技術資料
高温真空加熱装置KG-2000
技術開発室 技術研究所 光学システムグループ
技術開発室 技術研究所 材料開発グループ
光源事業部 生産技術部 生産技術グループ
光応用事業部 光応用営業部 技術グループ
光応用事業部 光応用営業部 LH営業課
キーワード
高温真空加熱装置,2000℃,金属ヒーター
1.はじめに
本装置は,高真空の高温雰囲気,または高純度の若干量の希ガスを含む高温雰囲気において,結晶成長,化学反応,成膜等の化学的・物理的変化により試料を処理する装置の一つであり,特に2000℃の高温,10⁻⁴Pa 台の圧力下で処理できる高温真空加熱装置である。
従来,2000℃ないしそれ以上の高温下の真空中またはガス雰囲気中で達成する加熱装置では,次のような問題があった。
まず,ヒーターの構成材料には,安価さと加工の容易さのため,カーボンが用いられることが多いが,高真空下では昇華点が下がるため(1×10⁻³Pa 付近で1900℃),カーボンの昇華による装置内の汚染,ヒーター痩せ細りによる達成温度の再現性の欠如などの問題を引き起こしていた。
次に,装置構造として広く用いられる,処理室が1つの単槽型高温処理装置の場合,試料を2000℃ないしそれ以上の高温に急速かつ均一に昇温するのが難しいという欠点があった。また,試料の性質によっては,加熱の初期段階で試料の吸着・吸蔵ガスの放出があり,処理雰囲気を汚染するという問題もあった。
さらに,試料を高速で熱処理する連続炉も多く利用されているが,この場合は,試料の均熱領域が狭く,かつその均熱領域内の温度制御が難しいという欠点があった。
そこでこのたび,これらの諸問題を解決すべく,装置の構成材料や構造を見直して,試料及び処理雰囲気の汚染がなく,高速かつ均一な加熱が可能な高温真空加熱装置を開発したので,その概要を紹介する。
2.商品概要
2.1 外観及び仕様
本装置KG-2000の外観写真を図1に示す。また,装置の仕様を以下に示す。
- プロセスチャンバー
- 2槽方式(予備加熱室+主加熱室)
- 排気形態
- 油回転ポンプ+ターボ分子ポンプ
- 試料サイズ
- ø150,30mmH
- 試料搬送機構
- 試料平行移動+昇降機能
- ヒーターエレメント
- Wヒーター(主加熱室) / Moヒーター(予備加熱室)
- 排気性能
- ×10⁻⁴Pa 台(室温時)
- 設定温度
- 2000℃(主加熱室) / 800℃(予備加熱室)
- 温度均一性
- ±10℃(1500℃にて)
- 温度計測
- 熱電対+放射温度計
- 温度制御
- PID制御
- 各種安全機構装備(過昇温時停止,真空異常停止,冷却水流量不足時停止,搬送位置エラー等)
- ヒーター構成材料は,発熱体として優れガス吸着の少ない高融点金属のタングステン(W)及びモリブデン(Mo)を用いた。
- 処理室は,800℃の温度が設定され10⁻⁴Pa 以下の圧力に到達させる過程で試料の吸着・吸蔵ガスを除去する役割を持つ予備加熱室と,常に10⁻⁴Pa 以下の圧力と2000℃の温度が設定され所望の熱処理が行なわれる主加熱室とからなる2槽方式を採用した。
- 試料温度を均一にするため,タングステン(W)またはモリブデン(Mo)からなるヒーターの周囲に反射特性に優れたタングステン(W)からなる反射板を設置した。
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