自立電源型IoT機器を搭載した照明機器の実用化と普及を目指す
新型「グラフェンリチウムイオンキャパシタ」を活用した蓄電制御システムの実証実験を開始

2023年3月9日

岩崎電気株式会社と、国立研究開発法人物質・材料研究機構(以下「NIMS」と称す)発ベンチャーである株式会社マテリアルイノベーションつくば(本社:茨城県つくば市、以下「MIつくば」と称す)は、道路灯に搭載したIoT機器の自立型駆動用電源として、MIつくばの開発したグラフェンリチウムイオンキャパシタを搭載し、太陽光パネルの環境発電を利用した蓄電制御システムの実証実験を開始(写真1~3)いたしました。

なお、本実証実験は、MIつくばが茨城県の「令和4年度研究シーズ製品化支援事業」に採択され、岩崎電気のグループ会社である株式会社アイ・ライティング・システム(茨城県桜川市)内において実施中です。

安全・安心な社会の構築とレジリエンスな社会の実現に向けたスマートライティングとして、環境センサやカメラなどの搭載による道路周辺の環境状況、交通量や路面冠水などの把握や路車間通信など、さまざまなIoT機器の利用拡大を想定しています。

特に屋外で使用する蓄電デバイスは、耐環境性能が求められることと同時に、太陽光パネルや熱発電などの環境発電デバイスで発電した微弱電力の有効利用と、IoT機器への安定的な電力供給が求められています。

【写真1】試験中の道路灯全景

【写真2】カメラ内蔵道路灯

【写真3】IoT機器、キャパシタ内蔵制御部

今回の実証実験では、グラフェン材料にカーボンナノチューブ(CNT)をスペーサーとすることで層間構造が安定保持される「グラフェン/カーボンナノチューブ複合材料」を使用したグラフェンリチウムイオンキャパシタを蓄電デバイスとして搭載しています。

MIつくばは、NIMSの研究成果を活用し、高性能のグラフェンリチウムイオンキャパシタを開発してきました。

グラフェンリチウムイオンキャパシタは、充放電性能に優れるとともに動作温度範囲が広く、寿命性能や保守メンテナンス性が高いなど、屋外環境で利用するための基本的な優位性に加え、グラフェン/カーボンナノチューブ複合材料を使用することにより、さらなる出力、ならびにエネルギー密度の大容量化と、小型・軽量化が可能です。

自立型電源システム(図1)として実証実験を進め、蓄電制御システムを構築することで、照明機器に搭載するだけでなく、有線で電源の確保が困難な場所や人の立ち入りが難しく、メンテナンスが困難な場所(山間部、危険箇所)などのIoT機器の電源システムとしての設置が可能です。


【図1】蓄電制御システムの構成

また、本システムは、赤外線や開閉センサなどの監視センサや、非常警報などの通信機器の電源としても利用可能であり、IoT機器の自立型電源として幅広い分野での応用が期待できます。

実証実験の概要

太陽光パネルを利用してグラフェンリチウムイオンキャパシタに蓄電した電力を道路灯に搭載した各種IoT機器へ安定的に電力を供給する、蓄電デバイスの充放電を制御するシステムを介し、道路状況を撮影したカメラ画像(写真4)、環境センサ(温度、湿度、CO₂濃度、紫外線量)の情報、グラフェンリチウムイオンキャパシタの電圧などのデータを無線で送信し、実証実験先の茨城県桜川市から埼玉県行田市での遠隔監視の実証実験を通じて、環境発電による蓄電制御システムとグラフェンリチウムイオンキャパシタの性能評価を行います。

【写真4】内蔵カメラ撮影画像

実証実験のシステム構成

本実証実験のシステムは、①カメラを搭載したLED道路灯、②環境センサやLTE通信機器などのIoT機器、グラフェンリチウムイオンキャパシタ、制御システムを内蔵した制御ボックス、③発電を行う太陽光パネルで構成しています。

IoT機器の電力は照明用系統電力とは別の環境発電による自立型電力で動作する仕組みで、太陽光パネルを利用してグラフェンリチウムイオンキャパシタに蓄電した電力を夜間も含めて24時間供給します。

遠隔監視できるデータはインターネット経由でタブレット端末などでも監視することが可能です。

参考資料

IoT機器

無線通信やインターネット環境などのネットワークに接続することで、データや画像などのデータを送受信できる機能をもった、各種センサやカメラ、スマート家電などの電子機器。

リチウムイオンキャパシタ

正極は電気二重層キャパシタと同じ材料(一般には活性炭など)を使用し、負極にはリチウムイオン電池と同じ材料(一般には黒鉛など)を使用した非対称型のキャパシタ。
電気二重層キャパシタより高容量・高電圧が特長。

グラフェンリチウムイオンキャパシタ

正極材料として現在一般に使用されている活性炭に替わりグラフェン/カーボンナノチューブ複合材料を使用したリチウムイオンキャパシタ。
活性炭を使用した従来のキャパシタよりさらに高容量・高電圧を実現できる。

グラフェン

グラフェンは、鉛筆の芯にも用いられる黒鉛を1枚1枚のシートに剥がすことで作ることができる材料で、重量当たりの表面積が最も大きい材料。
表面積の大きなグラフェンはさまざまな用途において注目されているが、剥がしたシート同士が再度積層してしまうことで、表面積が低下することが課題の一つであった。
MIつくばは、グラフェンとグラフェンの間にカーボンナノチューブ(CNT)をスペーサーとして挟むことで、長期間にわたって安定な材料とし、関連特許を取得している。

グラフェン/カーボンナノチューブ複合材料

グラフェンは、表面での反応を活かすため反応液などと接触する構造が求められ、グラフェン自身の再付着の防止する必要がある。
グラフェン/カーボンナノチューブ複合材料は、グラフェンとグラフェンの間にカーボンナノチューブ(CNT)を挟み込む積層構造で、グラフェンの再付着を回避することに成功している。

株式会社マテリアルイノベーションつくばについて

本社:茨城県つくば市千現1-2-1(国立研究開発法人物質・材料研究機構内)
設立:2017年11月1日
代表取締役社長:佐久間 一浩
https://www.mitsukuba.com/

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