施設報告

ゴルフクラブイースタンの照明設備 - ゴルフ練習場納入施設例 -

国内営業本部 東日本技術設計センター
国内営業本部 民需特販営業部 直需営業課

キーワード

ゴルフ練習場,高出力形LED投光器,光害対策

1.はじめに

東京都墨田区にあるゴルフ練習場「ゴルフクラブイースタン」は都内屈指の最新設備を誇り,区内No.1の飛距離をもち,打席手前50mは天然芝を施し,180ヤードのフェアウェイにグリーン,バンカーなどを多数配置し,効果的な練習ができる施設である。

打席は1階から3階まであり,全108打席で打席のスペースも広く,ゆったりとした空間となっている。

当該施設では節電を強化し,経済産業省通達の努力目標を維持するなど,省エネに積極的に取り組んでおり,平成24年2月にフェアウェイ照明をメタルハライドランプから高出力形LED投光器LEDioc FLOOD DUELL™(レディオック フラッド デュエル™;以下「DUELL」という)にリニューアルを行い,更なる省エネ化を実現させた。

本稿では同照明設備の概要について紹介する。

2.照明設計

本施設の照明設計を行うにあたり,下記の事項に留意し設計を行った。

  1. 水平面照度は既設同等程度の明るさを確保すると共に鉛直面照度を既設同等以上の明るさを確保する。
  2. 施設周辺にはマンションが多く立ち並んでいるため,周辺への漏れ光及び上空への漏れ光を軽減する。
  3. 高効率なLED投光器を採用し設置台数の削減を図り,省エネ効果を高める。

3.照明設備概要

既存照明設備は,メタルハライドランプ1kW用投光器が33台,打席屋根の上に均等に配置されたものである。この既存設備について推定の照度検証を行った結果,維持水平面照度は約60ℓx,維持鉛直面照度は50m先で130ℓx,最先端部で65ℓxという計算結果であった(図1,2)。

図1 改修前水平面照度分布図(推定)

図2 改修前鉛直面照度分布図(推定)

この検証結果を基に当該施設にて照度測定を行った結果,ほぼ照明計算結果と同等であることが確認された。

照明設備の数量を表1に示す。LED高出力形投光器DUELLは表1に示す3種類,計17台を採用した。

表1 照明設備数量表
商品名 形式 配光種別 消費電力 色温度 演色性 数量
LED高出力形投光器
LEDioc FLOOD DUELL
E9821SA2/2.4 狭角形 平均値 5000K相当 Ra70 4台
900W
E6521SA2/2.4 狭角形 平均値 4台
595W
E6522SA2/2.4 中角形 平均値 9台
595W

DUELLには狭角,中角,広角の3種類の配光,容量も1kWタイプ,650Wタイプがラインナップされているため,当該施設にてDUELLよる照明実験を行い,採用する配光特性,容量,数量のシミュレーションを行った。照度分布のシミュレーション結果を図3,4に示す。

図3 改修後水平面照度分布図(シミュレーション)

図4 改修後鉛直面照度分布図(シミュレーション)

その結果に基づき,打席から50mまでの範囲の照明にはDUELL中角配光650Wを,フェアウェイ中間部用にはDUELL狭角配光1kWを,そして空間照度を確保するために周辺マンションへの漏れ光も考慮してDUELL狭角配光650Wを,それぞれ採用することにした。

DUELL 650Wタイプは,消費電力650Wでメタルハライドランプ1kW同等,DUELL 1000Wタイプはメタルハライドランプ1.5kW同等の明るさを確保出来,寿命も40,000hとメタルハライドランプの寿命に比べ4倍以上となっている。

また,DUELLの光は虫の好む紫外線領域や熱を発する赤外線領域の波長をほとんど含んでいないため,虫が寄りつきにくく練習をされるお客様にも優しい照明となっている。

既設照明のメタルハライドランプ1kWは消費電力1,100Wであり,33台で36.3kWの消費電力であるが,DUELLには初期照度補正機能があり,650Wタイプは最大消費電力で650W,寿命末期までの平均消費電力は595W,1kWタイプは最大消費電力で985W寿命末期までの平均消費電力は900Wであり,17台の消費電力は11.3kWとなり,明るさは同等で消費電力は1/3以下と省エネに貢献している(図5,6)。

照明の視環境の検証は改修前および改修後の画像解析にて行った。画像解析は輝度測光,明るさ感測光について行ったが,ここでは図7,8に明るさ感の画像解析結果を示す。

図5 改修前フェアウエイ全景

図7 改修前画像解析(明るさ感)

図6 改修後フェアウエイ全景

図8 改修後画像解析(明るさ感)

水平面は明るさを確保し,鉛直面の明るさは既存設備よりも明るく感じられる。ゴルフ練習場のすぐ横にはマンションおよび車道があり,マンションへの漏れ光,車道を走る車へのグレアが懸念されたが,既存設備との目視による比較検証を行った結果,既存設備と同等以下であることが確認出来た。

4.おわりに

照明のLED化が加速している。高容量高演色形投光器も各社より発売されてきている。弊社の高出力形LED投光器LEDioc FLOOD DUELLのラインアップもメタルハライドランプ1kW,1.5kW対応までであったが,つい最近メタルハライドランプ2kW対応の機種が発表された。

今後高効率・長寿命・省電力のオールLEDを採用するプロ野球場,サッカー場の改修も増えて来ることが予想される。

東日本大震災時にプロ野球の照明点灯の間引き,時間短縮,街路灯の消灯等,電力事情により様々な制約を受けた照明だが,高効率なLED照明の登場により同等の明るさを確保し消費電力を大幅に削減,長寿命で質の良い照明の提供が可能となった。LED照明はどこまで進化するのか楽しみである。

最後に,本施設の完成にあたり,ご指導,ご協力頂いた関係各位に心よりお礼を申し上げる。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第31号掲載記事に基づいて作成しました。
(2014年11月17日入稿)


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