施設報告
水道施設における耐塩素性病原生物対策事業 - 株式会社東京サマーランドの事例 -
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キーワード
東京サマーランド,水道施設,耐塩素性病原生物,クリプトスポリジウム,紫外線,不活化
1.はじめに
水道における耐塩素性病原生物(クリプトスポリジウム,ジアルジア)(以下クリプトスポリジウムと記載)の問題が顕在化し始めた1996年6月,埼玉県において約9000人が水道水中のクリプトスポリジウムに感染するという国内最大規模の集団感染事故が発生した。
このため,厚生労働省は直ちに暫定指針を策定し,濾過設備の設置を規定するなど対策の推進を図ってきた。そして平成19年度より,耐塩素性病原生物に対する感染症対策として紫外線処理設備が国庫補助対象施設として認可されるに至っている。
東京都あきる野市にある東京サマーランドは,屋内外のプールを始め遊園地やボーリング場などを主体とした40万坪の広大な敷地を誇る総合レジャーランドである。1日に消費する6000m³の殆どを地下水によって賄っている専用水道である。地下水の水質は比較的安定していると言われているが,将来に対する予防対策として東京都保健所の指導の下,都内で初めての紫外線照射装置 アイ ウォーターピュア®の導入が決定され,納入した紫外線照射装置の概要をここに紹介する。サマーランド本館を図1に,屋内プールを図2に示す。
2.水道施設の種類
「水道法」による主な水道施設を以下に示す。
- 水道事業:一般の需要に応じて水道を供給する事業で,給水人口が5001人以上。
- 簡易水道事業:一般の需要に応じて水道を供給する事業で,給水人口が101人から5000人。
- 水道用水供給事業:水道事業者に対して水道用水を卸売りする事業体。
- 専用水道:工場,病院等,特定の人の生活用水を供給する自家用水道で,1日の使用量が20m³を超えるもの。自家用水道のため国庫補助対象施設としては認められていない。
3.水源の種類
主な水源を以下に示す。
- 地表水(表流水):河川水や湖沼水など,最も多く用いられる水源であるが,下水や産業排水が加わるので不純物を多く含んでいる。
- 地表水(表流水)以外:地下水,伏流水,湧水などで水質が比較的安定している。
今回の国庫補助対象施設として認可される紫外線処理設備の水源は,この地表水以外であることが条件となっている。地表水を水源とする施設は膜等の濾過による方式で規定されている。
4.クリプトスポリジウムとは
- 原虫(単細胞の寄生虫)の一種で,大きさは4~6μm。
- 耐塩素性病原生物で通常の塩素濃度では不活化しない。
- 哺乳動物(人間,牛,犬,猫)の腸に寄生しており,糞便と共に体外へ排出される。
- 湿った環境中にて2~6ヶ月間感染力を持続する。経口感染による集団感染が特長。
- 感染すると激しい腹痛と下痢にみまわれ,免疫力の弱い子供などでは死に至ることがある。
5.紫外線照射装置の構成
紫外線照射装置の内部図を図3に示す。
5.1 紫外線ランプ
低圧放電灯を使用し,30W,65W,240Wの3機種をシリーズ化している。
5.2 ランプスリーブ
照射槽との間にシール性を確保し,中に紫外線ランプを挿入。ランプスリーブ外面にフッ素被覆をした破損対策品を標準仕様としている。
5.3 照射槽
ステンレスSUS304を使用し,内面は鏡面仕上げを行ない反射効率の確保と細菌類の付着を防止している。
5.4 スリーブ洗浄機構
ランプスリーブの外面が汚れないように自動洗浄機構が組み込まれている。
5.5 紫外線(UV)モニター
多点モニターによる安定した紫外線強度の常時監視を行なっている。測定窓には汚れ防止の自動ワイパーが組み込まれている。
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