施設報告
大山ビバレッジ株式会社 飲料水製造工場の照明設備 - HACCP昆虫混入防止対策 -
国内営業事業部 第二営業部 中国技術設計センター
技術開発室 技術研究所 環境技術グループ
キーワード
工場,害虫防除,黄色高圧ナトリウムランプ(エコイエロー™),UVカット形メタルハライドランプ
1.はじめに
大山ビバレッジ株式会社の大山工場(鳥取県日野郡)は,売れ行き好調なコカ・コーラ社のミネラルウォーターブランド「森の水だより」の名古屋以西全区を生産するために建設した飲料水製造工場で,中国山地最高峰の秀峰,大山よりこんこんと湧き出る水を地下150mから採水している。敷地面積は37,912m²,延床面積は13,024m²で,工場は23時間操業,年間1200万ケースの製造能力を持っている(図1)。
大山工場は飲料用ミネラルウォーターの製造工場であることから,徹底した衛生管理のもとで最新ボトリングシステムを導入,生産ラインは無菌充填ラインとなっている。また,工場の施設の建設にあたっては,窓を固定し,倉庫への配送等の出入りは自動の二重省エネシャッターとするなど,高い密封性を備えている。
近年,自然生態系を保護する観点から工場照明などの夜間照明による昆虫の誘引・誘殺が問題とされつつあり,昆虫やヤガ類などの虫の侵入を防ぐことを目的とした照明設備を設置(平成15年5月)した。
2.照明設計及び概要
2.1 設計コンセプト
本施設は,豊富な自然環境に位置するため工場周辺に樹木が多く,できる限り工場の建屋付近に昆虫やヤガ類などが誘引されないようなシステムとした(図2)。
2.2 照明手法及び設置方法
工場の外壁に,昆虫を寄せつけにくい特性を持つ黄色高圧ナトリウムランプ1)「エコイエロー™」を設置し,工場敷地内の外周には昆虫が好む光を放つ誘引性の高いメタルハライドランプ(誘虫ランプ)を使用したポールライト(係留灯)を設置して昆虫を係留し,工場側への飛来を減少させることで,工場の建屋付近での昆虫の防除性を高めている。
また,工場内倉庫は,昆虫の誘引を低減する為,虫の好む光の波長を大幅にカットしたUVカット形メタルハライドランプ2)を使用している。設置イメージを図3に示す。
2.3 設計照度及び数量
工場外周の照度は,建物周りを最低1ℓx以上確保出来る取付間隔(約22m)とし,外周道路を10~15ℓx,荷積み作業場所を30ℓx程度としている(図4)。工場内の製品置場は,全体照明を50ℓxとし,通路を300ℓx程度としている。また,その他の倉庫等は,300ℓx程度としている(図5)。当該施設に使用した照明器具等の設置箇所及び数量を表1に示す。
照明器具 | 形式 | 数量 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
工場外周 | エリアライト 黄色高圧ナトリウムランプ 一般高力率形安定器 |
H802 NH220FLS-Y H2.5CC2B352 |
40台 | 壁面取付高さ :H=7m |
工場内 | 高天井用器具(広照形) ガラスプロテクタ UVカット形メタルハライドランプ 安定器併置形 高天井器具 昇降装置 |
SAW412 PSAW41G MF400LS/BU - IC HB4020B UDM42272/K |
75台 | H=7.5m |
高天井用器具(狭照形) ガラスプロテクタ UVカット形メタルハライドランプ 安定器併置形 高天井器具 昇降装置 |
SAN412 PSAM41G MF400LS/BU - IC HB4020B UDM42272/K |
35台 | H=7.5m |
参考文献
- 田澤信二:「害虫行動を制御する黄色ランプ」照明学会誌,Vol.85,No.3,pp.217-221(2001).
- 田澤ら:「UVカットメタルハライドランプによる昆虫誘引試験」照学全大,H12,p.257(2000).
テクニカルレポートに掲載されている内容は、原稿執筆時点の情報です。ご覧の時点では内容変更や取扱い中止などが行われている可能性があるため、あらかじめご了承ください。