施設報告
熊本市上通商店街 - アーケード照明 -
国内営業本部 福岡営業所 技術課
国内営業本部 福岡営業所 熊本事務所
キーワード
熊本市,上通商店街,アーケード照明,高天井,埋込,LED,調光
1.はじめに
熊本県熊本市上通商店街は,アーケード入口(通町筋側)から北(並木坂側)へ延びる全長600m,幅11mの通りの商店街である。商店街の南部分は,約350mの天井の高いアーチ型の屋根の中央部分から日光が差し込み,明るく開放感を溢れる全蓄型アーケードとなっていて,パリのオルセー美術館をイメージして造られており,通りの中央部分には木製のボードウォークを施し,明るくお洒落なファッションストリートとなっている。両側に並ぶ建物の3階部分までがアーケード内に面しており,飲食店,衣料品店,書店などの専門店が多く,熊本市現代美術館などの文化施設や画廊,ホールが多いことから「歴史と文化の街」と呼ばれている。また,古い町並みや老舗の商店も多く,新しい感覚の若者層に人気の高い店舗も数多く,活気に溢れた町並みを形づくっている。昨秋,上通アーケードでは,ECO改修事業を実施し,老朽化した屋根の中央部分(ポリカーボネート製)を付け替えるとともに,CO₂排出量や電気代の削減を目的に,全照明をLED化した(図1,図2)(平成25年11月竣工)。
2.照明設計
2.1 設計コンセプト
社会課題である低炭素化に努める。既設の照明器具と同等以上の照度が確保でき,また,必要により調光が可能であることや,設置後の景観を重視した照明器具の選定や施工により,明るく上品な商店街空間を醸成する。
2.2 照明手法
上通商店街のアーケード照明は,埋込式ダウンライト(MF250W)を使用している。調光可能タイプのレディオック ハイベイ ラムダ™(LEDioc HIGH-BAY Λ™)200Wと天井裏の梁に固定する特注の取付金具との組み合わせで,既設の埋込穴に入れるかどうか,検討を行った。現地調査しながら作図した取付金具の設計図面と既設構造物の寸法(既設のダウンライト枠:ø350,パネル:約1,000×約1,000)を基に,3DCGでイメージパース図を作成した(図3,図4)。レディオック ハイベイ ラムダ(以下,略す場合は「ラムダ」と表記)を埋め込むことで,昼間の景観や周辺の雰囲気を調和できる(図5,図6)。
3.設備概要
3.1 照明設備
照明設備は,表1に示す数量を設置した。
設置場所 | 既設ランプ | 商品仕様 | 高さ | 数量 |
---|---|---|---|---|
アーケード照明 (両サイド照明,軒下照明) |
MF250W相当以上 | LEDioc HIGH-BAY Λ 200W (EHCL22202DN/SA1/2/2.4) 手動調光器 (I.DF-70170-PD) タイマー制御 |
約6・10m - |
261台 6台 |
壁面照明 (通町筋側と並木坂側の壁面アッパーライト) |
HQ150W相当 | LEDioc Flood NEO 100W (ECF1081N/SA1/2/2.4/W) |
約6m | 13台 |
アーケード照明の上部 (アーチ形状の屋根アッパーライト) |
HRF200W相当以上 | LEDioc LEDアイランプ® 45W (LDR45N-H/E39B850) |
- | 178本 |
アーケード照明の上部 (屋上のキャットウォーク) |
ビーム電球150W相当 | LEDioc LEDアイランプ® 16W (LDR16L-H/B830) 人感センサー用ランプホルダ (ESP18003/BK) |
- | 62本 62台 |
3.2 長寿命およびメンテナンス
上通商店街は,基本的に照明器具の台数が多く,照明器具の故障やランプ切れなどにより,メンテナンスがかかるため,高い位置の照明を40000~60000時間の長寿命のLED化にしたことで,メンテナンスの負担がかからなくなる。
3.3 グレア問題
既設の照明器具との同じ台数で取り替えることになったが,両サイド照明方式の採用,3階部分までの高さの確保,及び調光制御により,照度を保ちながら,眩しさを感じさせない。
3.4 照明効果
MF400W相当のレディオック ハイベイ ラムダ 200Wが採用されたことにより,改善前と比べて,2倍以上の明るさが可能で,色の再現性を表す演色性(Ra)はほぼ同じとなり,子供から高齢者まで利用する商店街は,爽やかで賑やかな雰囲気となった(図7,図8)。ラムダを約60%の調光制御で,16時から22時までは全点灯(図6),22時から24時までは間引き点灯,24時から6時まではさらに間引いて常夜灯として点灯する。更なる省エネを実現するとともに,帰宅客の防犯上,効果的になる。改善前より明るくなることで,遠方からアイキャッチとなり,奥へ引き寄せるような集客力アップが期待できる(図9)。
3.5 その他
その他の照明は,既設ランプの光束などにより,同等以上の明るさになるように選定した。(図10,図11)点検時しか通らない屋上のキャットウォークは,人感センサーで,更なる省エネを図った。(図12,図13)
4.おわりに
既設の照明器具との同じ台数で十分な照度を確保でき,約63%の大幅な省エネに貢献できている。また,調光により更なる省エネ,省メンテで熊本の中心であるメインストリートを快適な空間を演出しており,近年中心市街地の人離れが懸念されているが,活性化につながると期待できる。最後に,本照明設備の納入にあたり,ご指導ご協力頂いた関係各位に深くお礼申し上げる。
この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第30号掲載記事に基づいて作成しました。
(2014年5月28日入稿)
納入事例
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