アイちゃんのあかりを訪ねて
石炭鉱業の歴史を探る - 宇部市編 -
石炭記念館
石炭記念館 外観
宇部市は、石炭を基盤に発展してきた街。採炭は江戸時代に始まり、明治・大正時代に発展を続けた炭鉱は昭和15年(1940)には80数坑もあったんだよ。石炭産業を中心にセメント事業、石炭化学事業など数々の産業が興り経済発展目覚しかったみたいだよ。昭和30年代のエネルギー革命によりエネルギー源が石炭から石油へと転換したため、昭和42年(1967)までに市内の炭鉱はすべて閉山しちゃったけど、他の採炭地が衰退していく中で、早くからの工業都市への転化と都市整備に尽力する先見性と自助努力によって生き延びた街なの!
単胴コース巻上機
山口宇部空港から車で10分、ときわ湖を囲む広大な宇部市営総合公園(ときわ公園)の一角、宇部炭発祥の地でいまも湖底に炭坑の遺構が眠る、ときわ湖畔に設けられた博物館が、今回、アイがお邪魔した「石炭記念館」。
昭和44年(1969)に、日本初の石炭記念館としてオープンしたの!
日本で初めての石炭記念館
展望台から見下ろすときわ湖
2階建ての展示棟に一見アンテナ塔のように見える展望台。展望台は、宇部興産東見初炭坑で昭和42年(1967)の閉山まで使用されていた立坑櫓を移設、矢弦車(昇降機のワイヤーをまきあげる滑車)が付けられていた最上部を改造して展望台として再利用しているの。
抗内石炭運搬車
矢弦車(やげんぐるま)
アイは、地上37mの高さの展望台から、ときわ湖を遊泳する白鳥や黒鳥の優美な姿、真っ青な瀬戸内海、白い雲、ペリカンたちの編隊飛行を眺めながらしばし休息。お花見シーズン以外はあまり混まないそうなので穴場だよ!屋外では、野外展示として、石灰石輸送の貨車用で活躍したD51型蒸気機関車をはじめ、矢弦車、坑道で使われた人車や坑内石炭運搬車、鉱業所で使われたランカシャボイラーや巻上機などがあったよ。
D5118 号
人車
ランカシャボイラー
屋内の1階展示室には、明治時代から昭和40年代まで実際に使用されていた採炭用の機械などが展示され、さらに宇部の海底炭田をモデルにした色々な坑道のつくりや採炭現場を再現し紹介。海底の奥深く薄暗く湿った坑内で、多くの人々が当時のエネルギー源である石炭の採掘作業に命がけでたずさわっていたかと思うと本当に頭が下がります。坑道のパネル展示によれば、山口炭田における明治25年(1892)から昭和45年(1970)までの炭坑災害の殉職者は、1241名にものぼるそうです。アイは尊い犠牲のうえに今の世の繁栄があるということをあらためて実感しました。
海底油田の模型
鉱業所全景のモノクロ写真
炭坑を支えた機械
坑道 1
坑道 2
採掘現場
宇部炭田の歴史と民俗
2階展示室は、炭坑で働く人々の命を守った各種の保安道具や炭坑で使われた小道具、各炭田から出土した、さまざまな化石を中心に展示。ほかにも、宇部炭田の歴史と民俗というテーマで石炭の発見から現在までの炭坑と人々の移り変わりの様子を、模型や道具、イラストなどでわかりやすく紹介していたよ。
いろいろな化石
炭鉱住宅
多くの展示品で目移りしてしまうけど、アイのオススメは、昭和11年(1936)頃の沖宇部の長屋式の炭住(炭鉱住宅)の模型かなぁ。水道、トイレ、風呂が共同で、6畳と4畳半の間取り。隣近所に声が筒抜けになってしまうけど、炭鉱で働く人たちが一致協力して生活していたのだろうなと思うと、貧しいながらもきっと充実した日々を過ごしていたにちがいないという事実にアイは何か羨ましく思ってしまいました。
オーストラリアの坑内照明ランプ
ドイツ安全灯
ゴム製防爆スイッチ
さまざまなカンテラ
明治時代
大正時代
昭和時代
坑外用・照明用カンテラ
アイの知って得する豆知識
石炭のおいたち
無煙炭
石炭は、太古の植物が地中深く堆積されてできた可燃性の化石。いまから約3億年前から2000万年前の間に、大量の樹木が、沼地などの水に浸され堆積しました。その樹木は、バクテリアや菌類などによって分解作用と、地中深く沈んで温度や圧力などから様々な変質作用を受け、長い間にゆっくりと石炭になったそうです。最も炭化の進んだ順に、無煙炭、半無煙炭、れき青炭、亜れき青炭、褐炭(亜炭)、泥炭と分類されているの。
館内で展示されていた無煙炭は、福森勘兵衛という人が大明(タイメイ)炭坑で掘ったもので、字のとおり、燃やしたときに煙がほとんど出ないのが特長。火つきはよくないけど火力が強いので、明治から大正にかけて海軍の軍艦燃料として使われたそうだよ。
施設概要
- 所在地
- 宇部市則貞3-4-1
- 電話
- 0836-31-5281
- URL
- https://www.tokiwapark.jp/sekitan/
- 開館時間
- 午前9時30分 ~ 午後5時
- 休館日
- 毎週火曜日・12月29日から1月1日
- 入館料
- 無料
取材協力:財団法人 宇部市常盤遊園協会