ライティング講座(照明講座)
照明関連設備の設計資料
配線設計 - 導体サイズの選定
導体サイズは、表1.3に示す最小電線サイズの他に許容電流、電圧降下を検討して選定します。
(1)許容電流
該当する回路に流れる最大負荷電流よりも、許容電流が大きな導体サイズを選定します。仮に最大負荷電流よりも許容電流が小さい導体サイズを選定してしまうと、導体には許容電流以上の電流が流れるため、導体の温度が上昇し絶縁被覆の劣化、溶融が発生し、場合によっては発煙、発火事故につながります。
(2)電圧降下
電線路に負荷を接続し、ケーブルに通電すると、導体抵抗及びリアクタンス、すなわちインピーダンスの影響により、受電端電圧が低くなり、送電端電圧と受電端電圧に差が生じます。この差を電圧降下といいます。電圧降下は導体サイズが大きい程小さくなります。内線規程に、低圧配線における電圧降下の許容値が定められており、それをまとめたものを、表1.4に示します。
電圧降下が許容値に収まるように導体サイズを選定します。
供給変圧器の二次側端子 又は引込線取付点から 最遠端の負荷に至る間の 電線のこう長(m) |
電圧降下(%) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
電気使用場所内に設けた 変圧器から供給する場合 |
電気事業者から低圧で電気の供給を受けている場合 | |||||
幹線 | 分岐回路 | 合計 | 幹線 | 分岐回路 | 合計 | |
60以下 | 3以下 | 2以下 | - | 2以下 | 2以下 | - |
120以下 | - | 5以下 | - | 4以下 | ||
200以下 | - | 6以下 | - | 5以下 | ||
200 超過 | - | 7以下 | - | 6以下 |
(参考文献 JEAC8001:内線規程, (一社)日本電気協会(2016))
1)道路、トンネル照明の場合
電圧降下の許容値は表1.4に示す範囲となります。
ただし、「道路照明施設設置基準・同解説」((公社)日本道路協会)に、HIDランプ(放電灯)の場合は、6%を超えると光束の低下や立消えの原因となるため、電圧降下は6%以下とすると明記されています。LEDランプ、LED照明器具も同様に、電圧降下が6%を超えると正常に点灯できません。道路、トンネルにおいては、こう長が200mを超える場合が多くありますが、200m超過の場合でも許容電圧降下は6%以下とします。
2)屋外スポーツ、ヤード照明の場合
電圧降下の許容値は表1.4に示す範囲となります。
ただし、使用する安定器や電源装置によって電圧変動特性が違うので、安定器や電源装置の特性を考慮する必要があります。
- ①一般形安定器、LEDランプ用電源装置、LED照明器具用電源装置
電圧変動特性が±6%なので、200m超過の場合でも電圧降下の許容値は6%以下となります。 - ②定電力形安定器
電圧変動特性が±10%なので、電圧降下の許容値は表1.4に示す範囲となります。
(電気使用場所内に設けた変圧器から供給する場合で200m超過の場合は7%以下)
定電力形安定器は一般形に比べて高価なので、経済性の効果を検討する必要があります。
(3)電圧降下の計算式
1)基本式
交流回路における電圧降下の基準となる公式は次式で示されます。
\( e=K \times I(R \cos \theta +X \sin \theta ) \times L \) (式1-1)
- \( e \)
- 電圧降下(V)
- \( K \)
- 電気方式による係数
単相2線式 \( K=2 \)(線間)
単相3線式 \( K=1 \)(大地間)
三相3線式 \( K=\sqrt{3} \)(線間)
三相4線式 \( K=1 \)(大地間) - \( I \)
- 電流値(A)
- \( R \)
- 線路の交流導体抵抗(Ω/km)
- \( X \)
- 線路のリアクタンス(Ω/km)
- \( \cos \theta \)
- 負荷端力率
- \( L \)
- 線路のこう長(km)
2)簡略式
式1-1に示すように、交流回路では抵抗以外に、リアクタンスや力率の影響があることがわかります。ただし、通常屋内配線などで使用されるものについては、リアクタンスを無視し、力率を1と見て差し支えない場合が多く、その場合は式1-2で示されます。
\( e=K \times R \times I \times L \) (式1-2)
- \( e \)
- 電圧降下(V)
- \( K \)
- 電気方式による係数
単相2線式 \( K=2 \)(線間)
単相3線式 \( K=1 \)(大地間)
三相3線式 \( K=\sqrt{3} \)(線間)
三相4線式 \( K=1 \)(大地間) - \( I \)
- 電流値(A)
- \( R \)
- 線路の交流導体抵抗(Ω/km)
- \( L \)
- 線路のこう長(km)
式1-2における電線1mあたりの抵抗Rは、導体の太さによって異なるため、単位断面積(1mm²)あたりの固有抵抗と銅線の導電率より、下記のように置き換えることができます。
- 標準軟銅の固有抵抗(20℃)=1/58(Ω/m)
- 銅電線の導電率=97(%)
これより、
\( R= \dfrac{1}{58 \times 0.97} \times \dfrac{1}{A}= \dfrac{17.8}{1000} \times \dfrac{1}{A} \)
- \( A \)
- 使用電線の導体断面積(mm²)
抵抗R、及び電気方式Kを、式1-2に代入することにより、表1.5に示す電圧降下の簡略式が求められます。
電気方式 | 電圧降下 | 電線の断面積 |
---|---|---|
単相2線式 | \( e= \dfrac{35.6 \times L \times I}{1000 \times A} \) | \( A= \dfrac{35.6 \times L \times I}{1000 \times e} \) |
三相3線式 | \( e= \dfrac{30.8 \times L \times I}{1000 \times A} \) | \( A= \dfrac{30.8 \times L \times I}{1000 \times e} \) |
単相3線式 三相4線式 |
\( e= \dfrac{17.8 \times L \times I}{1000 \times A} \) | \( A= \dfrac{17.8 \times L \times I}{1000 \times e} \) |
- \( e \)
- 電圧降下(V)
- \( I \)
- 電流値(A)
- \( L \)
- 線路のこう長(m)
- \( A \)
- 使用電線の導体断面積(mm²)
(4)導体サイズの決定
以上のことより、許容電流、電圧降下で求めたそれぞれの導体サイズのうち、大きい方の導体サイズを選定して設計を行います。
なお、高圧回路など短絡時に流れる電流が大きい場合は、短絡時の許容電流も考慮して設計を行う必要があります。
絶縁体の種類 | ケーブルの種類 | 短絡前の 導体温度(℃) |
短絡時の 最高許容温度(℃) |
計算式(銅) |
---|---|---|---|---|
ビニル | VV、VE | 60 | 120 | \( I=96 \dfrac{A}{\sqrt{t}} \) |
架橋ポリエチレン | CV、CE | 90 | 230 | \( I=134 \dfrac{A}{\sqrt{t}} \) |
- \( t \)
- 短絡継続時間(秒)
- \( A \)
- 導体断面積(mm²)
(2020年11月19日入稿)
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