創造人×話
ユーザーが本当に求めているものは何かを考えながら作ることに面白さを感じています。
中澤 優子さん株式会社UPQ
代表取締役CEO
2015年8月、構想から会社設立、そして製品化までわずか2か月というスピードで、17種24製品の家電・家具をリリースし、大きな注目を集めた国内発家電ブランドがあります。
今回は、一人でその新ブランドを立ち上げ、家電業界に大きな衝撃を与えた「UPQ」代表の中澤優子さんをご紹介します。
2015年7月に会社を立ち上げ、企画からたった2か月でSIMロックフリーの低価格スマートフォン(スマホ)、Bluetoothイヤホン、4Kディスプレイなど24製品を発売し、大きな注目を集めた中澤さんですが、学生時代から「ものづくり」に興味をお持ちだったのでしょうか。
私は東京の下町生まれで、高校は都立両国高校だったのですが、将来の進路をはっきりと決めている学生達が多い中、当時まだ具体的な職業をイメージすることができないでいました。
その後中央大学に進み、2年間でほとんど単位を取った後、4年生に混じって就職活動を始めて商社やメーカーなど100社位の企業に話を聞きに行き、自分が向いていることは何かを徹底して自己分析しました。
その結果、ものづくり、何かをつくることを通して人とコミュニケーションすることに強く興味を持ち、生業にしたいと考えるようになりました。
その中でも、私はいわゆる機械音痴だったのですが、携帯電話だけは中学生の頃から使いこなしていた、まさにケータイ世代で興味があったこともあり、携帯電話メーカーに入って携帯電話をつくりたいと思うようになりました。
学生である時間を有効に使おうと携帯電話販売店でバイトをはじめ、年間100機種位発売されても、全てがあまねく売れるわけでもなく、たった5~6機種に限られてしまうこと、そして販売員をしていれば、見た瞬間にどれが売れ、どれが売れないかがわかるということを知りました。
メーカーの中の人とユーザーとの距離が異様に遠いことに気づき、メーカーへの就職を希望しました。
と言っても、文系の新人に携帯電話を作らせてくれるという会社はなかなか現れず、他の職種の会社に決めかけていたところに、カシオ計算機から連絡をいただき、入社しました。
カシオ計算機には5年程いらしたとお聞きしました。
カシオ時代、そしてご自身で会社を立ち上げるまでの経緯についてお聞かせください。
商品企画部でプロダクトマネージャーとして、商品企画を担当していました。
ゼロからアイデアを考え、デザイナー、開発メンバーと共に検証、ラフ試作し通信事業者への提案。
提案が通ったら数々のプロセスを経て製品化、さらに全国各地の携帯電話の販売員さんを集めて行われる説明会でプレゼンテーションを行う。
そして、お使いいただく中での問合せなどにも一つひとつ保証部やカスタマーサポート部と連携して応える。
この一連の流れ全てに携わることが出来たことで、「ものづくり」の多くを学ぶことができました。
その後、幾度か会社の再編を経て、NECカシオがスマートフォン市場から撤退することになり、さまざまな選択肢があったのですが、退職を決めました。
会社を辞めてからは秋葉原でカフェを開業するとともに、商品企画、マーケティングの経験をいかし、フリーランスとして大手飲料メーカー、化粧品メーカーなど数社の商品企画やコンサルティングを行っていました。
そして、2014年にau未来研究所のハッカソン(ソフトウェア関連のイベント)に参加し、参加者の士気の高さを感じると同時に、秋葉原に2014年11月に誕生したハードウェア・スタートアップの拠点「DMM.make AKIBA」のように、ものづくりのための新しい環境が整い始めていることを実感したことがきっかけとなり、再び家電を作る仕事に復帰し、会社を立ち上げました。
UPQブランドにはスマホをはじめ、さまざまな製品が揃っていますが、それらの特長をお教えください。
もともと2007年にカシオ計算機に入社した時から、SIMロックフリーの携帯電話の時代が来ることを予測していましたので、ようやく以前からやりたかったことが出来るようになったと感じています。
どんどんスペックがプラスされた新製品が発売され、必然的に型落ちが出てしまう携帯電話市場とは一線を画した、価格とスペックとデザインのバランスのとれたスマホ、型落ちしにくい製品を作りたいという思いでブランドを立ち上げました。
当初はスマホだけを作ろうとスタートしたのですが、私が過去携わっていた携帯電話には、高画素カメラ、タッチパネル、Wi-Fi、防水性能など、たくさんの要素が備わっていたので、その時に得た知識と経験をいかし、たとえば高画素カメラはスマホから削ぎ落として、別途小型アクションスポーツカメラを作ったり、タッチパネルだけを切り出して、ガラス製の透明キーボードを作ったりとしているうちに、結果的に24製品を販売することになりました。
UPQでは、TVチューナーをあえて搭載せず価格を10万円以下に抑えた4Kディスプレイも販売しています。
ハイスペックの製品は大手メーカーが出していますが、高価格でなかなか買えないという人にも4Kを体験してもらいたいという思いで作りました。
技術は、より多くの人に使ってもらって育てるものだと考えています。
中澤さんがものづくりで大切にしていらっしゃることを、今後の展望とともにお聞かせください。
製品は中国など海外の工場で製造していますので、週の半分は国外で過ごすことも多い日々ですが、単に委託しているのではなく、人種や国境を越えて同じものづくりに携わるチームとしての関係性を構築することを大切にしています。
きちんと伝えることが出来れば思いは伝わり、真摯に取り組んでくれると信じて。
UPQの製品は、ウェブ中心に販売すると同時に、二子玉川 蔦屋家電やビックカメラ、ヨドバシカメラ、ヤマダ電機、そしてパルコなどの実店舗でも販売され、おかげさまで思った以上の反響をいただいています。
2016年2月末から第2シーズンがスタートしており、これからも製品を発表した時にその製品に魅力を感じていただけるかワクワクドキドキしながら、ものづくりの魅力を存分に味わい、そして世に届けていこうと考えています。
※未発売製品に関しては、現在開発中であり、仕様については予告なく変更される場合があります。
中澤 優子(なかざわ ゆうこ)
1984年生まれ。中央大学経済学部卒業後、カシオ計算機株式会社にて、携帯電話・スマートフォン商品企画に従事。「830CA」「CA007」「EXILIMケータイ」などの企画開発に携わる。
カシオ計算機を退職後の2013年4月には、秋葉原にカフェを開業。オリジナルケーキやパンケーキなどの商品企画から、製造・経営まで、全てに携わる。
2014年10月、食をテーマにしたハッカソンに参加し、IoT弁当箱「X Ben(エックス・ベン)」を企画・開発。同年12月には、経産省フロンティアメイカーズ育成事業に採択され、再び電気の通ったものづくりの世界へ。
2015年7月、株式会社UPQ代表取締役に就任。カフェの経営を続けながら、2か月で17種類24製品を取り揃えて「UPQ」ブランドを立ち上げるなど、日々ものづくりに没頭している。