施設報告
日本体育大学 横浜・健志台キャンパス 体操競技館照明設備
照明事業部 国内営業本部 横浜営業所
キーワード
日本体育大学,横浜・健志台キャンパス,学校,体育館,DALI,省エネルギー
1.はじめに
学校法人日本体育大学は,1891年(明治24年)に日高藤吉郎によって創設された,体育の文化と科学の総合大学である。神奈川県横浜市青葉区に位置する横浜・健志台キャンパスは,約17万m²の広大な緑に囲まれた校地となっている。
日本体育大学体操競技部は,学校創設以来120年以上の歴史を誇る伝統のクラブで,オリンピックメダリストも輩出している名門であり,その練習拠点である体操競技館は大学トップレベルの充実した設備が整った体操競技専門の体育館である。
今回,既設HID照明設備の老朽化に伴い,制御システムも含めたLED化を実施し,視環境のよりいっそうの向上と省エネルギー化を実現した。
本稿では,2019年3月に改修工事が完了した同照明設備の概要について紹介する(図1)。
2.照明設備の概要
2.1 設計コンセプト
既設照明はHID高天井用照明器具を用い,光源はメタルハライドランプ1kWであったが,キャットウォークに開けた丸穴に乳白パネルを張り,その上に照明セードを設置するという特殊な設置状況であった。
このため,パネル上に体操競技エリア特有の炭酸マグネシウムの粉が堆積し,照度の低下を生じるという問題もあった。この設置環境を基本的に変えないで改修を行うための特注の金具を設計し,現状の設置環境を変えずに課題を解消しLED照明器具の設置を可能にした。
従来のHIDランプでは再始動に時間がかかるためにできないこまめな消灯,種目別やトレーニングシーンに合わせた照明の点灯パターンの切り替えによる節電などを目的にDALIシステムによる照明制御を計画した。
2.2 設計特性
照明設計に当たっては,照明手法が前述のように特殊で照度の推定が難しかったため,実測をして現状の照度(平均310ℓx)を把握し,同等以上の照度で設計を行った(図2)。
照明器具は,体操競技エリア特有の炭酸マグネシウムの粉が常時舞っている環境で使用でき,選手が跳躍や回転などの動作中にまぶしさによる支障がなく,DALIシステムに適合するなどの条件から,密閉性の高い(IP65)前面フロストガラスのLED高天井照明器具を採用した。
2.3 照明器具
照明器具の設置は,キャットウォークの穴に特注の金具にて設置しスタイリッシュな仕上がりとなった(図3〜図5)。また,照明点灯状況を図6,図7に示す。
2.4 照明制御
照明制御はDALIシステムを用いた。制御盤本体は天井裏に設置し,日常の運用はフロアに設けた壁スイッチで点灯パターンを選択することで行っている(図8,図9)。
壁スイッチには照明のON,OFFボタンと点灯パターンの選択ボタンのみを配置しており,それを押すことで簡単に点灯パターンの切り替えが可能となっている。
また,制御盤本体には調光率制御用のフェーダーが設けてあり,調光率を自由に変えることが可能であるが,日常の運用時は各点灯パターン毎に60〜80%の調光状態をあらかじめ設定して点灯させている。
3.おわりに
施主様をはじめ,実際に施設を利用される学生の皆さまからもご好評いただいている。既設照明で課題だった前面パネルへの炭酸マグネシウムの堆積による照度の低下は,今回の改修で解消できた。また,既設照明と同じ台数で十分な照度を確保できるため,現状は60%調光をした状態で運用されている。多彩な点灯パターン選択やこまめな消灯により,さらなる節電が期待される。
本件は,弊社で初めてのDALIシステム納入事例となった。今後もシーンに合わせた照明環境の制御を実現するような提案がますます必要になってくるものと感じた。
最後に,本施設照明設備の完成にあたり,ご指導ご協力いただいたすべての方々に厚く御礼申し上げる。
この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第40号掲載記事に基づいて作成しました。
(2019年5月13日入稿)
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