創造人×話
空間をトータルに演出する手法の一つとしてプロジェクションマッピングを捉え、映像と光で新たな景色をつくっていきたいと思います。
村松 亮太郎さんネイキッド代表・アーティスト
今回は、映画、ミュージックビデオ、広告制作などジャンルを問わず多彩な表現を手掛けるネイキッド代表の村松亮太郎さんをご紹介いたします。
村松さんは、2012年末、大きな話題を呼んだ東京駅のプロジェクト「東京ミチテラス2012」で3Dプロジェクションマッピング「TOKYO HIKARI VISION」の演出を手掛け、その後も様々な場所で大規模プロジェクションマッピングを発表されるなど、クリエイティブ業界で今最も注目されている方のひとりです。
2012年12月に開催された東京駅のプロジェクションマッピングは大きな話題になり、新しい映像表現として私たちに大きなインパクトを与えてくれました。
まずは、プロジェクションマッピングとはどういうものなのかをお教え願います。
プロジェクションマッピングとは、映像コンテンツをスクリーンのような平面に投影するのではなく、建築物や凹凸のある立体物にプロジェクターで投影する技法を言います。
投影する映像の動きや、対象物自身の動きにより、様々な変化を表現することを可能にさせました。
これまでのテレビや映画館を始めとする映像メディアは、それがどんなに大きくても「四角いフレーム」の中で表現されていましたが、マッピング技術を使うことでフレームから飛び出し、リアルな世界と一体になりました。
私は、映像がフレームから解放されたという意味は非常に大きく、今後大きな可能性を秘めているのではないかと考えています。
東京国立博物館の特別展や京都駅前広場での電気自動車普及イベント、最近では水族館を舞台にした体感イベント ナイトアクアリウムなど、数多くのプロジェクションマッピングを手掛けていらっしゃる村松さんですが、この先プロジェクションマッピングはどのように広がっていくとお考えですか。
あらゆる場所がキャンバスになり得るマッピングという技法が、この先どのように進化していくかを考えると、私はいくつかの方向に分岐していくのではないかと思います。
そのうちの一つは、映画やショーの延長線上にあるような、スクリーンではなく全体で空間を演出するショーマッピングという方向性で、もう一つは、映像と光による空間演出という方向性です。
たとえば東京駅もそうだったのですが、映像とはいえ光を当てているので、イルミネーションのような感覚をお持ちになった方も多く、ある意味、マッピングは照明の世界に近づいていくのではないかと考えています。
最近、会社の近くにデリ&レストラン 9STORIESを共同で開き、プロデュースをしているのですが、食もクリエィティブだという考えに加え、照明としてプロジェクターを使って環境に変化をつけるなど、小さいながらも空間づくりの実験をしていこうと思って始めたもので、楽しみながら色々な空間演出の手法に取り組んでいます。
映像と光による空間演出という考えはとても興味深いですね。
村松さんがプロジェクションマッピングを手掛ける際に重視されている点は何ですか。
従来のプロジェクションマッピングは、どちらかというとメディアアート、またプログラマーの方が制作されるケースが多くビジュアルの表現に偏ったものが多かったのですが、私は映画をつくっていた経験から、世界観とストーリーを重視しています。
1997年にネイキッドを設立した当初より、あらゆるものは手法でしかないという考えのもと、ボーダーレスを理念に掲げ、ラボのようにユニット体制で仕事をしてきました。
そのため、クロスオーバーしてモノをつくり出すのが得意で、CGなどの技術とエンターテインメント性の両方からのアプローチが出来る点が特長だと思っています。
また、時間軸も大切にしています。
人は屋外で意味のない映像を5分と見ていられないものです。
映画館に2時間近く座って映像を見ていただく映画をつくっていた経験が役に立っていると思いますし、やはりストーリー性が重要なのだと言えます。
日本のみならず海外でも様々なプロジェクトに関わっていらっしゃるとお聞きしました。今後の展望について少しお聞かせください。
私は、空間をトータルに演出する手法の一つとしてプロジェクションマッピングを捉えています。
2020年にドバイで開催が決定したエキスポを招致する際のプレゼンテーション用映像を作った時も、プロジェクションマッピングを使った街全体の空間演出を提案しました。
これからも、日常を非日常に変えることが出来るプロジェクションマッピングの魅力を最大限に生かして、光によるトータルな空間演出に取り組み、様々なシーンを作っていきたいと思います。
私は、今後、映像と照明の世界はある意味で融合していくのではないかという考えから、これからの新しい照明のかたちを暗示する潜在市場の存在を感じていますが、その部分は個人では出来ませんので、照明メーカーを始め日本の企業の技術力に期待したいと思います。
照明と共存するプロジェクションマッピングで新しい景色、世界観をつくっていくこと、また、プロジェクションマッピングに限らず様々な手法を駆使して、目に見えないもの、想像をかたちにしていくことが、クリエーターとしての私の役割だと考えています。
村松 亮太郎(むらまつ りょうたろう)
アーティスト。NAKED Inc. 代表。
TV/広告/MVなどジャンルを問わず活動している。
長編映画4作品を劇場公開、短編作品と合わせて国際映画祭で48ノミネート&受賞。
主な作品に、東京駅の3Dプロジェクションマッピング「TOKYO HIKARI VISION」、東京国立博物館 特別展「京都 - 洛中洛外図と障壁画の美」プロジェクションマッピング「KARAKURI」、山下達郎30周年企画「クリスマス・イブ」MV&ショートフィルム&マッピングショー、星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳「Gift -floating flow-」総合演出、「TOKYOガンダムプロジェクト2014ガンダムプロジェクションマッピング "Industrial Revolution"-to the future-」映像演出、auスマートパス presents 進撃の巨人プロジェクションマッピング「ATTACK ON THE REAL」演出、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」タイトルバック、企画演出を手がける「ナイトアクアリウム」(開催中)など。
2016年冬は、星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳/リゾナーレ トマム「アイスビレッジ」の空間演出を手がける予定である。