施設報告

札幌市LED街路灯導入実証実験報告

岩崎電気株式会社 国内営業部 札幌営業所
国立大学法人北海道大学 大学院教授 実証研究委員会 委員長 萩原 亨
北海道電力株式会社 実証研究委員会 副幹事 西尾 将興

キーワード

札幌市,LED,街路灯,実証実験,夜間,安全,安心

1.実験背景

このLED街路灯実証実験は,「夜間に,札幌市民が安全に安心して歩行出来ると同時に,経済的な照明を提供する」ことを目的に実施されたものである。

これまでの街路灯に関する照明技術は,新配光や新デザイン照明器具により技術向上し,夜間の歩行者の安全や安心に貢献してきた。最近話題のLED光源を街路灯に利用し良い結果が得られれば,経済的な街路灯となる可能性がある。その為には,既存の高圧水銀ランプや高圧ナトリウム街路灯とLED街路灯の照明特性などを学究・科学的に評価検証を行うことが課題となっていた。

2.実験概要

本実証実験は,照明学会北海道支部が札幌市役所より調査委託を受け,実証研究委員会を立ち上げ,札幌市西区発寒モデル地区(住宅地区)に試験設置したLED街路灯において,既存の街路灯と同時検証を実施して,「LED街路灯が,既存の高圧水銀ランプや高圧ナトリウム街路灯と同等性能を有するか否か」視認性に関する静止印象評価実験,光学測定及び画像処理実験を行い,街路灯として総合的な照明特性の検証を行った。

3.実験項目と概要

実証実験は,平成21年11月10日(火曜日)から20日(金曜日),札幌市西区発寒モデル地区に設置したLED街路灯と既存街路灯の同時検証を実施し,比較検証を行いLED街路灯の導入実証実験を実施した。実験項目と実証実験概要を下記に示す。

3.1 実験項目

  1. LED街路灯が歩行者の視認性/明るさ感に関する影響を静止印象評価実験。
  2. LED街路灯の色合いや眩しさに関する影響を静止印象評価実験。
  3. 歩行者の見え方を評価刺激として設置し,既存の街路灯と静止印象評価比較。
  4. 街路灯として,歩行のし易さを総合印象評価。
  5. 静止印象評価実験した評価エリアの光学測定。
  6. 同時に,静止印象評価実験した評価エリアの画像処理実験。

3.2 実験条件

静止印象評価実験は,表3-1の条件にて行った。

表3-1 実験条件
  LED街路灯 HF(高圧水銀ランプ)街路灯 NH(高圧ナトリウムランプ)街路灯
取付条件
  • 道路幅員W=6m,取付高さ5m,片側配列,取付間隔≒30m
路面
  • アスファルト路面
照度基準 <防犯灯照度基準:クラスB>
  • 平均水平面照度: 3(ℓx)以上
  • 鉛直面照度:0.5(ℓx)以上(道路面からH=1.5mの道路軸に直角な面の照度)
  • 照明評価「4(m)先の歩行者の挙動・姿勢などがわかる」
備考
  • 静止印象評価実験:観測距離4mとする。<日本防犯設備協会>
    視線の大まかな向きがわかる。
クラスA → 雄であるか(知人かどうか)がわかる。目,鼻,口の位置がわかる。
クラスB → 顔の向きがわかる。

4.光学測定

4.1 測定概要

街路灯の実験環境の物理的特性を把握する目的で,水平面照度,鉛直面照度測定を行った。

4.2 照度測定

4.2.1 測定項目

街路灯の明るさとして,下記の項目を光学測定する。
①水平面照度値 ②鉛直面照度値

4.2.2 測定区間

街路灯の測定区間は,下記のとおりとする。

①水平面照度
街路灯取付け間隔 1スパン
②鉛直面照度
街路灯取付け間隔 1スパン/道路中央
4.2.3 測定個所/設備

測定個所は,札幌市LED街路灯導入実証実験にエントリーした22社のLED街路灯から,検証可能な設置,道路構造,配光及びデザインなどの選定基準により,事前に全カ所の現場調査を実施し7カ所(LED街路灯4,既設水銀灯2,既設ナトリウム街路灯1)とした。
実験設備一覧と照度測定個所を表4-1に示す。

表4-1 実験設備一覧
実験設備 スパン
(m)
ワット数
(W)
光束
(ℓm)
街路灯
高さ(m)
光源種別 街路灯管理No.
LED 19-1 16.3 33 2150 ≒5.1
LED 11-1 40.4 35 1600 ≒5.6
LED 5-1 21.1 26 2176 ≒5.2
LED 6-1 20.3 27 2760 ≒5.3
HF B 24.4 80 3300 ≒5.4
HF D 35.4 80 3300 ≒5.6
NH E 35.3 75 6400 ≒6.9
  • 注)光束はメーカー申請値。

図4-1 測定位置図

4.2.4 測定位置

測定位置は,道路横断方向に3カ所,道路縦断方向には,原則5m程度の間隔にて測定する。図4-1に示す(直線の交点位置が測定位置)。

図4-1 測定位置図

図4-1 測定位置図

4.2.5 測定方法

水平面照度の測定は,路面の測定位置において照度計受光部が水平になるように設置して測定する。
鉛直面照度の測定は,道路中央部の路面から1.5m上がった,道路縦断方向に照度計の受光部が鉛直になるように設置して測定する。

4.2.6 光学測定機器

光学測定機器は次の機器,システムを使用した。

照度計
TOPCON IM-5形
デジタルカメラ
NIKON D80
画像処理装置
岩崎電気(株) 画像処理システム(QUAPIX™,パナソニック電工(株) 画像処理システム

4.3 照度測定結果

4.3.1 水平面と鉛直面照度測定結果

水平面照度と鉛直面照度の測定結果の一例を図4-2に示す。

図4-2 測定結果一例(街路灯管理No.E)


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