施設報告

九州新幹線・出水駅の照明設備

国内営業事業部 営業技術部 中央技術設計センター

キーワード

九州新幹線,出水駅,セラルクス®,空間演出,高演色,高効率,武家屋敷,鶴

1. はじめに

図1 施設全景

2004年3月13日に新八代~鹿児島中央駅を結ぶ九州新幹線“つばめ”が先行開通した。最高時速260km/hで走る“つばめ”は博多~新八代駅を結ぶ“リレーつばめ”とあわせると博多~鹿児島中央駅を2時間10分台で走行する。

当施設は先行開通した5駅の中で新八代駅より3駅目,鹿児島県出水市内に位置する。出水市は,市内に武家屋敷が残り,また冬の使者“ナベヅル”の飛来地として有名である。そのため駅舎屋根のデザインは武家屋敷群と鶴が羽ばたく様子をイメージし,空を写しこむ大きなガラス面により自然との調和を図っている。(図1)

駅の概要は以下の通りである。

所在地
鹿児島県出水市
駅位置
高架下
駅面積
1,600m²
ホーム長さ
210m
ホーム形式
相対式(2面2線)

2. 照明設計の考え方

施主である日本鉄道建設公団(当時)からの設計条件は下記の通りであり,設計照度を表1に示す。

  1. 必要なところに必要な明るさを,照度のメリハリをつけ,省エネルギーを図る。
  2. 高効率・高演色・長寿命な光源,器具を使用する。
  3. 省施工となる器具を使用する。
  4. 瞬時停電後復旧対策を考慮する。

またエリアごとの特性に沿った照明方法を考慮した。

  1. コンコースの照明
    • HIDランプなど点光源を用い天井面をすっきりとさせる。
    • 建築空間の特徴を生かすような照明による演出を行う。
  2. プラットホームの照明
    • 駅舎デザインコンセプトを考慮した器具デザインを考える。
    • 列車進入時の風圧,振動を考慮する。
表1 エリア別設計照度

維持床面平均照度(単位:ℓx)
コンコース全体 400
改札口・出札前(コンコース) 800
プラットホーム 300

3. 照明設備の概要

3.1 コンコースの照明

設計照度を満たすため,ベース照明としてメタルハライドランプ100W用ダウンライトを配灯し,コンパクト蛍光灯32W用ダウンライトをその間に配置することで停電対策を行っている。(図2)

改札口・出札付近など重点部では,ベース照明の照度を2倍程度に明るくするためにメタルハライドランプ100W用ダウンライトを250W用に換え,照度を確保するとともに同じピッチの配灯にすることで天井面の統一感に配慮した。結果としてコンコース全般部で床面照度400ℓxを,重点部では800~1000ℓxを確保している。(図3)

吹き抜け部にはセラルクス®150W用電子安定器一体形投光器アーバンアクト®βを使用した。投光照明により,主にエスカレータ乗降部の床面照度300ℓx程度を確保し,乗降時の安全を図った。電子安定器一体形器具の使用により施工時の安定器と器具間の配線処理の省力化が図られ,電子安定器の採用によりコンパクトな器具となっており,器具を目立たせず空間演出を行っている。また,コンパクト蛍光灯42W用アッパーブラケットライトにて天井面をライトアップし吹き抜け部の開放感を演出した。(図4)

主な使用照明器具は表2に示す。

図2 コンコース中央部

図4 コンコース吹き抜け部

表2 主な使用照明器具
設置場所 器具形式 使用ランプ 台数
コンコース全般 HDW1173 MF100LS-BUP(3800K) 39
FHDW3202 FHT32EX-L 26
コンコース改札部 HDW2173 MF250LS-BUP(3800K) 8
吹き抜け部 HCF1571BHE MT150CE-DW/S(3200K) 37
HBL3051B FHT42EX-L 18
プラットホーム中央部 ホーム用特注器具 M250FCE-W×2(4100K)
FHT42EX-L×2
22
プラットホーム端部 ホーム用FL直付灯 FLR110W×2 66

3.2 プラットホーム照明

プラットホーム中央部の照明器具には,駅舎デザインコンセプトをもとに鶴の羽ばたきをイメージした特注照明器具を採用した。(図5)

光源は高効率,高演色,長寿命のセラルクス®250W×2灯とコンパクト蛍光灯42W×2灯を使用している。セラルクス®250W用の器具は,取り付け高さが5.5mと比較的高いので,必要なエリアを効率良く照明するため既存のエリア照明用投光器を使用し,維持照度300ℓxを確保しており列車乗降時の安全性と快適性を図った。(図9)

器具中央のコンパクト蛍光灯は瞬時停電後復旧用保安灯として機能する。(図6,図7)

プラットホーム端部は比較的天井が低い為,蛍光灯110W×2灯用直付灯をライン上に設置(H=3.5m)し維持照度300ℓx以上を確保した。(図8,図10)

主な使用照明器具は表2に示す

図5 プラットホーム中央部

図6 特注照明器具

図8 プラットホーム端部

4. おわりに

本施設はHIDランプを多用し,ダウンライト,投光器の制御された光により必要な照度を確保した上で,グレアの少ない落ち着きのある空間となった。また,吹き抜け部をアッパーライトや投光器で空間照明する事で,九州の自然と地域の特性をデザインした駅舎の特徴をより強調する事が出来た。全体としては照明の機能面をクリアし,加えて人が心地よさを感じてもらえるような光空間をつくるよう心がけた。

今回,設計から工事が進行する中で東京や鹿児島での打ち合わせが平行してすすめられ,営業担当者・設計担当者もそれぞれの協同作業となった。この物件が無事完了できたのも関係した方々のチームワークの賜物であり,この場を借りて関係者の方々に感謝の意を申し上げる。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第10号掲載記事に基づいて作成しました。
(2004年5月14日入稿)

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