施設報告
栴檀木橋(せんだんのきばし)ライトアップ
営業技術部 LCS
営業技術部 西日本技術設計センター
営業技術部 西日本技術設計センター
国内事業本部 国内営業部 大阪営業所 広域営業課
キーワード
大阪,栴檀木橋,LED,橋梁ライトアップ,道路低位置照明,高欄照明,景観照明,フルカラーライン照明
1.はじめに
1.1 施設概要
栴檀木橋は,江戸時代に蔵屋敷があった中之島と船場との連絡のために土佐堀川に架かった数多くある橋のうちのひとつである。橋の周辺には大阪市中央公会堂,大阪府立中之島図書館などの歴史的な風格ある建築物が隣接していることもあり,歴史的建築物との調和や,橋の歴史を顕彰するような設計が施されている。また,橋の欄干には橋名の由来といわれているセンダンの木をモチーフにしたレリーフが取り付けられている(図1,図2)。
本稿では,同橋梁ライトアップにおける照明手法および照明設備を紹介する。
1.2 事業目的および背景
大阪市では,水と光の魅力で世界の都市間競争に打ち勝つ「水と光の首都大阪の実現」を目指し,大阪府・大阪市・経済界が一体となって,様々な取り組みを実施しており,中之島エリアにおいては,難波橋,天神橋,天満橋など橋梁のライトアップが実施されている。
また,周辺の北浜エリアでは川床が設置された飲食店が並ぶ「北浜テラス」が新たな観光スポットとなるなど,集客に向けた取り組みが進むエリアであることから,この地域の水辺の魅力を高め,さらなる集客に寄与することを目的として,栴檀木橋のライトアップが計画された(図3)。
2.照明設計
2.1 照明コンセプト
栴檀木橋は中之島の景観に欠かせない大阪市中央公会堂と三休橋筋を繋ぐ懸け橋であることから,三休橋筋の特色でもある「ガス灯の光」との関連性,通路としても景観としても結びつくこの懸け橋となる光のラインの際立ち,周辺施設のライトアップとの調和,レトロモダンな光景観,当該橋梁上・川沿いの遊歩道・船上からの視点を意識したうえでの「レトロモダンな風情を演出させる」ことを基本とした照明計画とする。
ライティングコンセプト
「レトロモダンな灯りで繋げる“結い”の懸け橋」
2.2 照明手法および照明設備
主要な視点場として当該橋梁上・川沿いの遊歩道・船上の3つが挙げられるが,各視点場共に橋のライン形状を見せ,存在感を出しながらも昼間の状態も含め周囲景観との共存を保たせるため,照明器具は直接見せず,できる限り存在も感じさせずに橋梁だけを照らす計画となっている。
また,照らされている当該橋梁が土佐堀川水面へ美しく映り込むように,照明器具からの輝度をできる限り抑制している。
2.2.1 既設器具を活かす
橋梁上の既設のポールライト,アプローチライトはレトロモダンなデザインで風情を感じさせる大きな要素であることから,アイキャッチとなるモニュメント灯として利用した。しかしながら,既設同等の光源での点灯状態では輝度が高く,照明器具の存在が強調され過ぎていたため,輝度を落とし,グレアを抑制した点灯状態となるような明るさに再設定を行った。ポールライトには電球色のLEDライトバルブG22W,アプローチライトには電球色のLEDライトバルブG12Wを採用している(図4)。
2.2.2 光源を見せない照明で車道の演出と明るさを確保
グレアを抑制しつつ車道に必要な明るさを確保し,かつ周囲環境と同調させるため,低位置照明方式を採用し,プランター上に違和感のないように特注の20W低位置照明器具の設置を行った(図5)。
また,暖かみのある電球色のLED器具を使用することで三休橋筋から続くあかりとの関連性を持たせている(図6)。
2.2.3 高欄栴檀模様の演出と歩道の明るさを確保
橋上の歩道を視点場とした時には,周囲環境の妨げとならないように目線上の明るさを抑制し,川沿いの遊歩道や橋下を通過する船上を視点場とした時には光源を見せないように光を抑制している(図7)。
橋全体が華やかな印象になるように,また歩道に必要な明るさを確保するために,栴檀木橋の特長である高欄に配された栴檀模様への照明を行った。高欄手摺下部にLEDライン照明を配置し,橋全体のラインを浮かび上がらせることで「橋」の存在を強く印象付けるものにしている(図8)。
2.2.4 橋桁・橋脚の演出
橋脚には投光器を,橋桁には自然なグラデーションで時間帯や季節により異なる光の演出が行えるようにフルカラーライン照明を,光源が橋外から見えない位置に配置している(図9)。
大阪市中央公会堂と三休橋筋を結ぶ光のラインを強調させ,さらに橋全体が華やかな印象になるように橋桁・橋脚への照明を行った。橋脚・橋桁を浮かび上がらせることで橋の強い存在感が得られるとともに,細い橋桁が一筋のラインとして強い印象を与えるものとなっている(図10)。
テクニカルレポートに掲載されている内容は、原稿執筆時点の情報です。ご覧の時点では内容変更や取扱い中止などが行われている可能性があるため、あらかじめご了承ください。