとに3分噴霧というように,夜間の噴霧を強調した試験方法になっている。集光式のため試料は固定式である。(図5)
2.6 紫外線カーボンアーク式耐候性試験機
前述のオープンフレームカーボンアーク式と異なり,密閉されたガラスグローブ内でカーボンを燃焼させて紫外線を放射する試験機である。現在は対応規格も少なくなっており,オープンフレームカーボンアーク式に切り替わっている。なお試料は回転式である。
製品詳細
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